眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

とは諸説?

2023-06-09 03:29:00 | アクロスティック・ライフ
幸福とは
とめることのできないハッピーターンだ
もう1つもう1つもう1つ
ノンストップで食べ続けることで多幸感を得られる
独り占めしてもよいが分かち合うとなおよいという説もある


孤独とは
特別な例ではなく
森に木こりがいるように
農園に果物が実るように
酷くありふれた景色である


コーヒーとは
時に苦みをよしとする嗜好品である
モカ、エスプレッソ、ボス等に分類される
飲み続けることで覚醒作用がある
皮膚感覚で世界中で広く好まれている


恋とは
とかく遅れて見つけられるものである
物思いに耽るようになったり
のびしろだけのパスタに巻き取られて
独りではないと気づかされる


小松菜とは
トウモロコシ畑に生息する
もっさりとした獣の一種である
ノミよりも生命力は強いが
人見知りであることが多いらしい


後悔とは
どうしようもなく振り返ることだ
物語は前に進むことにこそ価値があり
乗りそびれた船にすがることはできない
ひなどりだってわかっていること


小銭とは
どこかでチャリンと音がして
もしや我が身から出たかと疑われるものである
飲み物を買ったり感謝の意を伝えるのに使われ
拾ったら交番に届け出るのが通例となっている

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雨と地下街

2023-06-08 19:02:00 | コーヒー・タイム
 雨の日に人混みを歩き続けるのはストレスになる。道が広いところならそうでもないのだが。しばらく歩いて地下街に降りて皿うどんを食べた。1050円。それなりに空腹が満たされた。300円くらいで作れそうだ。もうちょっと熱がほしかった。地下街の中にはそれなりの数のカフェがあって、その中から選べることは幸福だ。気づくとなくなっていた店もあり、新しくできた店もあるようだ。店によって色々と個性があって面白い。少し場所が変わるだけで客層も微妙に違っているのも不思議だ。それは何によって決まるのか。ふとそのようなことを考えていた。

 気持ちのよい接客をする店には、気持ちのよい接客を求める客が足を運ぶ。気持ちの悪い接客をする店には、神経の図太い客、七難八苦を求める客が足を運ぶ。快適な空間を提供する店には、快適な空間を求める客が足を運ぶ。不快な空間を提供する店には、七難八苦を求める客が足を運ぶ。駅が近い店には、駅で働く人々、駅前留学生等が足を運ぶ。天井の高い店には、伸び伸びとした人が、くつろぎやすい店には、くつろぎを好む人が、ケーキセットがお得となれば、ケーキ好きの人が足を運ぶだろう。

 電源が完備されていれば、電源を求める人が足を運びそこにPCをつないでパソコン通信を始め異国の人、あるいは星を跨いで交流を試みようとするように、それぞれの興味・関心がマッチアップされて、それが客層と言われるようなものを形成しているのかもしれない。クレバーは難波の西寄りに位置し店内には様々なタイプの席がある。10年以上も前からあり、開店当初からの白を基調とした店の雰囲気はそう変わっていないようだ。かつて喫煙ルームだった奥側は、その名残もあって少し雰囲気が違っているようにも感じられる。カウンター席の椅子は脚が高いため、じっくりと腰を落ち着けて利用するには少し不向きかもしれない。

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消えた1時間/ハラスメントが始まる

2023-06-07 05:20:00 | コーヒー・タイム
 降ったりやんだりの雨で街には傘をさしたりささなかったりの人が歩いていた。さっきまでさしていた傘を僕は閉じた。傘をさすまでもない。時折吹き付ける強風がむしろ疎ましい。千日前通に近づいたところで青信号が点滅してあきらめた。(駆け出した瞬間に突っ込んでくる自転車が怖い)待つよりはと思い地下への階段を下りる。北階段から地上へ出てみるともう信号は青に変わっていた。そんなに早いのなら立ち止まって待つ方が楽だった。無駄な労力を使ってしまった。それというのも、ただ待つという時間を恐れすぎたためだ。待つには長すぎる信号もある。待っても何でもない信号もある。街に数ある信号機の待ち時間は一定ではない。それにも関わらず、待ち時間はどこにも明らかにはされていないように見える。だから、人は無理して駆けて渡ろうとしたり、無駄な回り道をしてしまうのではないだろうか。街の信号は聞きなさい。これより先、信号の前に待つ人が現れたら、時を読んで知らせること。

