日本人全体が漂流しているのと同じように、ジャーナリストも学者も大混乱しているのではないか。それに対して、ネット言論が攻勢をかけているのは、あたりまえのことを主張しているだけである。柳田国男は「自分たちの牢(かた)く信じているところでは、学問は結局世のため人のためでなくてはならぬ。学者とはたとえ研究の興味に酔うて、時として最終の目的を考えぬことがあろうとも、我々の方ではこれに向かって要求することができる」(『青年と学問』)と述べている。とくに、今のような危機的な時代にあっては、絵空事はもうたくさんなのである。民主党政権になって、やたらと学者の意見を聞こうとして、内閣参与を増やしたり、各種審議会の委員に選んだりした。政治家の側に、明確な方針がないにもかかわらず、権威付けをしたいから、そうしたやり方をしたのだろう。歴代の自民党政権時代の首相のなかにも、識者の知恵を借りた政治家がいなかったわけではない。その代表格が大平正芳であった。首相の私的諮問機関の政策研究グループとして、田園都市構想研究グループを始めとして、9つの研究グループが発足し、梅棹忠夫、内田忠夫、大来佐武郎、猪木正道、山本七平らが協力した。いずれも一流であり、それぞれに国を思う国士としての風格があった。テレビ芸人のタレントや、絵空事しか論じられないサヨクとは違って「学問は結局世のため人のためでなくてはならぬ」との観点から議論したのである。
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