照る日曇る日第1444回
山尾三省(1938-2001)は或る時家族で屋久島に移住しながら平明で深さのある詩を書き続けた人であるが、本書では刊行目前に喪った妻への慟哭が胸を打つ。
「妻を失った わたくしの
すべての悔いと
号泣をのみこんで
山は ただそこに在り
海もまた ただそこに在り
なおかつ 静かに
川が流れている
水が流れている」
屋久島の生活は過酷であったことは、「びろう葉帽子の下で マムシを殺す」という詩を読めば分かる。
「びろう葉帽子の下で
マムシを殺す
この夏の 初めての獲物
褐色の肌に 黒い斑点のある三角頭の
美しく 尊い
マムシを殺す」
詩人の弟にはダウン症の息子があったらしい。
「ダウン「症」の息子を持つ弟が
ダウン「症」の子は 核兵器を作らないし 原子力発電所を作らない
それだけでも素晴らしいこととおもわないか
と 言ったことがあった
そのとおりである」
私も「そのとおりである」と言おう。
キアゲハというがそのキが問題でナミアゲハのキと見まがうキもある 蝶人