6日の午後。
ここは一番やりたいなと思っていることを。スピード曲線を準備して「男女の特徴は何か」を考えさせました。これだけを2日くらいやり続けられるといいなと思う部分もありますが。とにかく重要な要素だと思っています。せっかくなので「徳島インターハイ」の100mの結果から。レース結果をスピード曲線にしてあるのでそれを印刷してきて。それぞれに「特徴」を考えてもらいました。
スピードは「ストライド」と「ピッチ」の掛け算で示されます。「ストライド」が大きければ速いのかといえば違います。「ピッチ」が速ければいいのかというのも違う。顕著なのは「スタート局面」で「ピッチ」に頼った走りになってしまい、全く前に進まない「その場脚ふみ」のような動きになってしまう選手です。速く動くけど進みません。そのあたりのことを踏まえて「ストライド」と「ピッチ」の関係を。
「一次加速」の局面では最初スピードが「0」の状況から走り始めます。一気にスピードが上がる。ここが「10m」くらいまでだと思います。そこから「少しずつスピードが上がっていく」感覚になる。スピードのピークが20m地点で来てしまうとそれ以後は減速するしかなくなります。「ピッチ」頼りすぎて早い段階でスピードが上がったとしても後半にエネルギーが残りません。女子のスピード曲線を見ると分かるのですが、大半の選手は「スピード維持」ができません。男子と比べて「減速率」が高い。早く「スピードピーク」が来てしまうとそこから落ちていくだけになるので結局記録が出ないという感じになります。
男子は50~60m地点、女子は40~50m地点がスピードピークになります。そこに合わせて「ストライド」と「ピッチ」を上げていけるかどうかが重要になるのかなと。感覚的に鋭い選手であればそこまで話をしなくても勝手に走るのかもしれません。が、「普通の選手」であれば「走りのコントロール」ができるようになることで間違いなく記録が伸びていくと思います。「走練習をすれば速くなる」というのは違うかなと。
「ピッチ」が上がるタイプはショートスプリントに向いていると思います。なかなか上がらない選手は「ミドル」かなと。もちろんショートスプリントが速い選手がミドルやロングも速いと思います。練習の中に「アジリティ」が必要だと思う部分はここが要因です。速く動けるようにならないと結局スプリントでは大成しない。速く動ける力があってそれをコントロールすることができれば面白くなるかなと。
そんなこんなで練習の最初に「アジリティ」練習を。スティックを使ってのアジリティです。これをある程度やってから「変形ダッシュ」を。遊び感覚でダッシュする練習です。15mを30本実施。かなりの時間がかかりましたが、せっかくの合宿なのでそれはありかなと。普段の学校の練習ではできないことをやっておきたいなと思っていました。ワイワイ言いながらダッシュをしていく。
午後はタータンで。セミナーパークのタータンはかなり硬いので故障の原因になります。運動広場ができてから一度も張り替えていませんからかなり劣化していると思います。せっかくなのでタータンで走りたいという部分もありますが、ここで繰り返すと怪我をしてしまう。ここも考えながらですね。
午前中にやった「腰押し」と「マーク5歩」をある程度やってから「二次加速マーク」を。15m地点からスティックを置いて走ります。最初から全力で走るのではなく余裕をもって入っていって「徐々にピッチを上げていく」という感覚を作ります。上にも書きましたが「スピード」は「ストライド」と「ピッチ」の掛け算です。スティックを置いているのである程度「ストライド」は制約を受けます。その中で「ピッチ」が上がっていくことで「スピード」が上がるという感覚を作ります徐々に上げていくというのが重要かなと。いきなりはできないので3本を2セットくらいにして「動きのイメージ」を作っていきました。
そこから「前半マーク」です。スティックを使ってストライドの調整を行いながらピッチを上げていく。単純に「マークを越えて走る」というのではなく、「明確な課題」をもってやっていく。5歩目まではピッチを上げるというよりも「リズムの安定」を図ってそこから「ピッチ」を上げていく。一気に上げるのではなくマークが終わるくらいの30~40mまでかけて徐々に上げていくという感じでしょうか。
がむしゃらに走るというのではなく「走りの感覚を作る」ための練習です。スティックの距離は適当に伸ばしていますから、自然とストライドは伸びていく。ピッチの上昇を意識しながら走っていくことで間違いなくスピードが上がっていきます。同時に「前傾」の部分も。「加速し続ける」ために「前傾を保つ」といわれます。が、実際に「前傾を保つ」ことを続けると間違いなく足が流れます。最初の5歩までは「前傾」でそこからは「ピッチ」の上昇と「身体の傾き」を起こしていく。このタイミングを合わせていくこと。スティックを越えたら次から次へと足を出していく。地面をキックするという時間はないと思っています。反発系の動きをする理由はここかなと。
この動きを4本2セットやってから最後はマークなしで50mくらいを2本走る。短い距離を中心でしたが本数的にはかなり走っていると思います。硬いタータンでやっていますからダメージは大きいかなというのもあります。それでも「走りを変える」ためには重要な要素だと思っています。走る量も重要だと思いますが、「スプリントに必要な動き」をしっかりと身に付けるための練習ができるかも重要です。
国体に出場していた少年選手、かなり動きが良くなっていました。これまでは膝が開いて微妙な所がありましたが、かなり進みます。話を聞いてみると「学校でやっています」と。国体合宿などでやったことを自分でやっているということでした。やはり「速くなりたい」と思えば行動自体が変わります。怪我無くやっていければかなりのところまで行くのではないかなという印象でした。進学校の選手なので秋までやるのは難しいかもしれませんが、インターハイで決勝に残ってもらえたらいいなと。
また、同じ学校の選手が「最初から100%で走らないということですか?」という質問をしてきました。これも「感覚的な部分」があります。スタートの瞬間は全力で出ないといけないと思います。そこで力みまくってがつがつなるのではなく、「リズムの安定」と「徐々にピッチを上げていく」という動きの余裕も必要です。100%で走らなというわけではないのですが、加速段階で力を使いすぎないという部分が重要だと思っています。繰り返しやって感覚をつかんでもらうといいのかなと。
こうやって「速くなりたい」と思う選手の力になれる場面があるといいなと思っています。「やらされている」のではなく「自分のためにやる」という感覚だと思います。こういうスタンスの選手の力になれる環境を整える必要があるなと思っています
今回は「最大負荷をかける」という「根性練習」的な部分もやりたかったのですが、「時間をかけて動きを作る」という時間も必要だと考えていました。良い動きをしながら走ると必要な筋群に刺激も入ります。ふくらはぎではなく、「ハムストリング」や「お尻」の部分に負荷がかかる。この辺りも「良い練習になっているかどうか」の判断材料になると思っています。
2日目終了。選手の感想を聞くこともなく進んでいました。良い練習になったかどうかは分かりませんが。
記録しておきます。