あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

聖書協会共同訳旧約聖書「申命記」を読んで 

2020-01-11 13:21:32 | Weblog


照る日曇る日 第1337回

エジプトを出てから40年間荒野と砂漠の中を放浪した挙句、神から特別に指名されたとっておきの預言者モーセは、ツィンの荒れ野にあるカディシュのメリバの水のほとりで、アロン共々神に逆らった罪で、モアブのネボ山の頂上で命を絶たれる。

当時モーセは120歳であったが、「目はかすまず、気力も失せていなかった」と「申命記」の筆者は記すが、その末期の目には、遂に彼だけには踏破が許されなかったヨルダン川の西岸に位置する、エリコはもとよりエルサレムやベツレヘム、ヘブロンなど、乳と蜜の流れるうまし郷が、はるばろと遠望できたことだろう。切歯扼腕、残念無念とはこのことか。

人類史上初めて神と人とが一対一で真向かうことが唯一許された最愛の預言者さえも、どうしても許さなかった創造主の非情なまでの峻厳と、それゆえの人の命の哀れさが、時空を越えた無常を漂わせる幕切れである。

 神々はおおかた死にて「神対応」という時の神のみわずかに生き残るらし 蝶人

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