照る日曇る日 第1056回
何か必死に探す事 格好悪いことじゃないんだ。暁の方へ
木琴のように会話が弾むとき「楽しいなあ」と素直に思う
この火とは誰のための火か?さつまいも一緒に焼こうよ。この恋の火で
この素直さ!この純情さ!
真夏の太陽の下で一輪の向日葵が咲き誇っている。しかし花の下には影一つない。
そんな不思議な印象を与えるあまりにも単純で裏表のない直情的な歌である。
彼にとって短歌は生涯の友人であり、生きる糧であった。
「小説の時代だけれど俺たちでなんとかしようぜ。絶対にな」
空を飛ぶための翼になるはずさ ぼくの愛する三十一文字が
かっこよくなりたい きみに愛されるようなりたい だから歌詠む
しかし、生きることに急き、明るすぎることは、滅びの予兆で会ったのかもしれない。
眼の前をバスがよぎりぬ死ぬことは案外そばにそして遠くに
歌壇の未来を拓く前途有為な若者として嘱望されていた作者は、本書のために準備万端を整え、「あとがき」まで用意していながら、上梓目前にして自死したという。
その理由は「あとがき」にも書かれているように、いじめにあったようだ。
中学時代の野球部で受けたこころの傷が、短歌への愛も癒せぬトラウマとなり、あまりにも早すぎる最期に至ったようだが、著者を悲劇に追いやったその「数人」がこの遺著を手に取り、心ゆくまで後悔と懺悔の道を辿るよう願わずにはいられない。

空の果て光遍く天目指し勇気凛凛イカロス翔びぬ 蝶人
地を蹴りて大空高く舞い上がり陽に溶け入りし君はイカロス 蝶人