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無煙映画を探せ  

映画のタバコシーンをチェック。FCTC(タバコ規制枠組条約)の遵守を求め、映画界のよりよい発展を願うものです。

終の信託

2012-10-31 | 2015以前の映画評


「終の信託」 周防正行監督 ○ ☆ 無煙映画大賞候補

 呼吸器内科のエリート医師折井綾乃(草刈民代)は同僚の医師(浅野忠信)に振られ、自殺未遂事件を起こします。その時に心の支えとなったのは患者の江木秦三(役所広司)でした。江木は長いことぜんそくの持病に苦しめられ主治医の綾乃に「最後の時が来たら早く楽にしてほしい。」と託します。その後、心肺停止状態で救急搬送された江木はその時は一命を取り留めますが、延命の治療が始まるのでした。最後を託されていた綾乃は重大な決断をします。しかし、3年後にその処置が刑事事件に発展し、検察官塚原(大沢たかお)の厳しい追及を受けるのでした。
 綾乃が検察庁に呼び出された場面から始まり待たされている間に過去を回想するという形でいきさつを説明した後、見せ場は塚原と綾乃の息詰まるような攻防の場面です。どちらにも賞をあげたい名場面です。草刈はもちろんのこと、憎たらしい検事の大沢と女ったらしの医師浅野のふたりの悪役(?)が好演していました。  
 タバコはなし。周防監督初の無煙映画です。

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希望の国

2012-10-30 | 2015以前の映画評


「希望の国」 園子温監督 ××

 暴力とハダカの鬼才園監督が原発事故後の家族を描いています。福島の事故後、同じような地震から長島県の原発も爆発します。それまで息子夫婦とともに認知症の妻智恵子(大谷直子)を世話しながら畜産業をしていた小野一家ですが、チェルノブイリ事故をきっかけに原発について勉強していた父親泰彦(夏八木勲)は息子夫婦に避難を勧めます。庭の中に20キロ圏の杭が撃たれ、杭の向こう側の隣人は有無を言わさず避難させられてしまいます。息子の洋一(村上淳)は残ろうとしますが説得され妻(神楽坂恵)とともに避難します。妊娠していることがわかると妻は防護服を着ておなかの子を守ろうとしますが周囲の目は冷たく、夫は避難した先で就職した工務店の仲間からからかいの対象になったりもするのでした。
 福島事故後、実際に起きたいくつかのできごとをひとつにまとめた展開になっています。「希望の国」というよりは「希望のない国」の姿です。それでも人は何かに希望を見つけて生きなければいけないのではないのでしょうか。それが「愛」であるならば泰彦と智恵子のラストは納得できません。飼っていた牛たちを引き連れ夫婦で「希望の国」をめざしてほしかったです。
 ただ、今までの園監督の作品の中では最も評価できる作品です。
 それだけに村役場の職員の喫煙(×)と工務店の職人たちの喫煙が(×)残念です。タバコにもポロニウムという放射性物質が入っていて常習喫煙者はタバコだけでもかなり内部被ばくしています。演出上どうしてもタバコが必要と言う場面でもなかっただけにとても残念です。


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タケヤネの里

2012-10-30 | 2015以前の映画評


「タケヤネの里」 青原さとし監督 × ☆

 伝統の「竹皮編み」の工芸師となった知人の前島美江さんを、青原監督が群馬県高崎市の工房を訪ねるところからこのドキュメンタリーは始まります。「竹皮編み」の材料となる竹の皮はカシロダケといって福岡県八女市星野村の一部地域にしかありません。前島とともに材料集めに出かけ、それをきっかけにかつてさまざまなものに活用されていた竹の皮を追い求め、京都、東京の職人たちを紹介していきます。江戸時代から続いていた広域での流通の歴史も伝えています。竹の利用がグラスファイバー素材などに代わって荒れるばかりの竹林(タケヤネという)を前島の呼びかけで全国からボランティアが集まって手入れをし、皮を集めています。また、ある地域ではボランティアを海外にも呼びかけ、外国人も竹藪の手入れに参加しています。
 竹皮と言うとせいぜいちまきの皮などしか思い浮かびませんが、高級な素材として舞妓さんの履物や雪駄、茶道用具などにも使われていることを知り感動しました。しかし、どの作品もそれらを引き継ぐ職人さんたちがこれからも育っていくのかが心配です。このような環境負荷の少ない素材はこれからも生かしていきたいものです。
 なお、この映画の上映がきっかけとなって地元の人々が「タケヤネ」を守ろうと動き出したそうです。映画の力ですね。
 タバコは残念なことに、インタビューを受けている地元の自然保護関係のアドバイザーと言う人が喫煙しながら答えていました。(×)


