あまでうす日記

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岩波文庫版プルースト著「失われた時を求めて14見出された時Ⅱ」を読んで

2020-01-06 13:52:41 | Weblog


照る日曇る日 第1333回


「失われた時」を求める著者の飽くことなき追究はついに最終段階に達し、さしもの長大な大小説も最後の時の時を迎える。

その末尾の言葉の世界のありようとは、1)己が幾千、幾万夜を費やして孜孜として書き連ねてきた1万以上の原稿の内容と書法自体を総括するものであり、2)その冒頭へ蛇が蛇を呑むがごとく再帰するものであり、3)さらには、「本作を超える新作」の登場を予知するものでもあった。したがってこの作品は、3重の意味で「小説の小説」と呼ぶべき記念碑的な大作なのである。

本巻を読んで改めて痛感したことは、著者18番の「無意識的記憶」の跳梁ではなく、時が生者を死に追いやる老衰の影の無慈悲なまでに精確綿密な描写で、それは彼自身が51歳の若さで死ぬことを予感していたからこそ描けたのだろう。

末尾ながら吉川一義氏畢生の翻訳がとうとう大団円を迎え、つつがなく最終巻に到達したことは、一読者である私にとっても大いなる喜びであった。


いつの間にガムを噛むようになったのかNYヤンキースの田中投手 蝶人

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