無煙映画を探せ  

映画のタバコシーンをチェック。FCTC(タバコ規制枠組条約)の遵守を求め、映画界のよりよい発展を願うものです。

「ぼくが生きてる、ふたつの世界」

2024-11-17 | 2024映画評

「ぼくが生きてる、ふたつの世界」 呉美保監督 ✘✘

 五十嵐大のエッセイ集「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」が原作です。

 大(吉沢亮)は子どもの頃はろうの母親と社会との通訳を当たり前にしていましたが、成長とともに周囲の目が気になるようになり逃げるように東京へ出てなんとか生きていました。疎ましかった母からある一言を告げられショックを受けるのですが・・・。

 母親役の忍足(おしだり)亜希子、父親役の今井彰人、そして登場するろうの役はすべてろうの俳優が演じています。

 2014年のフランス映画「エール!」では冒頭からろうの家族が遠慮なく出す日常生活のガチャガチャドンドンといった音がやかましく「聴こえない、とはこういうことなのか」と気付かされましたが、今作は静かでちょっと違和感がありました。

 「小さな親切大きなお世話」的なやりとりがあり、聴こえなくても生きやすい環境をどうすればいいか考えさせられました。

 タバコは、新生児が仕切りのない隣の部屋にいるのに喫煙し、突然死のリスクが高いので大変気になりました。

 編集者の部屋がタバコもくもくでした。特にその中のひとりユースケ・サンタマリアは1971年生でそろそろ喫煙は命に関わるお年頃、せっかくの貴重な俳優を大切にしてほしいです。セクハラ、パワハラだけでなくスモハラにももっと神経を使いましょう。

 


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「がんばっていきまっしょい」

2024-11-16 | 2024映画評

「がんばっていきまっしょい」 櫻木優平監督 ◯

 敷村良子が1995年「坊っちゃん文学賞」大賞を受賞した原作小説で実写映画化(1998年)、テレビドラマ化もされた人気作品を長編アニメーション作品にしました。

 海も山も美しい自然豊かな松山市、三津東高校に通う悦子はなんとなく満たされない日々を過ごしていました。そんな折転校してきた梨衣奈から「ボート部復活」を誘われます。親友のヒメにも促されダッコやイモッチとともに女子ボート部の活動を始めるのですが・・・。

 通常のスポ根ものとは一線を画していてあまりやる気のない悦子をなんとか周囲が盛り上げていく姿が現実的です。作者の敷村のちょっとめんどくさい性格が反映されているとか。(参考「週刊金曜日」)

 アニメーションの映像は美しく特にボートを漕ぐときの視界の変化などはお見事でした。ただ、登場する女子たちが髪型や顔貌は違うけれどみんな整った姿で実写映画から四半世紀経っているので例えば転校生が外国人にするなど時代を映す変化があっても良かったのではないかと思いました。もちろん原作者との話し合いのもとで。

 また、エンディングテーマ曲で、長い事若い女性を使って稼いでいるおじさんの名前が出てきてちょっとがっかり。帰り道の足が重くなってしまいました。

 タバコは、なし。無煙です。

 


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「本心」

2024-11-15 | 2024映画評

「本心」 石井裕也監督 ◯

 

 平野啓一郎原作の近未来が舞台の小説を実写映画化しました。

 工員の朔也(池松壮亮)は仕事帰りに母(田中裕子)から電話で「話がある」と言われます。大雨の中自宅近くに着いたとき、増水した川に母親が落ちるのを目撃し助けようと飛び込みます。気がついたのは1年後。デジタル技術の進化の中朔也はロボットに仕事を奪われリアルアバターという便利屋のような仕事を友人の岸谷(水上恒司)に紹介されました。母親の友人だったという三好(三吉彩花)が災害にあったので、母親の部屋を使ってもらいます。実は母は「自由死」という制度の利用を考えていたことを知ります。母の本心を知るため母のヴァーチャル・フィギュアを制作するのでした。

 

 「あっち側」と「こっち側」に分断された社会の歪みやデジタル技術が進化することから起きる軋轢、「自由死」というきれいな言葉で命を切り捨てさせようという権力者の思惑、などが絡み合った内容です。

