三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

悠久の翼

2022年12月06日 | 日記・エッセイ・コラム

作詞 作曲 歌:綺 羅

空には空の大地が
雲居(くもい)に水を得て
たゆたう 心洗うよう
この身に降り注ぐ

山には山の細波(さざなみ)
花散る風仰ぎ
里居(さとい)を忘れた小鳥が
眠りにつく湊(みなと)

時知らず 芽吹いてく
矢羽根のあたたかいぬくもり
万代(よろずよ)に続いてく 営みを
はかなきことと逸る(はやる)命
大空駆け昇る

月には月の縁(ゆかり)が
あるから生きられる
愛しい物を守るため
光を湛えてく

月には月の縁(ゆかり)が
まばゆい影おとし
救いを求める者へと
その手を差し延べる

翼を高く広げて
羽ばたくその時に
一粒こぼれ落ちた実が
やがては花になる

月には月の縁(ゆかり)が
あるから生きられる
愛しい物を守るため
光を湛えてく


映画「マッドゴッド」

2022年12月06日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「マッドゴッド」を観た。
12/2(Fri)公開『マッドゴッド』公式サイト。

12/2(Fri)公開『マッドゴッド』公式サイト。

12/2(Fri)公開『マッドゴッド』公式サイト。制作年数30年、特殊効果の神フィル・ティペットによる執念と狂気の奇跡のストップモーションアニメ。地獄のディストピアを巡るダ...

12/2(Fri)公開『マッドゴッド』公式サイト

 狂っている。何が狂っているかというと、それは人類だ。人類の歴史は戦争の歴史であり、拷問と虐殺の歴史であり、支配と服従の歴史である。食糧の奪い合いからはじまって、土地の奪い合い、金銀財宝の奪い合い、軍事技術の奪い合いまで、人類は何でも奪い合ってきた。徒党を組んで仲間を増やし、支配地域を広げて勢力を伸ばす。共同体を形成して、ときには他の共同体との戦争も辞さない。その一方では、仲間内での権力闘争にも余念がない。

 本作品は欲望や憎悪、サディズム、盲信、弱肉強食といったイメージをむき出しに羅列する。エグい表現やゴア描写もたくさん出てくるが、不思議に嫌悪感はない。どこかしら哲学的なのだ。
 人類の不幸の歴史を背負った軍人が地底を探索するような物語で、百戦錬磨の彼は、未知の状況を分析し、対策を考え、進むべき道を見つけていく。観客には彼の目的も、物語の背景も何も分からないまま、映画はどんどん進んでゆく。唐突に登場した生き物たちが型破りすぎる行動をするから、ただカオスの中に放り出されたような感覚だ。しかし映画のタイトルを反芻してみると、本作品の混沌としたイメージは、人類の歴史そのものではないかと、ふと我に返る。

 狂っているのは人類だけではない。神も狂っている。テクノロジーも何もかもが狂っている。もしかすると狂っていたというべきなのかもしれない。それはもはや過去形だと言えるのではないか。
 いや、そうではない。地底ではより先鋭化した狂気が、時間を超越して続いているのだ。地底とはどこか。それはもうわかっている。現代人の潜在意識だ。人類がこれほどの不幸を重ねてきても、なお現代人の心の奥には、欲望と憎悪と盲信と被害妄想が地獄の炎のように燃え盛っている。

 本作品は、ダンテの「神曲」のようでもあり、新約聖書の「ヨハネ黙示録」のようでもある。序盤に登場する円錐型の塔は、旧約聖書の「バベルの塔」のようだった。エンドロールを眺めながら、繰り広げられた豊富なイメージのすべてが、人類の究極の不幸に向けて坂道を転げ落ちているような、漠然とした不安に襲われた。傑作だと思う。