:〔続〕ウサギの日記

:以前「ウサギの日記」と言うブログを書いていました。事情あって閉鎖しましたが、強い要望に押されて再開します。よろしく。

★ キコからの電話 「シンフォニーは中止」

2015-07-15 09:28:45 | ★ シンフォニー 《日本ツアー》

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キコからの電話 シンフォニーは中止

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2015年の梅雨の頃、深夜、午前2時 (マドリッドは夕方の7時?)、糖尿病教育入院で病棟に休んでいた私にキコから電話があった。

話し合った内容は、私が同意した結論から言うと、サントリーホールでの2016年5月7日のシンフォニー「罪なき人々の苦しみ」のコンサートは中止。従って9日の福島でのチャリティーコンサートも中止。その裏では、5月27日にソウルのカテドラル(司教座聖堂)で、29日にはソウルのオペラハウスで行うと言うものだった。

思い返せば、平山司教さまの推薦もあって、2012年のアメリカ東部のツアー以来キコは常に私をシンフォニーのツアーに同行させた。それは、東京でのコンサートのマネージメントを私に任せるための準備だった。私にとっては責任のある、しかし、心楽しい旅で、一生の財産になる恵まれた経験となった。

2016年5月の東京公演は二人の間では早くからの了解事項で、2014年11月にサントリーホールが取れたときも、キコは 「5月7日はポンペイのマドンナの祝日の前夜で縁起がいいから」 と、大いに喜んでいた。それなのに、練習会場も取れ、宿舎の目処も立ち、招待者のリストづくりに取り掛かろうとした矢先の、まさかのどんでん返し劇だった。 

一体どうしてこんなことになったのだろう。最初の兆しは2か月前、イスラエルのドームスガリレアにキコが世界中のユダヤ教のラビ(教師)を招いてシンフォニーを聴かせたときにさかのぼる。私も招かれていたことはブログに詳しく書いた。( シリーズ《世界史の奇跡?=ユダヤ教とキリスト教の和解(その 1ー5)》参照)

ソウルの枢機卿も新求道共同体の韓国の責任者に伴われて来ていた。すっかり親しくなって、私は当然のごとく枢機卿を東京のコンサートに招待し、彼は快諾した。しかし、その時、韓国の「道」の責任者の心の中では、全く別な思いが目覚めたことを私は見逃がさなかった。その証拠に、私に向かって直ちに日本の計画の凍結を迫ってきた。殆ど準備が終わろうとしているプロジェクトに、それはできない相談だったし、度を超した干渉に思えた。だが、キコがシンフォニーを日本でやって韓国ではやらないということが、どうしても承服できなかったのだろうか、その日を境に、ソウルでの公演を実現するために全エネルギーを集中して動きはじめた。

始めは、福島の直後にソウルで、という穏当な話で、それには私も大いに賛成した。しかし、それは枢機卿の日程に合わなかった。それなら東京の直前に、という話に変わった。それは、日本のスケジュールに少なからず影響のある迷惑な話だったが、それでも私は最大限譲歩した。ところがその案も枢機卿のスケジュールと調和しなかった。

事ここに及んで、先行してすでにほぼ出来上がっている日本の計画を破壊することになるのを承知の上で、全く両立不可能な独自案をぶつけてきた。

日本的な感性で言えば、連携が自分たちの都合でできないことが判明した時点で、先行している計画を護るために、競合を避けて他の時期を目標に独自の案を練るというのが常識だが、その常識が通用しない。結果的に日本が先行することになること自体がどうしても受け入れられないという情念に、一体どう向き合えばいいのだろう。

聖書には悪に逆らうな。右の頬を打たれたら左の頬も出せ、とある。キコも同じことを説く。正論をかざして相手を論難するのは昔の私の姿だ。今は奪うものに追い銭を渡そうとさえ思う。イエスの弟子同志が教会の中で争い闘ったら、キリスト教は外の世界に向かって平和を説くことができなくなるではないか。「友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない。」(ヨハネ15:13)と説いたイエスは、人生の最後に十字架の上で壮絶な死を遂げて自らの言葉を実践して見せたが、その結果三日目にどんでん返しの復活の栄光に輝いた。

だから、無理が通れば道理が引っ込む、の言葉通り、私はあっさりと撤退を告げたのだが、心は自分でも信じられないほど平安だった。神がおられるのなら、またイエスが本当に復活したのなら、この選択は必ず相応しい実をむすぶはずではないか。ソウルのコンサートを祝福し、その成功のために祈ろう。韓国、こころからおめでとう!