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よみがえりのレシピ 特別論評

2012-10-28 | 無煙映画特別論評
 山形県鶴岡市の周辺で、在来作物を守り育ててきた農民と、在来作物をイタリアンに変身させるレストラン「アル・ケッチアーノ」の名シェフ奥田政行さんとの出会いを、在来作物の研究をしている山形大学江頭宏昌准教授の解説で紹介しているドキュメンタリーです。
 在来作物と言うのは「ある地域で、世代を超えて、栽培者によって種苗の保存が続けられ、特定の用途に供されてきた作物」のことで、「生きた文化財」とも言われています。
それぞれの品種を守る人々は「おいしい」と言ってもらえることが嬉しくてお金にはならないけれど細々と栽培しています。しかしながら、その表情はとても生き生きとしています。映画の命でもある映像も山形の美しい自然を絡ませ、どの場面も美しく映っています。特に焼畑で栽培されるカブの場面は10年ほど前に「牛房野のカノカブー山形県尾花沢市牛房野の焼畑―」(六車由実と東北芸術工科大学の学生たち制作)という焼畑農法を撮ったビデオに比べると、今回の撮影方法は素人でも「焼畑農法」がよく理解できる秀逸な展開となっています。「焼畑農法を後世に伝える」という文化映画としての価値もあります。
在来作物と言うその地域でしか育てられない作物はとても不思議な魅力にあふれています。筆者も貴重種と言われる品種を人づてに手に入れ栽培していますがどうしても同じようには育ちません。その土地の気候と土壌、まさに「風土」が育んでいるのです。本物が食べたかったらその土地に赴くしかありません。その場を提供している「アル・ケッチアーノ」は、在来作物をかつて農家で食べていた食べ方とは全く異にした食べ方で紹介し、街に住む人々にそのおいしさを再認識させています。また、レストランの繁盛は作物だけでなく在来作物を守り育てる次世代の人材を育成するという目的に大きく貢献しています。
今後は「昔からの食べ方が一番おいしいね。」とかつての食べ方がよみがえってきて、その地域の食文化の継承につながっていくことを願っています。

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よみがえりのレシピ

2012-10-26 | 2015以前の映画評


「よみがえりのレシピ」 渡辺智史監督 ○ ☆☆ 無煙映画大賞候補

 山形県周辺で在来作物(ある地域で、世代を超えて、栽培者によって種苗の保存が続けられ、特定の用途に供されてきた作物―収量などの関係で栽培する人が減り、今では絶滅が危惧されている種が多い)を守り育ててきた農家と、在来作物をイタリアンに変身させるレストラン「アル・ケッチャーノ」の名シェフ奥田政行との出会いを山形大学准教授江頭宏昌の解説で紹介しています。特に焼畑の場面はかつての作品「牛房野のカノカブー山形県尾花沢市牛房野の焼畑―」(六車由実と東北芸術工科大学の学生たちによる制作)よりもずっとわかりやすく撮影されていました。
 「おいしい」と言われることが嬉しいからお金にならないけれど細々と栽培し続けてきた人々はとても生き生きとしています。表情の撮り方もとてもうまいです。気持ちが伝わってきます。また、本当においしいものは手を加えなくても、そのまま食べてもおいしいものです。上映会場で購入した温海カブは塩もみにして食べましたが素材のうまさが生きていました。
 この作品を観た人のうち一人でもいいから全国の在来作物を継承する人になってほしいものだと願っています。
 タバコはなし。無煙です。

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ペンギン夫婦の作りかた

2012-10-26 | 2015以前の映画評


「ペンギン夫婦の作りかた」 平林克理監督 ×

 毎年冬になると出かけている沖縄県那覇市の街中で見かける「ペンギンラー油」の由来がよくわかりました。北京で知り合った中国人の夫(ワン チュアンイ)と日本人の妻(小池栄子)が評判の石垣島ラー油を作るまでのいきさつを描いています。帰化を審査する職員と夫婦のやりとりを通して、帰化が認可されるまでのお話です。その話の中の主だった出来事を展開させ、笑える勘違い事件なども織り込まれ最後まで面白く見ました。登場人物は数人ですが個性を発揮した好演でした。ほとんど夫が作ってくれる料理を二人で食べるところがいいし、石垣島ラー油を付けて食べる自家製のギョウザがとておいしそうでした。
  タバコは残念なことに冒頭で帰化審査担当係員が屋外で喫煙しました。沖縄とタバコ会社は仲がいい?のでしょうか。

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アイアン・スカイ

2012-10-25 | 2015以前の映画評


「アイアン・スカイ」 ティモ ヴォレンソラ監督 フィンランド独オーストラリア ×

 B級と言われている作品ですが侮れません。1945年ナチスは月の裏側へ移住し、着々と地球奪還を狙っていました。そこへやってきたのはアメリカから選挙PRのために月へ送られた黒人モデルのワシントンでした。ワシントンをガイドにし、ナチスは地球攻撃を始めるのでした。
 アメリカ大統領は保守派の女性議員そっくりだったり、黒人を白人にしてしまったり、国連会議はてんでバラバラだったりと風刺が効いていて楽しめます。製作費何億ドルとか大スター競演などと大宣伝している作品が全然おもしろくなかったりする反面、このような作品に出会えると「映画っておもしろい」と再認識します。
 タバコは製作費の調達の為か1回アップで映りました


