眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

ヘビーメタル(それがいい)

2020-07-30 23:11:00 | 忘れものがかり
「根を詰めすぎるとよくないよ」
 その忠告は正しいものだ。だけど詰めなければ隙間が空いて余計なものが入り込んでくる。お腹が空きすぎて痛くなったこと。友達が笑いながら裏切ったこと。古書の匂いが奪われたこと。3月の終わりに引き裂かれたこと。コーヒーカップがあふれたこと。邪魔者扱いされたこと。濁った現実と忌まわしい記憶が、呪いのように押し寄せてくることをとめられない。

「根を詰めるのはよくない」(それは何に対して……?)
 その正しさは揺るがないものか……。

 不意に戻ってきた反抗期に導かれて僕は根を詰めはじめる。
 風に向かって歩きながらすべてのテーマは風になる。(余計なものはいない)
 僕は忘れる。何も食べていないこと。友達がいなくなったこと。12月が終わったこと。コーヒーカップが空っぽになったこと。自分がこの世に存在しないこと。既に過去の話になったこと。

 あなたにはわるいけど、きっといまはそれがいいことなんだ。


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4台目の迷い

2020-07-30 22:06:00 | 【日記】原稿用紙を埋めたい人
 ホームの端っこは屋根がない。もしも雨が降っていたら、少しの間だけ傘をさして歩かねばならないだろう。少々の雨なら濡れながら歩くのもいい。開いてすぐに閉じるのは面倒な仕草だ。賢い人は中寄りの車両に乗って、そこから降りるのだ。そうすれば降り立ったホームには屋根がある。そんなこともあって同じ電車でも人のいる場所には偏りがある。土曜日に降り立ったホームはいつもと違って人が少ない。いつも同じ時間に見かけるあの人の姿もなかった。雨はもう上がっていた。

 階段を下りると右から車が続々とやってくるのが見えた。1台目は大型トラックだった。とてもかなわないと思った。大きくても小さくても、生身の肉体にとっては元々かなわないのだが、大型車両を見た時には圧倒的な重量の差を感じてしまう。イオンへ行くためには車道を横切る必要があったが、大型トラックが通り過ぎるまでは車道に近づくことも躊躇われた。私は少し膨らんで歩きながら横断歩道に向かった。

 大型トラックが速度を緩めることなく通過し、続いて3台の車があとを通り過ぎた。4台目の車は少し速度が遅かった。しかし、そのあとにやってくる車はもうない。私はあえて横断歩道の手前まで来たものの、あえてその先に踏み込むことはしなかった。4台目は速度を落としながら近づいてきた。停車する車なのか、それともそのまま進むのか。わからなかった。

 渡るのか待つのか私は少し迷いながら揺れていた。運転手の視線はまっすぐ前を向いていた。しかし、その目には迷いの色が見てとれた。行けるのか行けないのか。止まるのか止まらないのか。そうしている内に、迷いと迷いがぶつかって車は止まった。
 4台目運転手の視線の先には少し離れた場所に停止しているパトカーがあった。運転手は横断歩道の手前で速度を失って、私に横断歩道を渡らせることを選択した。
 しかし、そのブレーキは確信を持って踏まれたものではなく、私とパトカーと、もしかしたら助手席に座るパートナーの声、種々の要素が重なり合ったあとの、最終的な着地に過ぎなかったようにも思える。助手席の女は冷静な顔で背筋が伸びていたように思う。それはその時にはっきりと確認したのではなく、あとから振り返って何となくそうだったのではと思ったのだった。
 横断歩道を渡り私はイオンモールに向かった。

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【折句】我慢の子

2020-07-30 12:32:00 | 短歌/折句/あいうえお作文
ABCどこにも行けぬ週末を
食いしばる紫陽花の魂

(折句「江戸仕草」短歌)



大型のモールの中で店員が
なくしたもてなしのマインドよ

(折句「おもてなし」短歌)



絵に描いたお餅になって待ちなさい
揖保乃糸ゆで上がる1分

(折句「エオマイア」短歌)



雨が降り応接室へ駆け込んだ
ケイトが遊ぶスイッチの海

(折句「アオカケス」短歌)

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