韓国のカトリック教会は、キコのシンフォニーを誘致するために、200人の演奏家の宿泊費、食費、会場費など、一切の現地費用を引き受けることを切り札として申し出た。仮に物価を日本並と考えれば、その額は2000万円ぐらいのものではないか。これにはキコの心も動いたに違いない。

高松に神学校を建てたときは、1億の寄付を難なく集めた私だったが、今は老いぼれて、キコのシンフォニーのためとは言え、2000万円の寄付を求めて動き回る体力に自信がない。

だが、私の本当のアキレス腱はお金ではなかった。それは、韓国の教会の歓迎ムードとは裏腹に、日本のカトリック教会の後ろ盾が全く得られていない悲しい現実であった。高松の深堀司教が引退するや、私が資金を集め苦労して完成した神学校はあっさり閉鎖され、幽霊屋敷と化した。その神学校は、教皇ベネディクト16世の慈父の愛で辛くも救われて、一時的にローマに亡命してはいるものの、今もって日本への帰還の目処は立っていない。

それとは対照的に、新任の大司教は、日本では閉鎖された「レデンプトーリスマーテル」神学校の姉妹校をソウルにいち早く誘致した。それを受けて、フランシスコ教皇は彼を枢機卿に抜擢した。彼は来年5月、ソウル教区の司祭団の黙想会(研修会)を、キコが建てたイスラエルのドームスガリレアで催すという。

  

(ここにあったパラグラフは平山司教様の指示によって追加削除されました。15日20時00分)

 

「3.11」 の5周年に際して、その犠牲者を追悼し、被災者を支援するチャリティーコンサート 『罪のない人々の苦しみ』 は、フィナーレにサントリーホールを埋めた聴衆とオーケストラとコーラスが一体となって復興ソング 「花は咲く」 の大合唱をする夢と共に、一瞬にして消えた。

いずれにしても、今回のような結果に立ち至ったことは、全て私個人の罪と不徳の致すところであり、せっかく多大な支援を惜しまれなかった大勢の協力者の皆様には、不如意な結果に終わったことを深くお詫びお申し上げなければならない。

しかし、もし将来、仕切り直しの準備作業に入る日が来るとしたら、その時はまた、これまで以上のご支援とご協力を賜りますよう、あらかじめ心からお願い申し上げます。 

2015年7月13日

シンフォニー「罪のない人々の苦しみ」公演実行委員会

委員長 谷口幸紀

 

追伸: 「キコのシンフォニーをサントリーホールでやります!」 と公言し、インターネットでも発信を続けてきたものが、突然 「止めました」 のひと言だけ残して沈黙したのでは、社会的説明責任を果たしたことにならないと思い、敢えて起こった事実をありのままに書きました。善良な信者の皆様がた、また、カトリック教会に好意を抱いて下さている方々に、教会の内情の一部をさらしました。教会も所詮は人間の世界なのです。どうか躓かないでください。

尚、このブログの元の原稿はこれよりも長いものでした。しかし、平山司教様に検閲を求めたら、私が力を込めて書いた最も大切な部分をバッサリ削られてしまいました。見解の相違はあっても、ここは従順が優先される場面です。それでも残りをブログにして出さないよりはましだろうと思って、この辺で妥協することにしました。文字にならなかった部分は、時が来たらーあるいは信頼できる人には今すぐにでもー思いのたけを個人的に語ることでよしとしようと心に決めています。 

最後に、誤解の無いように申し添えますが、私が書いたのはあくまで実際に起こった事実です。事実を隠ぺいし、ただきれいごとを並べたのでは、説明責任を果たしたことにならないから、ゆがめることも、一層のこと全部削ることも許されません。しかし、だからと言って、これをもって私が愛する兄弟である韓国の「道」の責任者を非難するものでも裁くものでもないことは、平山司教様も十分わかっていただけると確信します。裁くのは神だけですから。ただ、今回のようなことが起こらざるを得ない歴史の今なお癒えない傷を、私はひたすら悲しみのうちに見つめるものであります。

以上、報告終わり。質問、コメントを歓迎します。 

*****

尚、このブログには後日談があります。

2015年9月18日のブログには

〔速報〕キコのシンフォニーは「復活」!!

という記事があるので併せ読んでいただくとわかるのですが、一旦は中止になるかと思われたコンサートは、3週間後には再度復活して、同じ来年5月に当初計画に沿って行われることになったのでした。現在、この騒ぎで失われた時間を取り戻すべく、鋭意準備に励んでいますので、乞う、ご期待!

