あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

トマス・ピンチョン著「Ⅴ.」下巻を読んで

2011-06-01 08:22:18 | Weblog
照る日曇る日第432回


天才か鬼才か、はたまた単なるクレージー文学小僧か? いずれにせよ弱冠27歳の青年がこのような驚天動地の世界文学を捏造するとはたいしたたまげた。次から次へと果てしなく繰り出される意味ありげでじつはなにも意味がない挿話の数々を目で追うだけでも疲れたよ。

そのうちもっとも面白かったのはマルタ島の対イスラム防衛線のエピソードで、陥落寸前に追い込まれたラ・ヴァレットと騎士団を救ったのは、魔女マラで彼女はスルタンを眠らせてその首をはね、騎士団長の夢に現れて平穏を意味する「シャローム」と挨拶をするのだが、このヘブライ語が聖ヨハネの首をはねたサロメの語源にもなったとか。しかしピンチョンがいうことだから嘘か本当かは分からない。

題名のⅤについては、これは謎の女性の名前なのか、地名なのか、それがこの物語とどうかかわっているのかもてんで分からなかった。連想ゲームが得意な超インテリの翻訳者が歴史を陰で動かしている存在などと解説しているようだが、さあどうだろうか。ともかくⅤの一字だけでここまで引っ張る著者の空想の膂力には驚嘆のほかはない。


三匹の火垂る輪舞し皐月尽 茫洋


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