無煙映画を探せ  

映画のタバコシーンをチェック。FCTC(タバコ規制枠組条約)の遵守を求め、映画界のよりよい発展を願うものです。

2016年度無煙映画大賞発表

2017-05-29 | 2016年度無煙映画大賞
昨年上映された日本語映画から各賞を決定しましたのでお知らせします。
なお、5月31日の世界禁煙デーのイベント会場で正式に発表されます。

**2016年度 無煙映画大賞各賞と授賞理由**

<作品賞> 「シン・ゴジラ」 庵野秀明監督
 話題性も高く、集客力もある娯楽映画でありながら、誰が見ても福島以降の日本の権力者への警鐘として説得力のある深い内容で2016年を代表する作品です。

<主演女優賞>  高畑充希 「植物図鑑 運命の恋、ひろいました」 三木康一郎監督
 職場では上司のパワハラまがいの言動に耐え、コンビニ頼りの生活をしていた女性が、家事全般なんでも得意で植物に詳しい青年と出会ったことで人生を自分のものにしていく主人公の姿を魅力的に演じました。

<主演男優賞>  菅田将暉 「セトウツミ」大森立嗣監督 「溺れるナイフ」山戸結希監督 
 「セトウツミ」では、気になる女子に声もかけられない内気な高校生を大阪弁で、「溺れるナイフ」では、神主の跡取りという神がかりな役をそれぞれ絶妙に演じました。

<監督賞>  影山あさ子監督 「高江 森が泣いている2」
 無煙映画賞の常連監督ですが、今の沖縄を決して忘れてはいけないという意味で今年も選びました。

<特別賞> 「FAKE」 森達也監督
無煙映画賞では初めて無煙ではない映画の授賞です。理由は映画の中で監督が「禁煙宣言」をしているからです。
 
<汚れた灰皿賞(モクモク賞)>
「ピンクとグレー」 G 行定勲監督 
「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」 G 宮藤官九郎監督 
「ぼくのおじさん」 G 山下敦弘監督  
「人生の約束」 G 石橋冠監督 
「俳優 亀岡拓次」 G 横浜聡子監督 
「後妻業の女」 PG12 鶴橋康夫監督 
以上を代表して、汚れた灰皿賞大賞は「ピンクとグレー」

*汚れた灰皿賞(モクモク賞)について
 こちらの賞も毎年同じような監督が入れ替わり入っています。

 タバコ会社をスポンサーとすることに何の恥も感じない、「タバコのどこが悪いの?」という昭和の発想から抜け切れていない年齢は若くても頭が古く固い監督たちでしょう。
 また、「お金をもらえるなら、仕方がない。」と割り切っている監督もいるのかもしれません。少なくとも「どうしてもタバコが演出上不可欠だった。」と言えるほどの秀作は一つもありませんでした。
 どの作品も結構宣伝に予算が付いていたようですが、それほど話題にもならず消えていってしまいました。

2016年のまとめ

<大物監督の作品は無煙が当たり前>

 喜ばしいことに対象作品が増え、各賞を選択することがだんだん困難になってきました。以下はどの作品も実は優劣が付けがたかった無煙の秀作です。

東陽一監督    「だれかの木琴」
君塚良一監督   「グッドモーニングショー」
大森立嗣監督   「セトウツミ」
黒沢清 監督   「クリーピー偽りの隣人」
岩井俊二 監督  「リップヴァンウィンクルの花嫁」 
阪本順治 監督  「団地」
堤幸彦 監督   「RANMARU」
本木克英 監督  「超高速 参勤交代」
水田伸生 監督  「あやしい彼女」

