無煙映画を探せ  

映画のタバコシーンをチェック。FCTC(タバコ規制枠組条約)の遵守を求め、映画界のよりよい発展を願うものです。

「海の沈黙」

2024-12-01 | 2024映画評

「海の沈黙」 若山哲朗監督 ✘✘

 かつて数々の名作ドラマを生み出した倉本聰が長年あたためていた物語を映画化しました。

 世界的な画家田村修三(石坂浩二)の個展でひとつの作品が贋作であると本人が指摘したことから始まります。自身の絵よりも素晴らしいできだったのです。そのような絵が描けるのは過去に田村によって潰された天才画家津山(本木雅弘)しかいません。そんな中、全身に入れ墨がある女性の遺体が発見されます。津山のたったひとりの理解者スイケン(中井貴一)によって津山のかつての恋人で今は田村の形だけの妻になっている杏奈(小泉今日子)は小樽へ向かいます。

 「美」とは?という聖なる永遠のテーマに人間の欲望などのさまざまな「俗」が絡んでいます。

 ただ、どこがどう、と具体的には言えないのですが、「昔風の入れ墨」とか女性が手切れ金を拒否して死んでしまったり、裸の女性が添い寝して傷ついた男を慰めたりとか、現代にそぐわないというか、見ていて全体的に「昭和だよな。」とか「おっさんドラマだよ。」いう古臭さを感じました。

 タバコは、こちらも古臭い使い古された演出で、暗闇にタバコの火とサングラスで謎っぽくしたり(中井貴一1961年生)、ホテルの部屋で平気で喫煙したり(石坂浩二1941年生)(そんな時代もあったね。)こちらも昭和でした。

 中井も石坂も喫煙シーンは命がけですね。

 


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「八犬伝」

2024-11-30 | 2024映画評

「八犬伝」 曽利文彦監督 ◯

 山田風太郎原作の滝沢馬琴と彼の著書「八犬伝」の完成までを描いた時代小説を映画化しました。

 戯作者馬琴(役所広司)は「里見家にかけられた呪を解くために集められた剣士の姿を躍動的に描き」大好評でした。挿絵画家の葛飾北斎(内野聖陽)は馬琴の元を時折訪ねお互いの作品を高め合っていました。という実の世界を描く一方、著作の中の虚の世界では八犬士たちや敵たちが縦横無尽の活躍をしています。

 いよいよクライマックスかというときに馬琴の視力が落ち文字を書くことができません。希望をなくした馬琴に、病で亡くなった息子(磯村勇斗)の妻で無学のお路(黒木華)が夫の遺言を全うしたいと名乗り出ます。果たして完成の日は来るのでしょうか。

 実の世界と虚の世界が映像的にも監督が違うのではないかと思わせるほど描き分けられ面白い試みです。時代を感じさせる歌舞伎小屋での歌舞伎まで見せてくれサービス満点です。「実」と「虚」、映像が異なるだけでなく哲学的な問いかけまであり、時代劇、アクション、歌舞伎とともに娯楽映画として様々な世代がそれぞれ楽しめる作品です。

 剣士たちの爪が汚くて大変リアルでした。

 タバコは、なし。無煙です。

 ちょっとつぶやき

「いろは」しか書けなかったお路がどのように成長していったのか、次にはその映画が見たいです。


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「スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナルハッキングゲーム」

2024-11-29 | 2024映画評

「スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナルハッキングゲーム」

                 中田秀夫監督 △ ☆

 2018年、2020年に続くシリーズ第3作目で、最終章です。

 天才ハッカーで殺人鬼の浦野(成田凌)は逃亡後なんと韓国にいました。彼は韓国の闇組織のキム(大谷亮平)に拉致され、日韓首脳会談を狙ったテロ攻撃を指示されるのでした。

 浦野の世話をする名目で組織からスンミ(クォン ウンビ)がそばで見張っていました。はじめは反発するスンミでしたが、浦野が自分と同じ子ども時代を過ごしていたことを知ることで、二人の関係が変わって行くのですが・・・。

 成田と大谷が巧みに韓国語を使っていてびっくりです。大谷は2003年から韓国で活躍していて逆輸入俳優だとか。スンミ役のクォンも日本語が話せお互いに両国の交流になっています。これだけでも☆です。

 便利なスマホも使い方次第で武器にもなるのは怖いですね。

 1作目の衝撃的演技の成田がこれで見納めかと思うとちょっと残念です。ファイナルはサスペンスラブストーリーとなりました。 

 タバコは、キムが浦野を拉致する場面でタバコを道路に捨て靴で踏み潰す場面がありましたが、姿は隠せても煙は隠せません。敏感な浦野が気づかないわけがない。演出がちょっと並でした。咥えている場面がなかったので△です。

