きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

そもそも税金講座⑨ 税滞納の大半は消費税 生存権守る「処分の執行停止」

2012-06-17 19:14:46 | 予算・税金・消費税・社会保障など
そもそも税金講座⑨ 税滞納の大半は消費税 生存権守る「処分の執行停止」

国税の2010年度末滞納残高は、1兆5264億円。うち消費税は5320億円で、滞納額の35%を占めています。新規発生の滞納額に占める消費税の割合は55%です。滞納者の大半は消費税を価格に転嫁できない小企業です。(グラフ)
納税者が租税を納期限までに完納しない場合、税務官署は、裁判所の手を借りずに自らの手で強制的に租税を徴収します。国税通則法では、納税者が納期限までに国税を完納しない場合、原則として納期限から50日以内に督促状により納付督促を行うことになっています(37条)。




違憲の捜査規定
督促後に納付がなければ滞納処分に進みます。国税徴収法は、「滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないとき」には財産を差し押さえると規定しています。
滞納処分は、大きく分けて、差し押さえ、公売、公売代金の配当の3段階からなります。
国税庁は、滞納整理方針として消費税事案の優先処理を掲げています。そのために、賦課・徴収部門が連携して、ポスター・広報誌などによる宣伝、国・地方自治体での入札参加審査における消費税の納税証明書の提示、金融機関への消費税積立預金の推進などを展開しています。
滞納者に対する徴収は厳しく行われます。犯罪容疑者について、差し押さえ・捜索が必要であれば、刑事訴訟法に基づく令状主義の原則があります(218条)。しかし、国税徴収法では、滞納処分のために必要があれば、職員は必要の範囲で質問し、また財産を調べるために住居に立ち入って捜査ができることとしています(142条)。令状なしに、身分証明書を示しただけで納税者宅に無遠慮に入り込み、家捜しをします。これでも合法だというのです。
憲法第31条は「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若(も)しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」と定めています。「法定手続の保障」は、公権力による人権侵害の行使に歯止めをかけるための定めです。この憲法第31条に、国税徴収法の捜査規定は違反しています。
多くの小企業は、滞納で苦しんでいます。これらの事業者の生存権を保障する規定としては、「滞納処分の執行停止」があります。
滞納処分の執行停止は、納税者に滞納処分の対象となる財産がないか、滞納処分の執行によって滞納者の生活を著しく窮迫させるおそれがある場合に適用されます(国税徴収法153条=別項、地方税法15条の7など)。停止した租税は、一定の要件のもとで納税義務が消滅します。
滞納処分の停止は、税務署長(地方団体の長を含む)の職権に基づくものですが、滞納処分の停止をするかどうかは、税務署長の判断(裁量)にまかされているわけではありません。
滞納処分の執行停止の請求権は生存権に基づく納税者の権利であり、滞納処分の執行停止は税務署長の義務です。

原則は応能負担
滞納原因の多くは、負担能力に応じて納税するという応能負担原則を考慮しない現行税制のあり方にあります。滞納整理額(総額8481億円のうち消費税は4451億円)の中には、執行停止額が多く含まれています。
小企業は、所得の少ない人ほど重い負担になる逆進性の強い消費税の被害を受けています。その生存権を守るために、執行停止の権利をかちとるなら、倒産せずに、生き延びる可能性が出てくるのです。



【国税徴収法153条(滞納処分の停止の要件等)】
第153条
① 税務署長は、滞納者につき次の各号の一に該当する事実があると認めるときは、滞納処分の執行を停止することができる。
一 滞納処分を執行することができる財産がないとき。
二 滞納処分を執行することによってその生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき。
三 その所在及び滞納処分を執行することができる財産がともに不明であるとき。

