たった今、石原慎太郎都知事が辞職して、新党結成に踏み切った。国政に復帰するのだという。これによって一挙に政界再編を狙うのだろう。しかし、石原を支持してきた私でも、あまりにも唐突に思えてならない。ようやく自民党が政権を奪還する可能性が出てきた段階で、どうして勝負に出る必要があるのだろう。やらなくてはならないのは、政治の混乱に終止符を打つことではないか。安定した保守勢力を集めることではないか。文学者としてはドラスチックな展開は面白いかもしれないが、日本の政治に及ぼす影響は計り知れない。今回の石原の決定を聞いて、三島由紀夫が危惧していた通りだと思った。石原は三島との「守るべき価値ーわれわれは何を選択するか」(『月刊ペン』昭和44年11月号)をテーマにした対談のなかで、「何のために死ねるかといえば、それは結局自分のためです」と言い切った。これに対して三島は「文化の全体性を保証するような原理。そのためなら命を捨ててもよろしいということをぼくはいつも言っているんです」と反論した。三島は天皇陛下のために死ぬということの意味を説いたのだ。そして、三島は追い打ちをかけるかのように「自己放棄に達しない思想というのは卑しい思想だ」と一刀両断にした。石原は三島のように、天皇へのこだわりがなく、驚くなかれ共和制すら口にしてはばからなかった。石原の新党結成もいいだろう。しかし、聞いてみたいのは、新党結成の大義であり、日本の何を守ろうとするかである。
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