川崎秋子著「ともぐい」を読んで
照る日曇る日 第2160回
今では絶滅したはずの冬山の狩猟で生きるマタギを主人公にした浪漫小説である。
冒頭から始まる鹿狩りと倒した獲物を捌く精密な描写はリアルであり大迫力だが、何故か読み進むにつれてその勢いは力を失うようになる。
しかして、獰猛な熊との対決や、獲物を買い取ってくれた村一番の分限者一家の没落と主人公の末路に至ると、殆ど机上の空談義の様相を呈し、竜頭蛇尾の典型小説と化すのは残念だ。
相撲より面白かったのは土俵下見に来る人の意外な顔ぶれ 蝶人