雨脚がゲームを止めたネット裏
昔話でつなぎましょうか
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パン屋さんの旗が風に煽られて揺れていた。だんだん強くなって、食べ終えたパンの下に敷いてあった紙などが飛ばされてしまいそうだった。こちらに被害が及ばないように、テーブル周りを整えた。その風はどこから吹いてくるのだろう。地下からか、地上からか、天井からか、あるいはどこかの搬入口が開いたところから、ここぞとばかりに入ってきたのだろうか。よくわからない風というものがある。
病院の近くの食堂に入った時のことを不意に思い出した。漫画がたくさん置いてあった。店主は少し年を取っていただろうか。どこか奥の方の扉が開いていて、そこからずっと風が入り込んでいた。夏の少し前でそう暑くはなかった。ずっと遠くから吹いてくるような風だと思った。山の奥から、あるいは遠い過去から、吹いてくるような風。涙腺を刺激する風だった。パタパタとメニューが揺れていたが、倒れることはなかった。
何を食べたかは思い出せない。
風のことだけはしっかり覚えているのに。