照る日曇る日 第915回
題名がなんだか物凄くてこれはいったいどういう意味だろうかと思ったのだが、要するに伊藤野枝の熱狂的ファンが書いたかなり偏執狂的な伝記だった。果たしてこれが野枝や大杉栄や辻潤の実像なのだろうか。
私は右翼やファシストより左翼が、左翼よりはアナキストが好きだが、それにしてもアナキストが徹底的な反権力主義や自己中心主義やセックス大好き主義に漫画的に収斂されていく論法には、いささか抵抗を覚える。
村に火をつけたら村人が困るだろうし、白痴になったら本人もまわりも困るだろう。どうせ希望がないからといってなんでも好き勝手我儘放題にやればそれでおのれが救われるのかはなはだ疑問だ。
この本でちょっと面白かったのは東京改革者の後藤新平が大辻や野枝を助けたりしていたことで、彼の激高がなければ悪党甘糟大尉の処罰なども不問に付されていたと思われる。
敬愛する「極私詩人」にまみえたりダリアの花咲く日曜の午後 蝶人