kanekoの陸上日記

毎日更新予定の陸上日記です。陸上競技の指導で感じたことやkanekoが考えていることなどをひたすら書きます。

乗り越える2

2012-06-01 | 陸上競技
最終日の朝、無理をお願いしてバランスを整えてもらいました。「対校」ですから他校の先生にお願いするというのはさすがの私でも気が引けます。無理を言ってお願いして調整してもらいました。少し前に整体に行っていたのですが「これまで見たことがない」というくらい骨盤がずれていたようです。「このままだと肉離れする」という状況だったようです。恐ろしいことです。

1次アップではかなり身体が動いていました。何度も書いていますが練習での走りは昨年以上です。この動きでタイムが出ないということはないという感じです。それでも「結果」が付いてきていない。だから「苦しい」のです。この走りであれば絶対に25秒前半は出せます。それで中国にいけないということは絶対にありません。

が、200mの予選では全く別人の走りとなっていました。スタート直後から全く・・・です。予選を26秒5くらいで通過・・・。決して悪いタイムではありませんが間違いなく全力で行っています。25秒中盤で走らないと中国はありません。走り終わった後に「身体が重い」と言っていました。昨日に引き続き「弱音」を吐いていました。「ここまで頑張ってきたのだから」という弱気な部分が感じ取れました。本当に追い詰められているのだなと・・・。

何を言っても上手く入らないと思いました。「結果云々ではなく思い切り走れ」とだけ言いました。この状況になって技術的なことがどうこうではありません。動きも問題があったと思いますが、それ以上に「心」の部分の影響が大きいからです。「走れない」という思い込みが動きを制約しています。本来の精神状態になれば問題はない。が、それが一番難しい。「納得できる走り」ができるかどうかだと思いました。「結果」を求めるのは当然ですが、今の状況で「結果」を求めても意味がありません。「決勝に残れ」とも言いませんでした。「思い切り走る」。それだけです。

準決勝、スタートから別人の走りでした。これまでの鬱憤を晴らすかのような走り。向かい風の中で25秒8。組のトップで通過しました。鳥肌が立ちました。タイムでもなく走りでもなく「強さ」にです。県内でここまで追い詰められた状況で走っていた選手はいないと思います。ほとんどの選手は春先からある程度の結果を出していましたから、「自分がどれくらいで走れる」というのは予測がついていたはずです。女子エース、この追い詰められ、後がない状況でシーズン最高の走りをしました。「乗り越えた」のです。この上なく追い詰められた状態を乗り越えることができたのは「想い」だと思います。予選の走りを見て大半の選手は「中国は厳しい」と思ったに違いありません。全く走れなかった状況から正念場で力を出したとうのは驚きです。

後で他の先生から聞いたのですがレースを観戦していた保護者もレースを見て涙されていたようです。「走れるのか?」という気持ちは常にもっておられたはずです。その状況を「乗り越える」ことができた。精神的な成長は大きかったと思います。「やっと走れた・・・」というのが本人の率直な感想でした。「何も考えずに最初から思い切り走る」と決めてレースに臨んだようです。改めて選手の「強さ」に感服しました。

決勝では最初少し遅れてしましましたがラストの80mで前を走る選手を追うことができました。追い風参考ながら25秒2で走りました。前日の走りとは全くの別人でした。やっと本当のスタートラインに立てた気がします。中国に進むことが目標ではありません。これからが本当の戦いになるのです。とはいえ、「県で6位以内」というのさえ危うい状況にあったのは確かです。正念場で力を出し切ってくれた。通常の状況だったらできなかったかもしれません。「強さ」ですね。

blogの内容も「ひいき目」に見ている部分があると感じられるかもしれません。他の選手の内容よりもこの内容が大きいですから・・・。感情移入をしてしまうというのは私の悪いところでもあり、良いところでもあると思っています。これだけ練習に一生懸命に取り組んでいたのだから「戦う舞台」に立たせてあげたいと強く思っていました。

後日、少しあって本人と話をしました。厳しいようですが「易きに流れる」可能性がある人間関係を続けていたら勝負はできないと思ったからです。「覚悟を決めろ」と決断を迫りました。本人が勝負する気がないのであれば残された時間で力は発揮できません。「絶対に戦う」ということでした。時間がたって本人が話があるということだったので何かと思って聞きました。
正座をして「覚悟を持つ。自分のことに集中をして必ずインターハイに行って勝負をする」と決意表明をしました。性格的にこのようなことをいうタイプではありません。それが自分から口にするという事はやはり「想い」があるのだと思います。

「乗り越える」というのは簡単なことではありません。このような状況を乗り越えた。それも一気にタイムを昨年以上のものとしました。ちょっとずつ階段を上がって来たという感じではなく一気にです。残された時間を有効に使えれば本当に面白いことになると思います。勝負の舞台に立てるようにサポートしていけたらと思います。
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乗り越える1