 原作を新聞連載中から愛読していた筆者にとっては挿絵のイメージが残っていてちょっとキャストとの違和感があったのと、岸谷がしたことの描き方が物足りず消化不良でした。残念。

 

 タバコは、なし。無煙です。


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「侍タイムスリッパー」

2024-11-14 | 2024映画評


「侍タイムスリッパー」 安田淳一監督 ◯ ☆

 自主制作作品ですが、東映京都撮影所が協力し新ジャンルの侍映画となりました。
 会津藩の高坂新左衛門(山口馬木也)は長州藩士を討つため刃を交わしていたその時に雷が落ち気がつくとなんと時代劇の撮影現場でした。途方にくれるものの心優しい撮影関係者の善意で切られ役となり、その道の師(峰蘭太郎)に弟子入します。
 その後幕末から140年が経っていることや敵の藩士(冨塚ノリマサ)が有名な時代劇役者になっていることを知るのでした。
 映画愛、特に時代劇愛あふれる作品です。そして悪人が登場しないことも作品を爽やかにしています。
 笑いの中に「今を懸命に生きる」というメッセージが込められ元気が出ます。
大阪の芸能事務所の笑いとは一線を画す知的な笑いです。
 個人的には「五条霊戦記」の雷の場面とやっぱりタイムスリップは雷だね、「バックトゥザフィーチャー」を思い出しました。

 タバコは、なし。無煙です。映画製作の作品が無煙だなんて未来にタイムスリップした気がします。


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「アイミタガイ」

2024-11-13 | 2024映画評


「アイミタガイ」 草野翔吾監督 ◯ ☆

 中條ていの小説が原作です。
 ウエディングプランナーの梓(黒木華)は中学からの親友叶海(藤間爽子)が事故死したことに衝撃を受けますが、彼女とのスマホ上のつながりは続けていました。叶海の両親(田口トモロヲ、西田尚美)は悲しみに沈んでいましたが叶海がしていた活動を知り心を動かされます。仕事で金婚式のピアニストを探していて梓はヘルパーの叔母(安藤玉恵)の紹介でこみち(草笛光子)の家へ行きます。そこが中学時代に叶海と演奏を聞いていた人と知ります。プロポーズに踏み切れない梓の恋人(中村蒼)と宝石店の店主、叶海の両親が乗るタクシー運転手など周囲の人々がさまざまに関係しあっていくのでした。
 タイトルは梓の祖母(風吹ジュン)が隣家のボヤを梓と澄人が消した時に言う言葉です。
 ひとつの死をきっかけにつながりが可視化する練られた脚本です。ちなみに亡くなった佐々部清監督が温めていた企画をもとにしています。
 筆者は図書館に勤める父親役の田口トモロヲの「悪い人が登場しない小説を信じられるようになった」という意味のことばがこの作品を一言で表していると思います。この父親と澄人の対面場面も見てみたかったです。

 タバコは、なし。無煙です。


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「箱男」 

2024-11-02 | 2024映画評


「箱男」 PG12 石井岳龍監督 ✘✘

 ノーベル賞作家の安部公房が1973年に発表した小説の実写映画化です。
 段ボールの除き窓から世間を眺めあれこれ妄想してノートを付けている「わたし」(永瀬正敏)に対し、その姿こそが理想であるとニセ医者(浅野忠信)は謎の女葉子(白本彩奈)を使って自分と軍医(佐藤浩市)がいる医院に呼び寄せます。そして4人の現実と妄想が入り乱れた戦いが始まるのでした。

 ストーリーはよくわかりませんが、聞き慣れない奇妙な音響効果と、アートな映像が感覚を刺激します。中でも葉子役の白本の美しい裸体はそれを見るだけでもこの作品の意義はあるくらいです。撮影時嫌な思いをしていないことを祈ります。

 タバコは、永瀬(1966年生)と浅野(1973年生)が一度ずつですが喫煙しました。二人共そろそろ健康に留意しないといけない年齢ですよ。


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