三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「ターコイズの空の下で」

2021年03月05日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「ターコイズの空の下で」を観た。
 柳楽優弥はいい雰囲気を出していた。この人はチンピラの役も出来るし、エキセントリックな変人の役やサイコパスみたいな危なっかしい役も出来る。そして本作品のように金持ちのボンボンの役もよく似合う。主人公タケシは贅沢な生活をしているが放蕩という感じではない。育ちのいいおおらかさを醸し出している。柳楽優弥の見事な演技だ。
 タケシは祖父三郎に命じられてモンゴルでツェルマという60歳くらいの女性を探す旅に出る。ツェルマは日中戦争時に三郎がモンゴル人女性に産ませた娘だ。雲を掴むような話だが、三郎は大企業の経営者らしい勘を働かせて、所有するサラブレッドを盗んだモンゴル人アムラをタケシの案内役にする。アムラの豪胆な行動を踏まえての判断である。目的はツェルマを見つける他に、タケシを大企業の経営者として脱皮させることだ。
 早速ふたりのモンゴルの旅が始まる訳だが、タケシはアムラの度胸のいい行動にも少しも動じない。台詞は殆ど「おー」だけだが、いろいろな「おー」があって面白い。それぞれの「おー」にタケシの性格が現れていたと思う。気づいた限りで列挙するとタケシの性格は次のようである。
 何が起きても狼狽えない
 無駄に慌てない
 状況を受け入れる
 他人や他国の価値観を受け入れる
 素直に感動する
 モノに固執しない
 不安にならない
 臨機応変に思い切った行動ができる
 いまを楽しむ
 こうやって並べてみると、すでに大企業の経営者としての資質を十分に備えているように思える。観客は、言葉の通じない異国にあっても堂々としているタケシとともに、モンゴルの自然を楽しむことができる。温度や匂いまで伝わってきそうな見事な映像である。馬頭琴を弾きながらのホーミーは地平線の広がる大草原で歌ってこそだ。
 映画の舞台は東京とモンゴルの草原というかけ離れた場所だが、本作品はふたつの共通点を示してくれている。ひとつは東京でもモンゴルでも、人生は出逢いと別れの連続だということ。そしてもうひとつは、東京とモンゴルは青い空でつながっているということ。ターコイズの空である。12月生まれの人は是非鑑賞してください。