音楽千夜一夜 第380回
英国のジェントルマン指揮者サー・エイドリアン・ボールト(1889年~1983年)の名を知る人も少なくなったが、これは彼の指揮するバッハ、ブラームス、ベートーヴェン、ワーグナーなどをセレクトした11枚組のCDである。
1枚目のバッハのブランデンブルグ協奏曲を聴いていると大編成のロンドン・フィルの管弦が朗々と鳴り響き、はなはだ精神が高揚されて痛快無比である。
確かにこれは1時代前の指揮ぶりかもしれないが、クラシック音楽を聴く醍醐味ここにあり、という気持ちに深々と浸れるのがなによりありがたい。
昨今のバッハ演奏は、その名の通り、小川(バッハ)が仔細ありげにちょろちょろ流れているようなしんきくさい神経質な演奏が大流行りだが、ボールトはその正反対で、大河が滔々と流れ来て、たがて悠々と流れ去る、というような気宇壮大でボールドな演奏をやる。実に気持ちがよろしい。ぜひお試しあれ。
ドクターゴンのやぶ医者が「御臨終です」というたが亮君が「おバアちゃん!」と叫べば目を覚ましたり 蝶人