<少女コミック原作作品は ほとんどが無煙>
 かつて「NANA」の喫煙シーンが問題になった時代を考えると隔世の感があります。

「黒崎くんの言いなりになんてならない」
「オレンジ」
「オオカミ少女と黒王子」
「ちはやふる 上 下」
「高台家の人々」
「溺れるナイフ」
など。

<アニメ「君の名は。」と「この世界の片隅に」について>
 「君の名は。」と「この世界の片隅に」の2作品は、アニメなので無煙映画賞の対象ではありませんが、話題性と興行成績から2016年を語る上で外せません。そこで簡単にタバコの扱いについて触れておきます。
「君の名は。」は、タバコの面からは大変問題のある作品です。場面としては短いのですが、主人公の先輩の女性が喫煙し、なんと「(タバコを)止めていたんだけどね・・・。」と喫煙することを正当化するような言い訳を言います。彼女が手にしているのは、女性をターゲットにしたおしゃれなパッケージのタバコで、アニメですが銘柄がわかる映像です。あえて登場させたとしか考えられません。大変残念な場面でした。
 一方の「この世界の片隅に」は、時代が戦争中ということで主人公に別れを言いに来る兵士が喫煙します。このときに同席している主人公の義父に兵士がタバコを勧めますが、義父は断る仕草をします。この場面は大変現代的でいずれ訪れるであろう新しい時代を象徴しています。
 結論としては、タバコの扱いだけでなく内容的にも「この世界の片隅に」の方が2016年を代表する作品として評価したいと思います。




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パーソナル・ショッパー

2017-05-27 | 2017外国語映画評


「パーソナル・ショッパー」 オリヴィエ アサイヤス監督 仏 ☓☓

 霊媒師でありながら生活のためにセレブの買い物係をしているモーリーン(クリスティン スチュワート)の奇妙な生活を描きました。
 双子の兄(ルイス)が急死し、お互いに先に死んだら連絡をしようと誓っていたのでモーリーンはルイスの霊が降りてくるのを待っています。一方、仕事では多忙なキーラに代わって豪華な服や靴アクセサリーを揃えていました。
 ゴチックホラーかと思う冒頭場面やユゴーの霊媒体験に加え殺人事件が起きます。サスペンスかと思いきやけっこうファッションもゴージャスであれこれ混乱した内容ですが、この混乱はそのまま主人公の混乱を描いているようです。「ちょっと落ち着いたら」とアドバイスしたくなる作品です。
 タバコは、主役が何回か喫煙しました。タバコ臭いと霊も降りてこないのではないでしょうか。(☓☓)

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マンチェスター・バイ・ザ・シー

2017-05-26 | 2017外国語映画評


「マンチェスター・バイ・ザ・シー」 ケネス ロナーガン監督 米 ◯ ☆

 米アカデミー賞の脚本賞(ケネス ロナーガン)と主演男優賞(ケイシー アフレック)を受賞した人間ドラマです。
 ボストンでアパートの便利屋として細々と生計を立てているリーのもとに兄ジョー(カイル チャンドラー)の訃報が届きます。久しぶりに故郷の町マンチェスター・バイ・ザ・シーに帰りますがそこにはリーの辛い思い出がありました。一方、兄の葬儀を取り仕切るだけでなく残された16歳の息子パトリック(ルーカス ヘッジズ)の後見人としてあれこれ決めなければならない問題がリーの前に持ち上がるのでした。
 幸せに満ち溢れていた幼いパトリックとの船上でのやり取りから始まり、場面場面で織り込まれる故郷での子どもたちや美しい妻とリー、現在の暗く酔えば相手に殴り掛かるようなリー、そしていくつかの傷を乗り越え成長したパトリックとの関係も改善したリーをケイシー アフレックがそれぞれ別の表情で好演しました。
 大きな悲劇に打ちひしがれながらもなんとか立ち直り再生していく人々を静かに描いた秀作です。(☆)
 最近、洋画に登場する若手の有望な男優がいなかったけれどパトリックを演じたルーカス ヘッジズは期待できそうです。(ルーカスって名前からして映画の申し子って感じですね。)
 ただ、マンチェスターと聞くとどうしてもイギリスを思い浮かべてしまいますが、舞台はアメリカのマンチェスターです。
 タバコは、セリフとしてはコカインなどが出てきますが無煙です。(◯)


