あまでうす日記

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チャールズ・デ・ラウジリカ監督の「デンジャラス・デイズ」を見て

2013-02-01 12:51:40 | Weblog


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.390

リドリー・スコットの歴史に残る名作「ブレード・ランナー」がいかなる危険と困難のもとに製作されたのかを関係者の証言をもとに描き出した迫真のドキュメンタリー映画である。

もちろん映画自体を立ち上げ差配するのはプロデューサーだから、彼が監督や脚本や配役についても一言あるのは当然だ。ジョン・フォードなんてかの大ダリル・ザナックにかかったらまるで赤子のようなもので、自分が撮ったフィルムをずたずたに切り刻まれてされていたのだが、最近はプロデューサーばかりか複数の出資者があれこれいちゃもんをつけるらしい。

この作品でもご他聞にもれず製作費や撮影期間や作品の内容についても外野からのくちばしが盛んに入ったようだが、にもかかわらずともかく偉いのは監督で、演出はもちろんセット、美術のデテールから撮影からヘアメイクまで全部自分の思う通りのビジョンを貫いていく。

実際の建物の巨大な柱なんかも「上下をさかさまにしろ」と命じて実現してしまう。それでなくとも雨やスモークてんこもりのセットの中で毎日朝まで続く夜間撮影で、スタッフやハリソン・フォードが根を上げても臆することなく唯我独尊の撮影を断行していく姿は黒澤を彷彿とさせる。

本作が最後のアナログ実写SF時代の最高傑作として後年高い評価を集めるようになった最大の要因は「美しくないカットは1箇所もない」と豪語するリドリー・スコットの図抜けた美意識だろう。


思いのたけ綴りし葉書出したれどポストに降りし雪に消えたり 蝶人
コメント
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