あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

マイケル・カーティス監督の「エジプト人」を見て

2013-02-05 09:07:05 | Weblog


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.392

これは最初から最後まで興味深いあるエジプト人の生涯のものがたり。フィンランドの小説家ミカ・ワルタリの原作を「カサブランカ」のマイケル・カーティス監督が演出、かの名物プロデューサー、ダリル・F・ザナックが見事な映画に仕上げた。

誰が監督であろうとこの人がかかわった作品はみな見る価値があるが、それは彼に映画を見る目とつくる力があったからであり、本作もまたしかりだ。

この映画は、国王アメンホテプ3世の実子でありながら捨て児となって医師に拾われた主人公(エドマンド・バードム)がチーズ職人の友人(ヴィクター・マチュア)と競り合いながら妖艶な悪女に翻弄されながら諸国を流浪するという恋あり陰謀あり暗殺ありの波乱万丈、疾風怒濤の物語で、私の大好きなジーン・シモンズがいつものように可憐な花を咲かせている。

主人公はようやく帰国したものの、政争に巻き込まれて善人の現職のファラオを毒殺し、みずからその跡を継ごうとする。しかしようやくにして人生の意味を知り、真の恋人の愛にめざめたときには時すでに遅く、諸行無常の境地に達したわれらが主人公は、その過ぎ越しのすべてをパピルスに記しながら、故郷を遠く離れた流謫地で波乱万丈の生涯を閉じる。

紀元前3000年の古代エジプトにも私たちと同じような人間が喜怒哀楽の生活を営んでいたと思わせるに足る、堂々たる人世映画だが、見事な劇伴を鳴らしているのはヒッチコック作品のほとんどの音楽を担当していたバーナード・ハーマンであることも併せてつけくわえておかなければなるまい。


激しく手を叩き頭を殴りまた手を叩いているあれは父である私を怒っているのか 蝶人

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