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ツナグ 特別論評

2012-10-17 | 無煙映画特別論評
「ツナグ」 平川雄一朗監督

 死んだ人と一度だけ会うことができるというおとぎ話です。「ツナグ」と呼ばれるのはその仲介人のことで、祖母からその役割を引き継ぐための修行をしている高校生が主人公です。母親に病名を告知せず死なせたことを後悔する中年の男、交通事故で急死した親友の最後の言葉が気になる女子高生、行方不明になって7年にもなる婚約者のことが忘れられない青年などがオムニパス形式で登場します。どの逸話もありふれたものではありますが、樹木希林、仲代達矢、八千草薫といったベテラン俳優の安定感ある演技と松坂桃季、橋本愛、桐谷美玲、大野いとなどの期待の若手俳優たちの熱のこもった競演で感動させます。また、仲代達矢の「見えるものだけが真実ではない。本当に大切なものはこころの中にある」という言葉が重く響きます。
 演技だけでなくひとつひとつの小道具がとても気が利いていて生活感がありました。映画は映るものすべてに心がこもっていることで完成度が高くなり、だからこそ人の琴線にふれる作品になるのだと思います。 
「ツナグ」などという存在は科学的にはあり得ないことかもしれません。しかし、私たちはいつも亡くなった人々に守られて、というか一緒に生きています。別に「ツナグ」の力を借りなくてもその場にいない人を思って行動することもしばしばあります。ですから「ツナグ」は決しておとぎ話ではないことに気づきます。そして今、生きていることを再確認することができます。死んでしまった人々からパワーをもらってくじけそうになっても生き続けることができるのです。
 なお、この作品の見どころはエンディングクレジットの日蝕の太陽です。輝いていた太陽が消え再び現れることで「再生」の象徴としたラストは最後まで席を立たずに観ていた人だけに与えられる感動です。


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新しい靴を買わなくちゃ 特別論評

2012-10-17 | 無煙映画特別論評
「新しい靴を買わなくちゃ」 北川悦吏子監督

 物語は恋人に会うために日本からパリへやってきた妹の付添いの兄がセーヌのほとりで置いてきぼりにされ、たまたま通りかかったパリ在住の日本女性と出会い、そして恋をする3日間を描いています。
 宇宙人が攻めてくるわけでもなく、CIAが暗躍することもなく、エイリアンもバンパイアも出てきません。アクションもバイオレンスもハダカもありません。近未来を暗示するテーマもなく変身ロボットやヒーローもいません。おまけにギャグで笑わせることもせず、シニカルなユーモアもありません。と評すると「退屈な作品」と思われそうですが意外にそうでもないのです。
 オープニングが抜群にいいです。モノクロの写真が次々登場し、そのテンポが早くなりいつのまにか普通に動きだし色もついています。バックに流れる音楽が心地よく「いい曲だな」と思う頃クレジットに「音楽 坂本龍一」と出て、「なるほど」と納得し物語の世界に期待して入り込めます。
 主人公のふたりの行動を通してパリの観光名所も随所に紹介され、その上ちょっとさみしい年上の女性と素敵な若者との恋だから女性客には嬉しい設定です。素晴らしいのは主役の若者もその妹の恋人も料理を率先して自分でするところです。妹が恋人とすっきり別れるのも潔くて好感が持てます。女性監督らしい細やかな演出です。主人公のふたりも靴のヒールが折れたことがきっかけで出会い、最後に新しい靴が届いて新しい人生がそれぞれ前向きに始まる予感で終わりあとくされもなくさわやかです。
 映画の基本である映像がまれに見る美しさで、その場に合ったいい曲が流れゆったりと落ち着いた気持ちになります。常にガチャガチャとにぎやかに動き回っている騒々しい作品ばかりが大宣伝して観客を呼び込んでいますがそのわりに若者の洋画離れに歯止めがかからないと聞きます。ハリウッドだけが映画ではないことをもっと伝えてほしいものです。
 



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ツナグ

2012-10-16 | 2015以前の映画評


「ツナグ」 平川雄一朗監督 ○ ☆ 小道具☆ 無煙映画大賞候補

 使者(ツナグ)は、たった一度だけ、死んだ人と会わせてくれる案内人です。ツナグ修行中の歩美(松坂桃李)は「母親に会いたい中年の男(遠藤憲一)」や「喧嘩したまま交通事故死した親友に訊きたいことがある女子高生(橋本愛)」などの希望をかなえていきます。修行しながらも自分のしていることに意味があるのか疑問に思うこともある歩美は、ツナグの先輩でもある祖母(樹木希林)に問いかけます。死んだ人との再会は人を幸せにするのでしょうか。
 樹木希林や仲代達也などのベテランが脇をしっかりと固めています。一方、松坂や橋本などの若手も今後の活躍を期待させる好演をしていて作品を盛り上げています。また、あまり目立たない小道具などがとても気が利いていて、細部までよくできた秀作になりました。なお、最高の見せ場はエンディングの日蝕です。一度消えた太陽がまた現れることで「再生」を印象づけました。最後まで楽しめます。
 タバコはなし。無煙です。松坂桃李は主演男優賞候補です。


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