(第11話からの続き)
「献立アプリ」を運営していたのは、食事のレシピを集めたのが大当たりしていろいろなグルメページを立ち上げたサイトだった。やがてそのサイトは国内発のプラットフォーマーに買い上げられて、そのグループ企業となった。
そのプラットフォーマー、もともとわが国を代表する規模のポータルサイトだったのだが、海外勢に圧倒されそうになっていたところを、ハイテク産業省の後押しをうけ、国を挙げての体制をとって成長した。さらには東南アジアの友好国を中心に勢力を伸ばし、海外勢に対抗できるほどの大きさまでに盛り返した。そのプラットフォーマー…ヘヴンは、国策プラットフォーマーといえばそれまでだが、こうすることでしか欧米中勢に対抗することはできなかった。
ヘヴン、は次々と国内外の中小アプリ会社を吸収していった。欧米勢が全世界的にネットワークを俯瞰的に支配を強めていったのとは逆に、各国の小さなアプリをしらみつぶしに検討して次々と吸収した。そして、それぞれのアプリ会社が収集した個人情報を集積したのだった。
私たちが使っていた献立アプリの情報もそうやって、ヘヴン、に吸収されていたのだろう。そして、その情報から私たちの行動を推測し、生姜だの油揚げだのキムチだのを売っていた。ユーザーの行動パターンから食品販売、ペット用品販売などを、従来型の駅ナカ商法と異なった方法で行うことがまずはヘヴンの最初の目的だったのか。
そうすると、私が遭遇した通り魔事件は、ヘヴンにとっても突発的な出来事であって、対応に苦慮したに違いない。あの時キムチのワゴンの周りにいた人は、大部分がキムチを買いに集まっていたはずで、そこにあの帽子をかぶった暴漢が紛れ込んできてしまったのは計算外だったはず。
そして、その暴漢に対応したのが、ワゴンの売り子だったということだ。その売り子はヘヴンの従業員というか、関係者だったのだろうか。
あの男はなぜ
第13話に続く