:〔続〕ウサギの日記

:以前「ウサギの日記」と言うブログを書いていました。事情あって閉鎖しましたが、強い要望に押されて再開します。よろしく。

★ 国連 グローバー勧告」から見えてきた 「福島」原発事故 の問題点ー①

2014-12-21 10:35:51 | ★ 大震災・大津波・福島原発事故

 

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「国連 グローバー勧告」から見えてきた「福島」原発事故の問題点-①

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成田を発つとき外は雨だった

私は、今回の短い日本滞在を終える前に、親友から一冊の本を受け取った。その題は《「国連 グローバー勧告」福島第一原発事故後の住民が持つ健康に対する権利」保証と課題》という200ページのまじめな本だった。

ローマへの帰りは JAL と共同運航のフィンランド航空で、窓際の席に座った私は、時々夕闇に沈むロシアの凍てついた大地を写真に収めながら、その本を読み進んだ。そして、私は「国連 グローバー勧告」が日本の政府や東電による国民の「健康に対する権利」の著しい侵害を厳しく告発していることを知った。

初めのうちシベリアの山にはまだ陽が当たっていた

 

1)福島原発の名前を使った巧妙なすり替え

「川内」原発はどこにある?即答できる日本人は少なかろう。では「伊方」原発は?「美浜」は?「泊」は? 

不勉強な議員が国会で「かわうち」と読み違えた原発が、鹿児島県川内(せんだい)市にあることを、「伊方」原発が愛媛県伊方町に、「美浜」が福井県美浜町に、「泊」が北海道泊村にあることをすべて正確に言い当てられる日本人は極めて少ないに違いない。それは、原発が置かれなければ誰からも顧みられることのなかった極端に過疎な市町村の名前が付けられているからだ。

ところが、東京電力の福島第一原子力発電所の場合、たまたま大熊町と双葉町の二つの自治体にまだがっていたためにどちらの町名にも絞りかねて、発電所に安易に「フクシマ」という県名を付けてしまったのだ。

この名前の偶然が、政府や東電にとっては事故対応を過小評価、矮小化する上で好都合だった。それは原発事故の影響地域が、あたかも福島県下に限られ、影響を受けた人が福島県民(のみ)に限定されるという錯覚への誘導効果を、意図的かつ巧妙に利用できたからだ。

グローバー勧告は、全般的・包括的な健康調査を通じて、「原発事故の影響を受けたすべての人々」の健康に関する放射線被爆による影響を継続的に調査・追跡し、必要な場合、適切な治療を行うよう求めている。

実際はどうか。

「国連グローバー勧告」(P.112)

 

福島第一原発の事故によって放出された放射性セシウム(137Cs)の量は、広島に投下された原爆の168倍であったと推測される。東電は3.11の直後、福島県の浜通りに広島型換算168発の原爆を投下したのと同じだ。前代未聞の過酷事故だった。福島第一原発の事故直後の放射能汚染の範囲(被爆圏)は福島県下に限定されず、汚染物質は北は東北、南は関東地方全域に及んでいる。そして、上のSPEEDIの情報を日本政府が効率的に利用しなかったことでなどで、573名の死亡が「原子力災害関連死」として日本政府に認定されている(P.19)

 

「国連グローバー勧告」(P.113)

 

そして、2011年11月11日に発表された文部科学省による航空モニタリングの結果によれば、福島県の東3分の2を中心に、宮城県南部・北部の一部と茨城県の南部・北部、さらに、栃木県、群馬県の北半分、千葉県の北部、岩手県、新潟県、埼玉県と東京都の一部地域に、放射線管理区域に指定しなければならないほどの土壌沈着があることがわかっている。

同勧告には、「チェルノブイリ原発事故の経験からは、ベラルーシ、ロシア、ウクライナの3か国のみならず、ヨーロッパ全域にわたる放射性排出物の影響地域において、事故当時、子どもや若年層であったものの甲状腺がんの発症率が激増し、大人の発症数も飛躍的に増加したことがわかっています。」(p.102) とあるが、そこで言及されている地域の広がりは日本全土を覆い尽くすほどのものである。

それなのに、現在実施されている健康診断は、福島県が県民のみを対象としている福島県「県民健康管理調査」だけであり、県外の周辺汚染地域の住民に対する公費による健康調査の枠組みを国は全く作っていない。日本政府の健康調査の対象は「福島原発事故」だから、対象地域を「福島県域」に限り、対象者を「福島県民」に限定し、調査も福島県に782億円の拠出金をつけて丸投げして事を済まそうとしている。上の文部科学省の地図に黒く表れた福島県外の地域(それは福島県の広さの二倍ほどにも及ぶ)には宮城県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県、岩手県、新潟県、埼玉県、東京都などが含まれているが、それらの各都道府県別「県民健康調査」は実施されていない(ここで政府は数千億円を節約した)。国連は日本政府のそうした「国民の健康に対する権利」を軽視した態度を容認しない。

では、日本の政府の態度と国連グローバー勧告の立場の食い違いは何に由来するのだろうか。

それは、国連があくまで「人権」の立場に立つのに対して、日本政府はあからさまに「リスク対経済効果」を人権に優先させる立場を取っているからだ。そのことについては、次回に詳しく書くことになる。

 

 

大地にはもう太陽が届いていない 大河がうねりながら合流している 1万メートルの上空から

(続く)

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