まことにお騒がせしました。 

    

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20 コメント

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Unknown (JDhk)
2015-07-15 15:13:18
 ショックです。ツアー決定の記事を読んで以来毎日ツアーのために祈っていたのでまさかこんなニュースを見ることになるとは思いもしませんでしたから。
 ただ、記事を読んで怒りは湧いてこなかったです。それよりもまず心の中は不安でいっぱいになりました。『その日を境に、ソウルでの公演を実現するために全エネルギーを集中して動きはじめた。』の部分んを読んだ時韓国の『道』の将来のことで不安がどうしても頭をもたげてきます。F1韓国グランプリや平昌オリンピックのことでいろいろ知ってしまったせいでしょうか、どうにも不安になってきます。
 そうは思いつつもまた別のこと、またパウロの言葉も自分のうちに浮かび上がってきます。
 ツアーに関する記事を読んでいて「JAPANツアーなのに日本の教会の姿が影も形も見当たらないなぁ」と少し気になっていたのですが、『韓国のカトリック教会は・・・』からのくだりを読んでよくわかりました。日本のカトリック教会はシンフォニーのツアーにさえソッポ向いていたんですね。ソウルの大司教様が共同期間の道に大変好意的な上ツアー実現のためにこれだけしようというのであればこの結末は致し方ないのかも、思えてきます。
 また、日本と韓国のカトリック教会を見比べているとパウロの『彼らも、今はあなたがたの受けた憐れみによって不従順になっていますが、それは彼ら自身も今憐れみを受けるためなのです。(ロマ11:31)』という言葉を思い出してしまいました。ツアーのために苦労していた神父さんはただの巻き添えのように思えてきますが。
 なにより、今回の件やいつか見た明洞聖堂のミサや教会の様子を振り返ってみると、今でも韓国のカトリック教会は聖霊の時代なんだと思わずにいられません。
 なんだかんだといっぱい書きましたがツアーの中止、やっぱりショックです。ですがそれに躓くことなく今日から2016年中にコンサートツアーが実現するように祈ります。
返信する
Unknown (Unknown)
2015-07-15 18:27:23
詳細はよくわかりませんが、神父様が韓国のコンサート開催のために譲歩してくださったことはなかなかできることではないと思います。暑い日々が続きますが、神様が神父様のご健康をお守りくださいますようにささやかではありますがお祈りいたします。 (Chie)

返信する
Unknown (Unknown)
2015-07-15 18:33:27
谷口大兄

K氏から電話をいただき、本日のブログ拝見。お心の裡、お察しします。
今は何も言わず、小生が取り組み始めていたすべての作業を中止します。インシアッラー”!

K.Y.
返信する
Unknown (Unknown)
2015-07-15 18:35:09
谷口先生

心中お察し致します。舞台をすっぽり日本から韓国に挿げ替えるこのやり方は、外交バランスのにおいさえ感じます。

M. N.
返信する
Unknown (Unknown)
2015-07-15 18:36:58
神父様
言葉もありません。
神父様の対応は頭が下がります。でもそれで済ませて良い話なのかわかりません。私が口を挟む話ではありませんが。
A. I.
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Unknown (Unknown)
2015-07-15 18:39:08
谷口神父様

おお 何ということ
天変地異 エルニーニョを超え キコニーニョが ・・・
牧者の杖が折れるとは
しかし 歩んで来た足跡はしっかりと大地に刻み込まれているし 道は閉ざされたわけでなく
希望と共に明日へ続いているのでは

ショックで深く傷つくことなく無く
立ち上がり歩き出されんことを ・・・


神ともにまして 行く道を照らし ・・・
プロテスタント教会の賛美歌だけど
カトリックにもあるのでは

とにかく 気力体力の回復を願っています

(Y)
返信する
Unknown (Unknown)
2015-07-15 20:11:45
残念過ぎます。福島だけでも実現させて欲しかった。2000万円たしかに喉から手が出るほど欲しい資金だけど。。。 またキコが嫌いになった。
(Y.O.)
返信する
言葉が見つかりません。 (Unknown)
2015-07-15 22:28:58
何と言う事でしょうか。何が動いたか知れません、谷口神父のご対応はそうせざるを得ないのでしょうが、そのまま受け止めることは出来ません。時期をみて日本でも実行出来ないのでしょうか?I.I.
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Unknown (Unknown)
2015-07-16 09:48:47
鎌倉のY.K.です。コンサート中止の件、驚いています。まだ気持ちの整理できて
いませんが、谷口神父のことを思うと、心中穏やかでありません。人そ れぞれ
の思惑があり、その人にとってはその思いは正義なのでしょうか?お体案じてお
ります。
返信する
二つ前のコメントの方へ。 (谷口幸紀)
2015-07-16 09:56:08
勿論キコは電話の会話の中で、埋め合わせに2017/2018 いずれかでの日本公演の可能性について言及しています。どちらがいいか、メリット/デメリットの評価について今検討中です。ご意見ありますか?
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