 地下街は割高だ。ふとそんなイメージを持った。このくらいの雨ならとも考えて、僕は歩いてアメ村に向かった。高架下にあると噂に聞いた中華店で見つけたのは、看板と下りたシャッターだけだった。(またグーグルの情報に踊らされてしまった)地下街に戻る手もあったが、もういいやと近くのラーメン屋に入った。券売機はない。店内は外国人客ばかりだ。しばらくして水を持って店員がやってきた。シンプルなラーメンを注文する。

「トッピングは?」
「なしで」
「なしで」

 狭い厨房の中に動き回る男が3人、4人……。ずっと動いているので正確に人数を数えられない。暑いだろうか? もっと夏になったら。上下関係はあるだろうか? もしも自分がカウンターの向こうにいる側に立ったらと考えてみた。勤まるだろうか、無理だろうか。5分ほどでラーメンが届く。790円。
 麺は細麺、スープは濃厚。ふーふー。手に負えないほど熱くはない。「旨いけど」チャーシューは口の中でとろけて消えた。もう浮かんではいない。(一切れか……)チャーシュー麺でないとは言え、一切れか。「トッピングは?」5分前の店員の問いかけが思い出される。全体的に寂しくも感じられるのは、トッピングありきで設計されているからとも考えられる。(だったら千円は絶対超えてしまう)もはやラーメンはパスタよりも高級品なのだ。だが、これくらいのものなら家で作れば400円ほどで可能だろう。メンマはキャンドゥで購入できる。チャーシューにこだわる必要はない。豚バラともやしをタジン鍋で蒸して入れれば簡単だ。元のラーメンは、マルタイでも藤原製麺で十分だろう。少し手間暇をかければ、家で美味しく節約だってできるのだ。

「これくらいのものなら」
 それは僕の完全な主観だ。旨いことは旨い。(世の中には、残念ながら一口食べて逃げ出したくなるようなラーメンも存在する)しかし、旨さによって引き出される笑みが、どうにも抑えられないというほどではない。
「ラーメン屋でラーメンを食べるなら感動しなければ意味がない」
 これも僕の勝手な思い込みだろう。
 シンプルに旨いラーメンは5分で食べ終わった。
(およそ千円……)
 僕が働いてきた1時間と同じ。
 安易な計算式に虚しさを覚えながら、僕は地下街を歩いていた。


 夢の中では掴み取りが催されていたが、誰も積極的に参加しないことが不思議だった。20秒かきまわせば500円にはなる。500円! と思えば気合いが入る僕が少しずれているのか。じゃりじゃりと手を突っ込む内に、今までとは違う感触がる。記念硬貨のお化け5円だった。
「10年前とは積もり方が違うような……」
 おばあさんが言ったのは天気についてか自身の疲れについてかは不確かだった。角屋食堂はシャッターを下ろしていた。10年に1度の定休日だった。おじいさんに電話だ。(こっちだって50年振りに足を運んでるんだよ)あきらめて帰る道すがらマリに会った。
「知り合いのやってるチーズの美味しい店があるけど行かないよね」
 僕は手をあげてじゃあねと唇を動かした。全くなんて誘い方だよ。


 夢の中には街があり、街の中にはモールがあり、モールの中にはカフェ、めがね屋、うどん屋。うどんの中には野菜があり、野菜の中にはカエルがあり、カエルの中には緑、緑の中には街があり、街の中にはカフェがあり、コーヒーの中にとけていくミルクが、僕のみている夢と交じっていくのだ。


