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WYD-③ 世界最大の瀑布 『イグアスの滝』
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この巡礼の旅の最初の目的地は、ブラジルとアルゼンチンの国境にあるイグアスの滝だった。
どうしてこの場所が我々の巡礼地の一つに入っているのか
私は旅の日程の企画段階で関わっていないのでよくわからないが、
立案した若い司祭たちにはそれなりの意味付けがあったのだろう。
とにかく単なる観光だけでないことは確かなようだ。
そう言えば、
26-7年前に 「ミッション」 と言う映画を見たことがある。
目の奥に焼きついた幾つかのシーンの中で確か映画の終わりの頃だったと思うが
実際に人間が磔になっていたかどうか定かではないが大きな木の十字架が河を流れ下り
この大瀑布からゆっくりと落ちていくシーンを忘れることが出来ない。
この河はブラジルの500年に亘る宣教の歴史を、その最初の輝かしい成功と
それに続く悲劇的な失敗と、その失敗を乗り越えて辿った南米最大のカトリック国への道と、
現代の世俗化の波に呑み込まれて、毎年300万人以上のカトリック信者が
カトリックを棄てて新興宗教に流れていく現状をすべて見守ってきた。
かつて、キリスト教的ヨーロッパ世界で教会の長女と呼ばれていたフランスが
今や回教国になりつつあるように、ブラジルは急速にカトリック国の名を返上しつつある。
そんな時に初の南米出身の教皇が選ばれたのも偶然ではあるまい。
新教皇フランシスコは教会生き残りの命運をかけて、このブラジルに世界中の若者を招いた。
日本からの我々70人は、その使命に感じてこの滝の前に立っている。
この新大陸に最初にキリスト教が伝えられた時のドラマと
思わず神を賛美したくなるようなこの大自然の驚異との間に深い関わりがあり、
神の創造の神秘を想い人間の歴史を黙想するにふさわしい巡礼の場所であると思った。
南アメリカ大陸が発見され今のブラジルにヨーロッパ人が足を踏み入れたのは西暦1500年だと言われる。
映画 「ミッション」 に描かれたグアラニー族の原住民はまだ裸で生活していたと想像される。
原住民が奴隷として狩られ、動物のように使役されていた時代のことだ。
ヨーロッパの教会では神学者たちが真顔で「彼らはただの動物か、霊魂をもった人間か?」
「洗礼を授けてキリスト教徒に改宗させるに値するか?」
「動物の一種として使役するままが正当か?」
と議論し合っていた時代があった。
7月後半の南半球は冬で、ブラジルの南の方はけっこう寒い。日は短く太陽はすでに西に傾きかけていた。
滝に向かう前の集合写真。皆、滝のしぶきに備えて雨合羽を着ている。
6-7人欠けているが、それは私の周りでデジカメを構えている仲間だ。
この写真はインターネットから勝手に拝借したものではない。飛行機から自分で撮ったものでも、無論ない。
この深い逆U字型の谷は幅4000メートル高さ82メートル275の滝が集まった世界最大の瀑布。
この写真の全面が川で、画面左の端から右の端まで岩と樹木の間に見える白いものは
全て流れが速くなって白く泡立つ河の水なのだ。
滝が密集した一番奥の部分は 「悪魔の喉笛」 と呼ばれ、年中水しぶきで姿を隠している。
左手前20%がブラジル領、残り80%がアルゼンチン側に属する。
画面真ん中下の中段になっているところに川に沿って下から上へ細く蛇行している線が我々の歩いた遊歩道。
道の先端からは悪魔の喉笛の方角が微かに遠望できる。(以下の写真は自分で撮ったもの)
遊歩道に降りて行く道の途中で
虹は横に弧を描くものとばかり思っていたが、ここでは縦に立っていた
遊歩道を行くほどに激流は足の下を流れて右のはるか崖下の川に落ちていく
カメラのレンズは吹き上げて来る滝のしぶきでたちまち濡れていく
その水は左側の滝から轟々と落ちて岩に打ちつけている
動画でないと声をかき消す大音響と岩を震わす水の質量感は伝わってこない
滝の裏のような位置にあるエレベーターで上の台地に出ると見慣れない動物に出会った
ズーム目いっぱいで撮って引き延ばしたらこんな姿だった
中型犬ほどのこの動物 アライグマでもレッサーパンダでもない 顔が全然違う
1メートル近い長い太い尾が特徴的
日本中の動物園でついぞ見られたことのない動物だと思う
尖って反った鼻 三つの白い点はどれも目ではないみたい
シャッター二回が精いっぱい アッと言う間に茂みに姿を消した
冬の太陽はつるべ落とし 早くも寒空には満月が昇り始めた
露出をマニュアルで -2 ほど落としていれば
月のうさぎさんが上向いているか下向いているか分かったのだが・・・
夜も更けて バスに揺られて体育館の冷たい床に寝袋を延べて寝る今夜の宿に戻った
(つづく)
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