照る日曇る日 第1334回
傑作「妹背山婦女庭訓」をモノした浄瑠璃作者、近松半二の生涯をば、渾身の力で描き尽くした大島選手の力作なりい。
どれだけ史実に即しているのか私などには分からないが、道頓堀界隈をうろつきながら操り浄瑠璃の底なしの魔力にとりつかれた若者の姿が、ぼおおと浮かび上がってくるから大したもんだ。
親友の並木正三、恩人の吉田文三郎の面影も忘れ難いが、「妹背山婦女庭訓」のヒロインお三輪をはじめ、半二を取り巻く女性たちの姿が生き生きと描かれ、そこがこの文楽小説の楽しみを倍加させている。
第161回直木賞を受賞したのも、当然だろう。
群衆ぐああ群衆雪崩群衆ぐああが群衆雪崩世界崩壊 蝶人