 社会に出れば様々な働きかけがある。それは錯覚やマインド・コントロールとの戦いだ。早く歩け。無駄なく進め。お客様を第一に。(時にそれらは大いなる矛盾を含む)ちゃっちゃとやるように。すいすい動け。手首を上から動かして、おいでおいで。(僕らは子犬になったのだろうか)
 それで反発されたこともないのだろう。相手が不快に思っているなど夢にも思わないのだろう。最初は何も知らなくて当然、誰でもできなくて当然、失敗もあるし慣れるには時間もかかる。(効率なんて徐々に上げていくものだろう)そうした配慮もなく常に上から上から押しつけるような態度で、果たしてどれだけの人がついていくだろうか。自分の社会の中心は、世界の中では片隅にすぎない。
 だから「いつでも逃げ出していい」。そうした覚悟/余裕を持って自分を守ることも大切だ。
 スマートフォーンは封じられて、僕らは一定の自由を制限されている。録音を試みたり、写真や動画に収めることは難しくなった。だが、まだ文字があり言葉があり、心にひっかかることを発信する自由までは失ってはない。会社は王様でも支配者でも何でもない。ただのカテゴリーだ。
「僕らは会社の下になんかいない」

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自己紹介

2023-06-06 05:06:00 | アクロスティック・ライフ
恋人と呼べる人はいません
友達と呼べる人はいません
物心がついて独りを学びました
乗り遅れたところがはじまりでした
独りで石を集めていました


言葉が恋人のようなものです
どこにでもポメラを持っていきます
妄想をつまみにコーヒーを飲みます
ノンジャンルに属しています
悲観的というわけではありません


コロコロは狭い範囲でかけます
トナカイの角くらいなら描けます
もやしが入ったみそ汁が好きです
飲めと言われるのは嫌いです
ひねくれた性格です


コツコツと続けることができます
床についたら眠れません
物語性があるとうれしいです 
脳ほど面白いものはありません
人をみて人見知りします


向上心はあった方がいいです
ドローンは飛ばしてみたいです
黙々と働くのは苦ではありません
脳と心について考えていました
人によっては打ち解けられます


恋人は特に募ってはいません
友達の作り方は忘れました
桃太郎はうろ覚えです
喉元過ぎればすべてを忘れます
非難の的にされることはありました


怖い人が怖いです
途方に暮れていることがあります
もみじおろしもあったらいいです
のびしろはまだあるはずです
人より言葉の方が好きです


小骨がひっかかるのが恐ろしいです
棘のある人が疎ましいです
元は赤ん坊なのになと思います
ノートを広げて創作します
必要とされてみたいです


コーヒーは出かけるとよく飲みます
時計はしていません
もどかしいとろに何かを探しています
野沢菜が好きでした
日暮れほど切ないものはありません


怖い話は好きではありません
どこか遠くの街で暮らします
モラハラは勘弁してください
のけものなので自分を磨くだけでした
比類なきものに憧れました


孤独はわるくないと信じています
特別な何かでありたいと願いました
モチベーションは復讐心です
ノートを広げて苦悩します
秘密は守ります


コーヒーが好きみたいです
唐辛子を好んでかけます
物を書く他はありません
のんびりと過ごしてみたいです
人は人でした

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勝手がわからないラーメン屋

2023-06-05 05:48:00 | コーヒー・タイム
 エプロンを外し歩き始めた夕暮れの街は少しだけ雨が降っていて、傘をさす人ささない人がそれぞれに歩いていた。尾道ラーメンは手堅かったが新しいものを求めて東へ向かった。
「通常より多少混んでいます」
 グーグルを頼りに到着したうどん屋はシャッターが下りていた。

(本日定休日)