 


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「ぼくが生きてる、ふたつの世界」

2024-11-17 | 2024映画評

「ぼくが生きてる、ふたつの世界」 呉美保監督 ✘✘

 五十嵐大のエッセイ集「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」が原作です。

 大(吉沢亮)は子どもの頃はろうの母親と社会との通訳を当たり前にしていましたが、成長とともに周囲の目が気になるようになり逃げるように東京へ出てなんとか生きていました。疎ましかった母からある一言を告げられショックを受けるのですが・・・。

 母親役の忍足(おしだり)亜希子、父親役の今井彰人、そして登場するろうの役はすべてろうの俳優が演じています。

 2014年のフランス映画「エール!」では冒頭からろうの家族が遠慮なく出す日常生活のガチャガチャドンドンといった音がやかましく「聴こえない、とはこういうことなのか」と気付かされましたが、今作は静かでちょっと違和感がありました。

 「小さな親切大きなお世話」的なやりとりがあり、聴こえなくても生きやすい環境をどうすればいいか考えさせられました。

 タバコは、新生児が仕切りのない隣の部屋にいるのに喫煙し、突然死のリスクが高いので大変気になりました。

 編集者の部屋がタバコもくもくでした。特にその中のひとりユースケ・サンタマリアは1971年生でそろそろ喫煙は命に関わるお年頃、せっかくの貴重な俳優を大切にしてほしいです。セクハラ、パワハラだけでなくスモハラにももっと神経を使いましょう。

 


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「がんばっていきまっしょい」

2024-11-16 | 2024映画評

「がんばっていきまっしょい」 櫻木優平監督 ◯

 敷村良子が1995年「坊っちゃん文学賞」大賞を受賞した原作小説で実写映画化(1998年)、テレビドラマ化もされた人気作品を長編アニメーション作品にしました。

 海も山も美しい自然豊かな松山市、三津東高校に通う悦子はなんとなく満たされない日々を過ごしていました。そんな折転校してきた梨衣奈から「ボート部復活」を誘われます。親友のヒメにも促されダッコやイモッチとともに女子ボート部の活動を始めるのですが・・・。

 通常のスポ根ものとは一線を画していてあまりやる気のない悦子をなんとか周囲が盛り上げていく姿が現実的です。作者の敷村のちょっとめんどくさい性格が反映されているとか。(参考「週刊金曜日」)

 アニメーションの映像は美しく特にボートを漕ぐときの視界の変化などはお見事でした。ただ、登場する女子たちが髪型や顔貌は違うけれどみんな整った姿で実写映画から四半世紀経っているので例えば転校生が外国人にするなど時代を映す変化があっても良かったのではないかと思いました。もちろん原作者との話し合いのもとで。

 また、エンディングテーマ曲で、長い事若い女性を使って稼いでいるおじさんの名前が出てきてちょっとがっかり。帰り道の足が重くなってしまいました。

 タバコは、なし。無煙です。

 


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「本心」

2024-11-15 | 2024映画評

「本心」 石井裕也監督 ◯

 

 平野啓一郎原作の近未来が舞台の小説を実写映画化しました。

 工員の朔也(池松壮亮)は仕事帰りに母(田中裕子)から電話で「話がある」と言われます。大雨の中自宅近くに着いたとき、増水した川に母親が落ちるのを目撃し助けようと飛び込みます。気がついたのは1年後。デジタル技術の進化の中朔也はロボットに仕事を奪われリアルアバターという便利屋のような仕事を友人の岸谷(水上恒司)に紹介されました。母親の友人だったという三好(三吉彩花)が災害にあったので、母親の部屋を使ってもらいます。実は母は「自由死」という制度の利用を考えていたことを知ります。母の本心を知るため母のヴァーチャル・フィギュアを制作するのでした。

 

 「あっち側」と「こっち側」に分断された社会の歪みやデジタル技術が進化することから起きる軋轢、「自由死」というきれいな言葉で命を切り捨てさせようという権力者の思惑、などが絡み合った内容です。

 原作を新聞連載中から愛読していた筆者にとっては挿絵のイメージが残っていてちょっとキャストとの違和感があったのと、岸谷がしたことの描き方が物足りず消化不良でした。残念。

 

