ある晴れた日に第283回
金曜日の朝、渡辺派がいよいよ私を粛清しようとしている気配を察知した私は、急な坂道を駆けのぼった。
追い詰められた私たちは、階段を登ろうとしたが、その階段は途中で終わっていたので、階段のたもとまで下って、階段の左の脇道を進もうとしたのだが、そこでにっちもさっちもいかなくなってしまった。
眼の前に大聖堂が聳えていた。
無人の大聖堂をいっさんに通り抜け、私はその裏道を急いだが、どうも誰かが私の跡をつけているようだ。
真っ暗な小道をひた走りに走ると、いつのまにか異人街に辿りついた。教会では大柄な人々がクリスマス・キャロルを歌っている。
教会の外の広場には、大勢の人たちが集まっていたが、彼らの表情には不安の色が浮かんでいた。
そこはロンドンのトラファルガー広場のような広場で、親子が見せものを見物しているが、実際は彼ら自身が見世物になっていて、そこではシャツ1枚で冬の極寒にどこまで耐えられるかの実験が行われているのだった。
そこで一計を案じた私は、仲間のドイツ人たちと一緒に広場に乗りこんで、彼らを落ち着かせようとした。
身軽なドイツ人の若者は、音楽に合わせてマイケル・ジャクソンを凌駕する完璧な幽体移動の必殺技を繰りだすと、次第に暗欝な雰囲気が崩れて笑顔が戻って来た。
ぬばたまのお伝は、「お客さん、よってらっしゃい、みてらっしゃい、これはほんとに美味しいお酒ですよ」と巧みに客引きをしながら、じつはこえたごから汲んで来た汚ない水を売りつけている。
いまや広場ではアジア、いな世界最大の万博が開催されており、広大な会場には自然館と商品館の2つの球形のパビリオンが並んでいた。
自然館はそのまま地球の7つの大陸がそっくり内蔵されており、商品館で買い物をした大勢の客たちは、レジを終えるまでに数時間も待たされていた。
そこで私は、喉の奥に生えているジャックの豆の木にぶらさがりながら、どこまでも、どこまでも地中深く降りていった。
すると下水配管が集まっている場所に、巨大なサッカー練習場があったので、ここでボールを蹴り合っていたら、四方八方から押し寄せる人々によって、私は黄泉の王として戴冠されたのだった。
いぎたなく美食飽食し尽くして猪八戒になりし人々 蝶人