 空腹のまま歩き続ける。興味のあるラーメン屋があったが、店頭に掲げられた看板の煙草愛に圧倒されて逃げ出してしまった。もう一件のラーメン屋は定休日だった。新なにわ筋から南へ東へと進んで行く内に、気がつくとアメ村を歩いていた。

「煮干しセット、半チャーハンで」
「食券を!」

 千円札は何度も投入口から戻ってきた。今まで財布の中で眠りすぎていたせいだ。シェフは一人。僕が食べ終わるまでに1組の男女(夫婦だろうか)が訪れた。

「ごちそうさまでした」
「丼をカウンターに上げて!」

 近頃は何となく外食すると軽く千円飛ぶ。1時間分の賃金など一瞬だ。(それでさえ満足するには程遠い)家で味噌汁にもやしを入れて食べた方が体には良さそうだ。地下街への入り口は工事中のため閉鎖されていた。西から回らなければならないようだ。体調が冴えなくても、コーヒーくらいは飲まないといけない。

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ショートが氷水になるまでに

2023-06-03 17:54:00 | コーヒー・タイム
 活力が満ちているわけではないのに、習慣としての着席がある。コーヒーのそばにルーティーンとしてポメラが置かれる。そもそも開く気力がない。そもそも開く体力がない。体力がないから気力も湧いてこないのだろうか。それでももっと気力があれば体力を引っ張りながら気力は湧いてくるのではないか。体力が先か気力が先か。考え始めると気が遠くなる。

 何か1つ浮かばないかな。いつもよりも弱っている自分だからこそ、いつもとは少し違うところから出てくる何かがあるのではないか……。そんな都合のよいことを、こっそりと期待している自分がいる。

 やはり人間は、寝てないと駄目になるのだろうか。眠れない日は、とにかく寝付きがわるい。夢から引き戻される一瞬に、初めて眠りを意識する。実際に眠ったのは明け方の数時間くらいだろうか。眠れない時には、絶対に焦っては駄目だ。焦るなと強く意識する時点で焦り始めているのだから、自然に構えている方がいい。咳が出たり鼻水が出たり、冴えたり、寒かったり暑かったり、色々と重なって、苦しくて眠れなくなる。十分に眠れないまま、朝からの仕事はきつい。せめて昼からだったら少しはましだ。

 閉じたポメラの上にA6のノートを開いてみる。ポメラと目を合わせられず、キーボードに指をかけられないような時でも、紙とペンに触れるくらいのことはできる。淡い期待を持ちながら、もう少しここで粘ってみる。

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動力はファンタジー

2023-06-02 03:35:00 | アクロスティック・ライフ
コクヨペンを積み上げて天まで登る
動力は遊び心
モノトーンの街にパステルカラーの秘密基地
ノートン先生さようなら
表紙を飾るのは僕たちの番だ