 タバコは、なし。無煙です。


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「侍タイムスリッパー」

2024-11-14 | 2024映画評


「侍タイムスリッパー」 安田淳一監督 ◯ ☆

 自主制作作品ですが、東映京都撮影所が協力し新ジャンルの侍映画となりました。
 会津藩の高坂新左衛門(山口馬木也)は長州藩士を討つため刃を交わしていたその時に雷が落ち気がつくとなんと時代劇の撮影現場でした。途方にくれるものの心優しい撮影関係者の善意で切られ役となり、その道の師(峰蘭太郎)に弟子入します。
 その後幕末から140年が経っていることや敵の藩士(冨塚ノリマサ)が有名な時代劇役者になっていることを知るのでした。
 映画愛、特に時代劇愛あふれる作品です。そして悪人が登場しないことも作品を爽やかにしています。
 笑いの中に「今を懸命に生きる」というメッセージが込められ元気が出ます。
大阪の芸能事務所の笑いとは一線を画す知的な笑いです。
 個人的には「五条霊戦記」の雷の場面とやっぱりタイムスリップは雷だね、「バックトゥザフィーチャー」を思い出しました。

 タバコは、なし。無煙です。映画製作の作品が無煙だなんて未来にタイムスリップした気がします。


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「アイミタガイ」

2024-11-13 | 2024映画評


「アイミタガイ」 草野翔吾監督 ◯ ☆

 中條ていの小説が原作です。
 ウエディングプランナーの梓(黒木華)は中学からの親友叶海(藤間爽子)が事故死したことに衝撃を受けますが、彼女とのスマホ上のつながりは続けていました。叶海の両親(田口トモロヲ、西田尚美)は悲しみに沈んでいましたが叶海がしていた活動を知り心を動かされます。仕事で金婚式のピアニストを探していて梓はヘルパーの叔母(安藤玉恵)の紹介でこみち(草笛光子)の家へ行きます。そこが中学時代に叶海と演奏を聞いていた人と知ります。プロポーズに踏み切れない梓の恋人(中村蒼)と宝石店の店主、叶海の両親が乗るタクシー運転手など周囲の人々がさまざまに関係しあっていくのでした。
 タイトルは梓の祖母(風吹ジュン)が隣家のボヤを梓と澄人が消した時に言う言葉です。
 ひとつの死をきっかけにつながりが可視化する練られた脚本です。ちなみに亡くなった佐々部清監督が温めていた企画をもとにしています。
 筆者は図書館に勤める父親役の田口トモロヲの「悪い人が登場しない小説を信じられるようになった」という意味のことばがこの作品を一言で表していると思います。この父親と澄人の対面場面も見てみたかったです。

 タバコは、なし。無煙です。


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「箱男」 

2024-11-02 | 2024映画評


「箱男」 PG12 石井岳龍監督 ✘✘

 ノーベル賞作家の安部公房が1973年に発表した小説の実写映画化です。
 段ボールの除き窓から世間を眺めあれこれ妄想してノートを付けている「わたし」(永瀬正敏)に対し、その姿こそが理想であるとニセ医者(浅野忠信)は謎の女葉子(白本彩奈)を使って自分と軍医(佐藤浩市)がいる医院に呼び寄せます。そして4人の現実と妄想が入り乱れた戦いが始まるのでした。

 ストーリーはよくわかりませんが、聞き慣れない奇妙な音響効果と、アートな映像が感覚を刺激します。中でも葉子役の白本の美しい裸体はそれを見るだけでもこの作品の意義はあるくらいです。撮影時嫌な思いをしていないことを祈ります。

 タバコは、永瀬(1966年生)と浅野(1973年生)が一度ずつですが喫煙しました。二人共そろそろ健康に留意しないといけない年齢ですよ。


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「パミョ 破墓」

2024-10-30 | 2024映画評


「パミョ 破墓」 PG12 チャン ジェヒョン監督 韓国 ✘
 
 韓国で1200万人を動員したサスペンス・スリラーです。
 風水師(チェ ミンスク)と二人の巫堂(ムーダン=シャーマンのこと)、葬儀師の4人が後継者が謎の病に侵されるという金持ちの一家から原因を探し幼い子どもの命を救って欲しいと依頼されます。原因は墓にあると判断し墓を掘り起こすのですが、4人の周囲に不可解な出来事が次々襲ってくるのでした。

 ちょっとネタバレですが、韓国の歴史には秀吉の時代から日本軍が侵略しているという事実を再確認させられます。動員数にそれが影響しているのかもしれません。日本でも多くの人に見てほしい作品です。怖いけど・・・。

 タバコは、主役が度々加熱式タバコを喫煙していました
 

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