サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門 (講談社+α新書) | |
三戸 政和 | |
講談社 |
知人から勧められて読んだ本だ、そう言えば少し前に、新聞広告などになっていた本だ。読んだ感想を素直に2つほど書く。
1章は起業は大変だからやめろ、2章は飲食業は特に大変だ、3章だから企業の代わりに中小企業を個人買収せよ、4章で中小企業は社長を探している、5章は大廃業時代はサラリーマンの大チャンスだ、というふうに、まず、だめなこと、そしてこれならチャンス、という章立てになっている。
部分的にはその通りなんだが、この本、誰を対象に書いているかが問題だ。会社を経営するには相当の知識が必要。まして自分で会社を購入して社長に就くんだから、失敗は許されないだろう。本の中では、中間管理職を対象にしている(P42)ようだが、悪いがこの程度の方(わたしもそうだった)では会社の経営は難しい。この本の筆者は、中間管理職なら経験から会社の経営ができると書いているが。大半の中間管理職では、それは厳しいだろう。
大企業の役員だって、経営全般に詳しいわけではない。大企業は優秀な専門スタッフがいるから、大局的な判断ができれば勤まる。中小企業の経営には、経営戦略、財務会計、管理会計、資金繰り、経営法務、人事、マーケティング、IT、業界の知識や運営管理など、自分でできる幅広い知識が必要だ。買収するんだから、その業界の知識や運営管理はできるうだろうが、残りのものは、多くは、中間管理職では経験していない分野が多い。
私もそうだった。私は35年大企業に勤めて中間管理職で退職した。この間、財務諸表の読み方など一度も教えた貰ったことはない。簿記のイロハから全て自分で学習した。財務以外でも法務,IT、人事、マーケティングなども中小企業診断士の学習で、ペーパーではあるが身につけた。この中間管理職にとって弱点となる幅広い知識がスッポリ抜けているようだ。もし社長を目指すのであれば、仕事の傍ら、地道に経営の学習をしておけば可能になるだろう。
もう一点、会社の事業承継の話が登場する。これは事実で、日本の中小企業は、経営者のなり手がなく、多くは廃業の危機にある。住んでる商店街のお店が一店、一店と廃業しているのを見かけないだろうか。私の街もおいしい料理を出すお店の社長が高齢のせいで廃業している。
公的機関がその対策をしているが、その下請けで、実質的にやっているのは、中小企業診断士だ。診断士の世界でも事業承継の世界に続々と参入している。この本の筆者は、企業買収をする会社の方のようで、その都合上公的機関があまり出てこないが、実際には商店街の飲食店の事業承継などが、実は大変な状況になっている。中小企業診断士の「チ」くらい書いてもらえたらよかったのにねえ・・