「ファースト カウ」 ケリー ライカート監督 米 ✗
アメリカの西部開拓時代を舞台に料理人と中国移民の友情を美しい自然を背景に描きました。原作は脚本も担当しているジョナサン レイモンドが2004年に発表した小説「THE HALF-LIFE」です。
ビーバーの毛皮で成り立っているオレゴン州の小さな町へアメリカンドリームを夢見て移り住んだ料理人クッキー(ジョン マガロ)は森の中で逃亡者の男を助けます。二人は後に街で再開し男の家で一緒に暮らします。男は中国人でキング ルー(オリオン リー)と名乗りました。一方金持ちの毛皮の仲買商(トビー ジョーンズ)は乳牛を運び込みます。それまでそのあたりの白人たちにはミルクは手に入らず紅茶にミルクを入れるのは夢でした。かつてパン職人の仕事もしていたクッキーにルーはケーキを焼いて一儲けしようと持ちかけなんと牛からミルクを盗むのでした。ケーキは翔ぶように売れるのですが・・・。
現在から過去へ遡る導入部分が秀逸です。自然の美しさをそのままスクリーンに再現し、自然の音もうるさくなく心地よく耳に残ります。特に冒頭で森の中でキノコを採るときのキュッという音とそのキノコを丁寧に布で包むクッキーの姿にさりげなく人柄が反映されています。西部が舞台の作品はドンパチや先住民との戦いなど暴力的な内容が多いのですが、クッキーの誰に対しても穏やかに接する人柄は牛だけでなく観客もリラックスさせられます。でもサスペンス的面白さも十分あります。
教訓としては「欲張るとろくなことにはならない」ということでしょうか。
当時の先住民の衣装やアクセサリー、小物などの再現がよくできていました。
タバコは、町にある小さな市場で「タバコ安くしとくよ」という売り込みの声が聞こえたり周囲で喫煙したりする姿はありましたが、主役二人は喫煙しませんでした。