茫洋物見遊山記第103回&鎌倉ちょっと不思議な物語第273回
鎌倉小町の横丁にてひっそり閑と開催されている収蔵品展を鑑賞しました。今回の目玉は樋口一葉の小説「たけくらべ」のヒロイン美登利が墳墓に寄り添う「一葉女史の墓」ですが、実に大胆不敵な着想と意匠に驚かされます。
その隣には尾崎紅葉の「金色夜叉」なども並べられていましたが、これらはいずれも明治時代の製作であり、長い芸歴を誇った清方としては比較的若い頃の作品であるためか、円熟期の深い描写力と深沈たる色彩美の輝きをまだ放っていないのがちょっと残念でした。
いつのぞいても興味深いのは「御著作所」という紅葉直筆の扁額で、清方はこの麗々しくてちょっと微笑ましい筆文字の下で江戸の春風を描き続けたのでした。
なお本展は来る3月3日まで同美術館にて開催中。
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