ある晴れた日に第285回
フリュートをくるくる回しながら
「これ1本でどんなBGMでも生録音致します。どうぞなんなりとご用命ください」
と云って、真鍋理一郎氏は破顔一笑した。
東京文化会館に行くと、武満徹夫妻の姿をよく見かけた。
作曲家は普通の大人より小さかったが、妻はそれにちょうど見合う大きさで
二人並ぶと内裏雛のようだった。
「どうぞ」と云って、一柳彗氏は、出来たての譜面を見せてくれた。
それはパウル・クレーの絵のように、美しかった。
音符はなかった。
朝な夕な立ちんぼうにて仕事する販売業はつらきものかな 蝶人