
「YARN 人生を彩る糸」 ウナ ローレンツェン監督 アイスランド、ポーランド合作 ☓
YARN(糸)を使ってさまざまな活動をするクラフトアートドキュメンタリーです。
アイスランドでは荒れ地でも育つ羊のウールを紡いで編んで生きている人。そして編むことでアート作品とする人、糸でパフォーマンスをする人などを紹介し、「糸」の持つ可能性と編むことで人生を豊かにし、人を幸せにしている様子を映像に収めました。
日本人のアーティスト堀内紀子は自分の名前「紀」が「糸」と「己」で糸を扱うことの縁と自分の作品が子どもたちの人生を豊かにしていることに誇りを持っています。また、糸を編むことは頭の中を冴えさせる効果があり、彼女の言葉として「ドラッグを使わなくても冴える」と表現しています。かつて母親たちは子どもの衣類を自分で編むことが普通に行われ、ひと編みひと編みの仕事が身近にありました。女性が賢いのはそうした手仕事を黙々と行っていたからではないかとも思わされました。
一方で編み物は「女の片手間仕事」としてしか評価されず、たまに男性が編み物をしていると「すごーい!」と拍手されるというちょっと厳しい意見もありました。
冬季五輪のアルペン種目のコーチ(男性)がスタート地点で選手をリラックスさせるため「編み物」をしている映像がありましたが、まさにこの映画の言いたいことのひとつを体現しているようでした。
1本の糸がたいした道具も使わずさまざまな形に変化する面白さを再確認し、毛糸を買いに行きたくなる作品です。
タバコは、アイスランドの羊飼いの女性が羊小屋で喫煙、アーティストの一人も喫煙者でした。編み物をしているとタバコを吸う必要はないのではないかと思いますが・・・。(☓)