照る日曇る日第1455回
よくテレビに出て大河ドラマの監修?もしている人の本なのでちょっと読んでみました。
一知半解の生硬な学術用語を外国語のように書き下ろす今どきの生意気な若手歴史家と違って、温厚な紳士の筆で淡々と記してあるのは流石なり。あの顔貌通りの大人の印象でした。
公凶放送では私の嫌いななんとかいう痩せた役者が明智光秀に扮して、戦国時代の大物武将や公家の周辺をうろうろしているが、本書を読んでも分かるように、1568年永禄11年の5月以前に将軍足利義昭に足軽衆として臣従する以前の彼の確固とした史実は何もないことははっきりしているのに、ドラマであの斎藤道三やその子義龍と近しかったように空想逞しく描くことはいかがなものだろうか。
そもそも明智光秀が明智家や土岐家といかなる関係にあったかすら杳として知れない人物なのに、それを勝手に特化していくのは歴代の歴史家の歴史からの逸脱だろう。何が「麒麟が来るだ、馬鹿野郎!」と私は何度も怒鳴ったことでしたあ。
そんな怪しい素性の持ち主も、1970年元亀元年に信長の知己を得てからはトントン拍子に出世して歴史の表舞台に登場し、秀吉と1、2を争うまでの大物になりおおせます。
そして運命の1582年天正10年6月2日、光秀は本能寺で信長を暗殺するのですが、著者は夥しい光秀謀反真相説の中から「信長非道阻止説」を支持しているようです。
信長の天人倶に許すべからざる悪逆や朝廷への無礼の数々を身近に観察してきた光秀選手は、「平」姓暴君のこれ以上の暴走を阻止し、「源氏」である自らが将軍となって幕府を再興したいと願ったというのですが、さてその真相はやいかに?
何ひとつ碌な仕事はしなかった最低にして最悪の男 蝶人