コーンフレークを寄せ集めて冬を越える
動力はユーモア
モザイク画に浮いた暗号資産
飲み込めない条件にミルクを注ぎ
干からびたフィルムにカルシウムを


コッペパンをつなぎ合わせて君の家まで
動力はハングリー
モンスターはほんのり小麦に焼けて
農薬の街を密約で縁取る頃
羊ヶ丘はバター色に染まる


コオロギをかき集めてバンドをつくる
動力は愛
悶々とした日常を吹っ飛ばす
のりのいい奴をよろしく
ヒストリーをひっくり返して熱い熱いキスを


校舎の壁を蹴って飛び立った
動力は憎悪
戻らない決意が猫の瞳に躍る
のこぎりでも断ち切れない闇
引いて駄目なら突き放そうか


駒が尽きても食らいついていく
動力はプライド
持ち合わせは懐中時計
逃れ切れない形勢を巻き戻して
飛車をもう一度この手に届けてほしい


コーヒー湖をさまよっているマドラー
動力は執念
もういいかいまーだだよ
濃密だった頃を思い出して
日がな一日きみを探し続けている

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エアコンが早すぎる/オムレツも作れない

2023-06-01 02:45:00 | コーヒー・タイム
 5月になって夏日の日などが出始めるとどこも一斉にエアコンを働かせて冷房をがんがん利かし始める。そうなったら、もう止められない。当日の気温なんてお構いなしなのか。延々と冷房を利かしすぎて、僕みたいな寒がりは行く先々の店内で腕を抱えて震えて過ごす覚悟がいる。
「季節ってそんなに単純か?」
 本日より夏になりました。もう戻ることはございません。まるでそんな態度かと疑われる。7月8月は確かに夏だろう。毎日エアコンを稼働させて冷房を利かせなければ危険でさえあるだろう。だが、5月も同じでいいのか? 5月はもっとふんわりとした季節ではないか。5月であっても、日によっては10月中旬だったり、3月上旬であるかのような日に変わったりするのではないか。それでも頑固者はエアコンを止めようと動かない。どうしてなのか? 3月なのに、10月と同じなのに、冷房なんか利かせて何も不思議がないというのか?
 もう20時30分だよ。
「もう暑くないんだから、いい加減止めないか?」
 おい、そこのモールのフードコート!


 フィクションくらい好きにさせとけよと思わなくはない。
 傷つきやすい人は、傷つけることにも敏感だ。言葉を口にしたり、物を書いたりする時は、(これって誰か傷つけてない?)と一旦慎重な姿勢を取ることは、普通だ。だが、どう考えたところで100%は無理だろう。
(何を言っても駄目だ)
 喧嘩が拗れてどうにも気まずい空気に支配された時、適当な言葉が見つからずにずっと黙り込んでしまったという経験はないだろうか? その状況下では、素直に受け取れる言葉なんてなく、互いに傷つかないことができなくなっている。言葉を尽くしたとしても、ちゃんとしたとこには届かない。(無理ゲーなのだ)
 生きている限りは、誰かを傷つけたり迷惑をかけることを避け切れないのではないだろうか。一切角を立てないつもりなら、何も歌わないのが一番安全だ。皆はそれほど静寂を愛しているのだろうか。きっとオムレツだって作れなくなる。


 5月というのにインナー・ダウンを着ていた。僕はあまり前に出るタイプではないのだ。けれども、商品は前に出さなければならないという。後ろに引っ込んでいては売れず、また商品には表と裏が存在し必ず顔を前に出しておかないと駄目だという。ひたすら前へ前へと引き出していく仕事にはなかなか終わりが見えなかった。(弾けるような成果というものには程遠い)
「ありがとうございます」
 客が商品を1つ手に取ってカートに入れた。ありがとう? 商品が売れる。確かにそれはいいことのはずだ。だけど、心から喜べない。店の利益がどうした? どうあろうと賃金には何も関係がないようでもある。前に出ていた商品が消えたことがくやしくもある。(前に出ていたとうだけで売れたのか?)またやりなおしだ。整えたところで崩れるのはすぐ先の風景だった。単調な作業の繰り返しは眠たくもなる。誰か困っている人が現れてくれないだろうか。瓶詰めのマスタードでも、練りゴマでも、フライドガーリックでも、何でもいい。いつでも準備はできている。誰かを案内しながら、僕は歩き出したかった。


 僕が部屋にひきこもっていた頃のことだった。親戚の姉さんが部屋に入ってくるとジャラジャラとカーテンを開けた。太陽の光が射し込んで、部屋の中の魔物たちが一斉に悲鳴を上げた。
「社会復帰しないとね」
 彼女はさらりと言った。ごく自然な挨拶のように軽かった。けれども、僕はその言葉に本当は酷く驚いたし、傷つきさえもした。平静を装って頷くのが精一杯だった。(彼女はその時のことなどまるで覚えていないはずだ)
 社会とは…… 復帰とは……
 僕はいつ外れたの?

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