ハン・ガン著・斎藤真理子訳「回復する人間」を読んで
照る日曇る日 第2159回
2003年から12年にかけて韓国の文芸誌に掲載された表題作をはじめ、全部で7つの短編を収録したコレクションである。
巻末の訳者あとがきによれば「著者は1970年生まれ。その真摯な作風、強靭さと繊細さを併せ持つ清冽な文体で高い評価を得てきた逸材」で、韓国の主要な文学賞を多数受賞しているそうだ。
確かに7篇ともがその評価を裏付けるような作物ばかりで、久し振りに優れた小説を読む快楽に耽ったが、なかでも主人公の左手が、主人公の意志とはうらはらに勝手に上司を殴ったり、女性を愛撫したりする、ちょっとカフカを思わせるシュールで不気味な短編「左手」は、鮮やかと言うも愚かな見事な出来栄えだった。
ハン・ガンは、つい最近ノーベル文学賞を受賞して世界中を驚かせたが、そういうこととは別に、彼女の作品を読み続けていきたいと思いましたな。
怖いもの見たさで生きるぜあと4年 蝶人