眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

レア・ケース&コーヒー

2020-07-14 12:11:00 | ナノノベル
 とんでもない事態が発生した。
 マニュアルにはあらゆるケースを想定した、対処法が記されていた。それに沿って動けば解決不能の問題はないと長く信じられていた。それにしてもとんでもない事態が起きたものだ。
 私たちはマニュアルを一旦置くことにした。今必要とされるページがまるでわからなかったのだ。

 私たちはお菓子を食べた。歌ったり日記を書いたり昼寝をしたりした。それがよいことだとは思わなかった。それでも何か普通のことがしてみたかった。日常的な動作にくっついて落ち着いてみたかったのかもしれない。ぶらぶらと遊ぶ者がいた。パズルに興じる者がいた。酒に手を伸ばす者も現れた。

「そんなことをしている場合じゃない!」
 AIマネージャーが駆けつけて言った。
 私たちは何をしていいかわからなかった。
「これはどんな場合なんですか?」
 マニュアルにない事態は初めてのことだ。

「今はどんな場合でもない!」
 だったらそれは初めてのケースだ。
「そんなことが?」
「だから自分たちで考え動いてください!」
 私たちはただおたおたとしていた。
 コーヒーにしようよと誰かが提案した。

コメント
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