映画「まる」を観た。
堂本剛は、無表情で周りの人に流される役が得意のようだ。もともと主演が少ない人で、広末涼子と共演したテレビドラマ「元カレ」でも、似たような演技をしていた。出演本数が少ないのは、そういう役があっているのを本人も自覚しているからなのかもしれない。
ドラマでも表情豊かな広末涼子に翻弄されていたが、本作品でも表情の豊かな綾野剛や吉岡里帆に翻弄される。それがまた妙に似合っているところがいい。荻上直子監督が描きたかったのは、主人公の感情ではなく、態度のほうだ。
ひとつの珍しい絵画作品を巡って大騒ぎを繰り広げる世間に対して、主人公サワダの泰然自若とした態度を対比させる。理不尽な要求をされても怒らないし、声を荒らげたり、怒鳴ったりすることもない。荻上監督はこれまでと同様に、本作品でも仏教的側面を出してきていて、森崎ウィンの外国人コンビニ店員に仏教の精神を語らせる。
脇役陣は典型を上手に演じていて、拝金主義の絵画市場担当者を演じた小林聡美や、格差を成功者への嫉妬にしてしまう愚かな女性を演じた吉岡里帆は、たいそう上手だった。
円や正方形といった幾何学的に代表的な形は、その合理性から、世界中に溢れている。禅宗の円相の概念を出してきて、価値観の混乱する現代社会がどれほど浅はかで流動的であるかを描いてみせたのが本作品である。それなりに面白かったし、エンドロールの堂本剛の歌は、とても味があった。やっぱりこの人は歌手である。