三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「シティーコップ 余命30日?!のヒーロー」

2021年03月19日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「シティーコップ 余命30日?!のヒーロー」を観た。
 映画は静かに観る方だが、本作品ではいくつかのシーンで思わず笑ってしまった。フランス映画らしいエスプリの効いた笑いが炸裂している。兎に角アホなシーンの連続で、登場人物がみんな大真面目だから、その対比がとても面白い。さり気なくエロティックなシーンも入れているところもフランス映画らしくて、そういう部分でもかなり満足する。
 フランスは事実婚が多いと聞くが、事実婚ならではの割り切りにくさもあるようだ。強い嫁はそれほど悪人ではないようだが、その思惑に年甲斐もなく乗っかってしまったおばあちゃんのぶっ飛びぶりがケッサクである。歳だからといって恋愛に消極的になったりしないフランス女性の本領発揮というところだ。
 コメディらしく、登場人物はみんな不死身で元気一杯だ。こちらも元気を分けてもらった気がする。それにしても、メキシコ政府から抗議が来なかったのか心配になった。

映画「すくってごらん」

2021年03月19日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「すくってごらん」を観た。
 いやはやなんとも、どうにもレビューの難しい作品である。
 ミュージカル映画と知らずに見はじめたので、尾上松也がいきなり歌いはじめたのには驚いた。ミュージカルといえば名作「シェルブールの雨傘」を思い出すが、本作品を名作と比べてはいけない。月とスッポンはおろか、アンドロメダ大星雲と芥子粒ほどの違いがあると言ってもまだ足りないくらいだ。
 この映画を観る3日前に日生劇場でミュージカル「ウェイトレス」を観劇したのがいけなかったのかもしれない。主演の高畑充希はじめ、歌が皆上手だった。しかし本作品は、歌声がどこかおかしい。機械的な声に聞こえるのだ。まるでフォトショップで修正した写真のようである。そのせいなのか、柿澤勇人を除いて、尾上松也とその他の人の歌は、まったく上手く聞こえない。特に百田夏菜子の歌は聞くに耐えなかった。
 ストーリーは小学生が書いたみたいで必然性も何もなく、序盤からこれは駄目な作品だと分かったが、もしかしたら中盤で盛り返すかもしれないと席を立たずに我慢して鑑賞。しかし挽回するどころかどんどん酷くなり、最悪に駄目になったところでエンディングである。これほど酷い作品は久しぶりで、ある意味、貴重な体験だった。

映画「わたしの叔父さん」

2021年03月19日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「わたしの叔父さん」を観た。
 肉親の存在だけが唯一の生きる拠り所というのはなんとも淋しい限りだ。しかしそれは傍から見た他人の勝手な言い草である。人生に何が大切なのか、本人にしか決められない。
 本作品の主人公クリスは、おそらくただひとりの肉親である叔父さんと農場で暮らしている。牛の世話と牛舎の維持に追われる日々は、単調に見えるかもしれないが、微妙な変化に富んでいる。時には新たな命が生まれ希望が増える。変化は確実な時の流れを感じさせる。年老いていく叔父さんを見て、過ぎていく自分の時間を振り返る。自分の将来、自分の恋愛。クリスはつらい思いをした。男は皆いなくなるだけだ。種付けしたいならするがいい。
 自分自身が年老いていく前に可能性を考える。首都コペンハーゲンでの時間。それは農場だけではなく叔父さんからも離れた時間だ。クリスの選択。都会での根無し草の生活よりも、他からは頼りなく単調に見えるかもしれないが、叔父さんと農場で生きる。少なくとも叔父さんは自分からいなくなったりしない。
 牛の鳴き声が聞こえ、牧草の青臭さと牛のフンのムッとする臭いが漂ってきそうだ。大地に根ざした人生。土の香りがする作品である。