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メッセージ

2017-05-25 | 2017外国語映画評


「メッセージ」 ドゥニ ビルヌーブ監督 米 ◯ ☆☆

 世界の各地に突然訪れた巨大な12基の宇宙船をめぐり、コミュニケーションを取ろうとする言語学者の姿を描いたSF作品です。
 アメリカのモンタナに現れた宇宙船と交信するためルイーズ バンクス博士(エイミー アダムス)が軍から招集されます。コンビを組むのが物理学者のイアン(ジェレミー レナー)でした。
 安全を確保されたシェルターの透明な壁を通して宇宙人との交信を試みます。「人間」「それぞれの名前」を伝えると、宇宙人ヘプタポッド(7本足の意)からも返事が届きます。宇宙文字を解読することで彼らの目的を探ろうとします。一方、世界の別の地域ではコミュニケーションではなく「武力で制圧する」という軍事対応を迫る国もありました。ルイーズの周囲でも軍の一部には攻撃を仕掛けようとする動きもあるのでした。
 宇宙人が昔の火星人風タコ人間(シーフード型エイリアンというらしい)なのはちょっと笑えるけれど、宇宙人と必死に交流しようとする姿は感動的です。武力という力で征服するのではなく、言語で理解し合おうという姿勢は対宇宙人だけでなく地球人同士でもきちんとやり遂げたいものです。そして、私たちの未来は「ノンゼロサムゲーム」(双方が勝者となる関係)という概念を理解することで開かれるのでしょう。人類も広い意味では「宇宙人」の1種であることを忘れてはなりません。
 タバコは、なし。無煙です。


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カフェ・ソサエティ

2017-05-22 | 2017外国語映画評


「カフェ・ソサエティ」 ウッディ アレン監督 米 ☓☓☓☓☓

 1930年代、きらびやかなハリウッドを舞台にニューヨークから叔父を頼って出てきた青年の恋と仕事を描いたラブコメディです。
 ボビー(ジェシー アイゼンバーグ)は映画製作の仕事をしているフィル(スティーブ カレル)のもとでたくさんのセレブや人気俳優などを紹介され助手のような仕事につきました。同時にフィルの秘書ヴォニー(クリスティン スチュワート)に恋をします。ところが彼女には別に恋人がいたのです。いろいろあって数年後、ボビーはフィルともヴォニーともはなれ、裏社会で大活躍(?)の兄の力でりっぱなカフェを開きセレブの大人気スポットに成長しました。
 そして、同じく別の意味でりっぱになったあのヴォニーと店で再会するのでした。
 最近同じような話がヒットしましたよね。そう「ラ・ラ・ランド」と骨子はほとんど同じ内容でした。どっちが先なのかわかりませんが、日本公開ではアレン監督がちょっと不利でしたね。音楽なども趣味は違いますがこちらも結構良かったのですが、残念です。
 タバコは、みんなが喫煙するモクモク映画でした。ユダヤ教はタバコに甘いのでしょうか。こちらも残念な作品でした。



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カピウとアパッポ〜アイヌの姉妹の物語〜

2017-05-21 | 2017日本語映画評


「カピウとアパッポ〜アイヌの姉妹の物語〜」 佐藤隆之監督 ☓☓☓☓☓・・・

 北海道阿寒湖のアイヌコタンで生まれた姉妹が、大人になって久しぶりに共演するライブまでのドキュメンタリー映画です。
 姉は東京の高尾で、妹は阿寒湖アイヌコタンでそれぞれ別の形でアイヌの唄や伝承音楽を仕事にしていました。原発事故で一時北海道に子ども3人と避難した姉を迎え、周囲の要望もあって、姉妹でのライブが計画されます。しかし、それぞれ生きてきた道が違うし、アイヌの音楽に対する思いも微妙に異なるのでさまざまな葛藤が生まれるのでした。
 絶滅が危惧されるアイヌ語を唄として伝承することは大切なことで、姉妹それぞれの方法はどちらもいいのではないかと思います。ただ、ライブの場面以外はホームビデオを見せられているような退屈さが全編に感じられました。
 タバコは、喫煙しない登場人物がほとんどいないというモクモク状態、常に誰かが喫煙している作品でした。特にプロデューサーとして紹介されている男性は常に喫煙していました。唄を仕事にしている姉妹も喫煙者で小さい子どもがいるのに平気で喫煙していました。アメリカがかつてアルコールとタバコで先住民族を駆逐した実例がありますが、アイヌ民族も和人のタバコで自ら将来を傷つけているのが哀しいです。
 放射能を避けて避難している車の中で、喫煙する場面には、「放射能も怖いけど車内の喫煙はガス室と同じくらい有毒です。」と教えてあげたい。


