おそらくジョージア国民が鑑賞したら面白い作品なのかもしれない。多分流れる時間が日本人と違うのだ。ずっと間延びした描写が延々と続くので、かなり飽きる。オルガンのBGMで長々とドアを映すシーンに何の意味があるのか、理解できなかった。そういうシーンがかなりある。すべて省略して、俳句みたいに引き算の編集をしたら、多分1時間ちょっとで収まる作品だと思う。
日常を舞台にしたファンタジー作品ではあるのだが、ファンタジーなら不思議な現象が起きるのは当然で、理由などなくていい。にもかかわらず、ラストシーンで言い訳を並べ立てたのには呆れてしまった。「前置きが長くてすみません」と言いながら延々と前置きを喋るオッサンのスピーチみたいだ。中身がない。
映画「仕掛人・藤枝梅安 第二作」を観た。
2月に先立って公開された第一作に続いて、期待通りの面白さだった。
本作品は時代劇としては斬新でスタイリッシュだ。出会いも別れもあっさりしたもので、とてもリアルである。そこには他人に何も求めない諦観がある。人に何も期待しなければ、別れに笑顔も涙もいらないのだ。
リアルと言えば、梅安や彦治郎はどちらかというと闇討ちタイプだから、正面からの戦闘は向いていない。刀を持った侍に対しても人間離れした強さを発揮したらドッチラケのところだが、本作品はそんな野暮なことはしない。仕掛人は人間であって、スーパーマンではない。
今回の仕掛は彦次郎の都合と梅安自身の過去が絡まった立体的な人間関係になっている。そこに本作品の見どころがある。佐藤浩市は流石の存在感で、虚しい人生をさまよう孤独な侍を演じた。
菅野美穂のおもんの表情がいい。現代社会ではNGワードかもしれないが、女の優しさというものがある。梅安が気に入るのも当然だ。高畑淳子のおせきやでんでんの患者など、素朴で欲の浅い庶民らしさを漂わせている人々のことも、梅安は大切にしている。医者は患者に希望を与える職業だ。今日死んでしまうかもしれなくても、おせきに「明日も頼む」と声をかけたのは、梅安の優しさである。このシーンは素晴らしい。
椎名桔平は白昼堂々と強盗を働く極悪人を存分に演じたが、そんな人間にも、奈良で不自由なく暮らす双子の兄への嫉妬と憎悪という複雑な心理がある。その兄の複雑な心境をふとした表情で上手に表現していて、俳優としてのポテンシャルの高さを見せている。
今回も彦次郎との絶妙なパートナーシップで修羅場をくぐり抜けていく梅安だが、その恬淡とした人生観には感服する。作品がスタイリッシュなのは、梅安の潔い生き方に由来するのだろう。演じたトヨエツも見事だった。