2012-06-01 | 陸上競技
今回の県総体で最も精神的にきつかったのはやはり女子エースの不調でした。私以上に本人は苦しかったと思います。

昨年のインターハイ直後に足首を痛めそこからまともに練習ができなくなる。焦りながらやるため夏休みの終わりには軽度の肉離れをする。その上、県新人の前には唯一の同級生だった者退部。「試合前だろうが治療はしない。遊びに行くなどのやりたいことはやる。」と断言されましたからこの状況でこれ以上女子エースと一緒に行動させるのは「マイナス」だと判断しました。このような行為を許していたらチームは成り立ちませんから。それにより苦しいところを一人で乗り越えていくという状況が続きました。

冬期練習は順調に消化することができました。これなら走れるなという感じでしたが実際にレースに出ると全く走れない。練習とは全く別人のような走りでした。「あれだけ練習できたのに走れない」というのは本人にとっては大きな苦しみだったと思います。同時に県内の有望選手がどんどん記録を出していきます。「焦り」ばかりが大きくなります。「身体」と「心」の協調ができていない状況だったと思います。支部大会・県選手権と全く自分の走りができない中で迎えた県総体。完全に「自信」を失っていました。昨年のインターハイ終了後から本当に大きく変わっていきました。「一生懸命取り組む」というのはこれまでの卒業生にも負けないくらいのレベルでした。同級生の女子が1人という状況の中で「絶対に戦う」という気持ちで冬期を越えた。私自身も「できることは全てやる」と決めていました。時には過剰なまでの関わりがあったかもしれません。下級生は「先輩ばかりが優遇されている」と感じていたと思います。それでも「走れるようにするために」ということが最優先でした。この状況を感じ取れず嫉妬するような精神状態では困るのですが・・・。高校生に難しいかもしれませんね。

県総体前、本当に調子が戻ってきていました。全く問題なく走れるという感じです。100mであれば12秒2台、200mは25秒前半は出ると確信できるレベルまで戻ってきていました。本人も手ごたえはあったはずです。が、2日目の最初の種目である4継で他の区間でのバトンミスが響き7位となりました。ここからまたも歯車がかみ合わなくなった。先ほども書きましたがシーズンに入ってレースで結果が出ていません。「自信」を失っているのです。個人レースの前に大きな失敗があり完全に冷静さを失っていたと思います。それは分かっていましたから直接話をして落ち着かせました。隣ではバトンをミスした選手がずっと泣き続けています。それを慰めるので精一杯という感じでした。とても自分のことを考えることができない状況・・・。

100mの予選、スタートから抜群の飛び出しをしました。本人の走りの感じとしては「後半型」です。前半の遅れを中間以降の走りで取り戻すという走り。この飛び出しなら間違いないと思った瞬間、完全に動きが崩れました。考えられません。タイミングが遅れるだけではなく走りがバラバラになっていました。結果的には12秒5。準決勝では更に崩れてしまい12秒6かかり決勝に進めませんでした。これにより本人は「自信喪失」どころではなかったと思います。

役員の合間を縫って選手のところに行きました。すると泣き崩れています。更にその隣には昨年部活を辞めたはずの同級生が。考えられません。こういう弱ったときには他者を頼りたくなる気持ちが出てきます。このタイミングでこれまで「良くない方向」に引っ張っていた者と一緒に居るというのは完全なマイナスです。この状況でなぜ試合に来ているのかも分かりません。すぐに引き離して2人で話をすることにしました。このタイミングが少しでも遅かったら3日目は迎えられなかったと思います。かなり頭にきていました。考えられません。

話をしましたが「心」が折れる寸前でした。かなり危険な状況だったと思います。あと10分遅かったら間違いなく折れていたと思います。辞めた同級生と話をしていたら「苦しいならやらなければいい」と言われていたでしょうから。ここまできて更に苦しめられるのか?珍しく女子エースが弱音を吐いていました。「どうやって走ったら良いのか分からない・・・」と涙を流していました。シーズンに入ってから走れていない、4継でのミス、100mで決勝に進めない、一番苦しいときに「楽なほうに流れる」人間と話す。「こんなに苦しいなら走らなくてもいい」という心理状況になってもおかしくないと思います。

かなり話をしました。苦しいのは分かります。しかし、ここで止まってしまったらこれまでやってきたことの意味がなくなってしまいます。「力」がないわけではない。「心」の部分の問題です。それでも本人には分かりません。「苦しさ」や「辛さ」の方が大きすぎて自分の「想い」とかみ合わなくなってしまっているからです。冷静になるように話をしました。どこまで伝わるのかは分かりません。私自身もどこまで話したら良いのか分かりません。「心」の部分だけで走れないというのは初めてです。「吹っ切れるかどうか」というのが大事ですが、ここまで追い詰められたらなかなか簡単にはいきません。例年のレベルであればこの状態でも超えられるのかもしれませんが、今年はかなり厳しい。だからこそ女子エースには挫折せずに乗り越えてもらいたいと強く思いました。

表情が少しだけ明るくなりました。そして翌日へ・・・。私は幾つもの「想い」が重なって夜はほとんど眠れませんでした・・・。
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