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標的の島 風(かじ)かたか

2017-05-20 | 2017日本語映画評


「標的の島 風(かじ)かたか」 三上智恵監督 ◯

 沖縄の反基地闘争を常に身体を張って取材している監督の最新作です。
 タイトルの「風かたか」とは、2016年夏に起きた米軍属女性暴行殺人事件の追悼集会で、稲嶺名護市長が「私たちは命を救う風かたかになれなかった。」と嘆きました。風かたかとは「風よけ」「防波堤」のことです。
 8割の県民が反対する中、辺野古の新基地建設は住民の命がけの抵抗を全国から動員された機動隊によって排除しながら進められています。高江ではヘリパッド建設が進み、宮古島、石垣島などではミサイル基地と自衛隊配備が着々と進んでいる厳しい現実を描きます。一方、民俗学者でもある監督らしいさまざまな伝統文化も披露されています。
 冒頭の集会で古謝美佐子が切々と歌う「童神」が泣かせます。
 毎年沖縄の座り込みに参加していますが、平和センターの山城博治さんが重篤な病を押して運動を続けていることは知りませんでした。そういう人を何ヶ月も勾留している司法に三権分立はないですね。
 タバコは、なし。無煙です。


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美女と野獣

2017-05-19 | 2017日本語映画評


「美女と野獣」 ビル コンドン監督 米 ◯

 ディズニーの名作アニメを実写映画化しました。
 ベル(エマ ワトソン)は父親と二人暮らし。本を読むのが好きなので村人からは「ちょっと変わった子」と見られています。そんなベルが父親の罪の償いに野獣が住む館で人質として暮らすことになります。その野獣とは、ある理由で魔女に姿を変えられてしまった王子なのでした。召使いたちもさまざまな道具に変えられていました。呪いを解くにはある時までに野獣を心から愛する女性が現れなければならなかったのです。果たして呪いは解けるのでしょうか。
 野獣とつながりが持てるきっかけが「本」というのは大変現代的な解釈です。知的な興味がふたりを近しい関係にするすばらしい展開です。歌もダンスも大人の鑑賞にたえる秀作です。個人的には魔法が溶ける前の方が王子様は魅力的でした。
 タバコはなし。無煙です。


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3月のライオン 後編

2017-05-14 | 2017日本語映画評


「3月のライオン 後編」 大友啓史監督 ☓☓☓

 No.19の後編です。
 「将棋の話」というよりは「いじめ」の問題を絡ませた「家族」がテーマになりました。後編のみ登場の伊勢谷友介がだらしのない父親を好演しました。喫煙しなかったのは評価できます。一応どの家族も危なげなく収まって、ラストも意外で面白いです。
 タイトルの「3月のライオン」はイギリスの気象に関することわざ「3月はライオンのようにやってきて子羊のようにさる」からの引用。
 タバコは、前編同様将棋界の喫煙対策は未だ昭和です。宗谷名人(加瀬亮)が聴力に問題を生じているのは受動喫煙が原因なのではないでしょうか。


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追憶

2017-05-13 | 2017日本語映画評


「追憶」 降旗康男監督 ☓☓

 降旗監督と名カメラマン(と言われている)木村大作が9年ぶりに組んだ作品という宣伝文句です。
 子供時代に親に捨てられた3人の子どもたちがある事件をきっかけにバラバラになり、大人になって再会した時は、殺人事件の被害者、刑事、容疑者のひとり、となっていたというオリジナルストーリーです。富山県の海辺で東京のガラス屋の店主(柄本祐)が刺殺されて発見されます。刑事の篤(岡田准一)が担当の一人になります。実は前日にひょんなところで二人は出会っていたのです。「富山の知り合いに金策に行った」と家族は証言し、「知り合い」が誰なのかが捜査の焦点となるのでした。篤は子供の頃の秘密を分け合った啓太(小栗旬)を問い詰めるのですが・・・。
 冒頭から「木村らしい」映像とちょっと大げさな千住明の音楽で期待度をあげますが、終わってみれば「これでいいの?」という消化不良の思いが残ります。安藤サクラが3人の「聖母」的存在だったにしても、20年経ってほとんど老けていないのは不自然です。また、「過去の事件の精算」はあれでいいのでしょうか。
 シニア層には懐かしい映像で受けるかもしれませんが、他の世代には無理かな。
 タバコは、小栗旬が度々喫煙(☓)、また刑事が署内で喫煙しているのは今の時代ありえません。作品全体が復古調なのは許せますが、喫煙の規制まで昭和なのは理解できません。(☓)


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