② 税務署長は、前項の規定により滞納処分の執行を停止したときには、その旨を滞納者に通知しなければならない。
③ 税務署長は、第1項第21号の規定により滞納処分の執行を停止した場合において、その停止に係る国税について差し押えた財産があるときは、その差押を解除しなければならない。
④ 第1項の規定により滞納処分の執行を停止した国税を納付する義務は、その執行の停止が3年間継続したときは、消滅する。
⑤ 第1項第1号の規定により滞納処分の執行を停止した場合において、その国税が限定承認に係るものであるとき、その他その国税を徴収することができないことが明らかであるときは、税務署長は、前項の規定にかかわらず、その国税を納付する義務を直ちに消滅させることができる。


「しんぶん赤旗」日曜版 2012年6月17日付掲載


税の滞納処分の執行停止する要件に、「滞納処分を執行することができる財産がないとき。滞納処分を執行することによってその生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき」ということは、応能負担の原則に沿って当然のことでしょうね。
所得税や企業の税金の場合は、もともと累進で課税されるのだから滞納は少ないと思いますが、消費税の場合は赤字企業も課税されます。
売上価格に消費税を転嫁できずに困っていいる企業ほど赤字の場合が多いのですから深刻です。
最後の「命の砦」として「滞納処分の執行停止」を活用しないといけないのですね。
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攻防 消費税④ 国会決議の「抜け道」

2012-06-17 13:06:15 | 予算・税金・消費税・社会保障など
攻防 消費税④ 国会決議の「抜け道」

大平正芳内閣時に可決された国会決議「財政再建に関する決議」によって、大型間接税導入の野望はとん挫したかに見えました。政府税制調査会委員・会長を長く務めた石弘光氏は『消費税の政治経済学』の中で「(決議は)1980年代に入ってからの税制改革の方向を大きく縛ることになる」コ般的な消費税の導入は議論さえも行えず」と述べています。しかし、この国会決議自体に「抜け道」が組み込まれていたのです。

対象を限定し
当時は大蔵省主税局総務課長で、後に主税局長や国税庁長官を務めた水野勝氏は『主税局の千三百日―税制抜本改革への歩み』で「当時、国会の内外を通じ、また与野党を通じ、先の総選挙において大きな問題となった『一般消費税(仮称)』を葬り去ろうという機運が非常に強かった。
しかし『一般消費税(仮称)』自体を完全に葬ってしまったり、また葬るだけに止まるのでは、わが国の今後の財政運営上大きな支障をきたすことが懸念された」と述べています。
この「懸念」を払しょくするためにどうしたのでしょうか。水野氏は『税制改正五十年―回顧と展望』で次のように書きます。
「主税局としては決議には反対であるが、仮に決議がされる場合には、あらゆる種類の一般的な消費課税すべてを導入不可とすることは是非避けてもらう必要がある。端的にいえば五十五年度(1980年度)から実施するものとして閣議決定のされた一般消費税だけを対象としてもらわなくてはならない」
つまり、「一般消費税」という名前でなければ実施可能となるような決議にしたというのです。実際つくられた決議には「一般消費税(仮称)」と対象を限定するものとなっています。
実際、中曽根康弘内閣が87年に、免税点や非課税品目など技術的には違いがあるものの、本質的には一般消費税」とほぼ同様の仕組みである売上税法を国会提出しています。衆院予算委員会で「財政再建に関する決議」との関係を問われると、「これは一般消費税ではなくして、性格的に言えば付加価値税の一種である、そういうふうに考えておりまして、一般消費税ではございません」と強弁しています。



悪税粉砕への怒りの反対署名260万余を積み上げて国会要請する一般消費税反対のための中央連絡会の人びと=1979年5月9日、衆院議員面会所

見抜いていた
また、大平内閣で大蔵椙を務めた竹下登元首相は95年に出版した著書『平成経済ゼミナール』で、国会決議について「多くの人は、これで消費税を葬り去った、とつい思ったかもしれない。そういう雰囲気の中で、逆に(消費税導入の歩みが)始まったんだね」と語り、国会決議の裏で社会党、公明党、民社党の政策審議会長とのあいだで「消費一般にかかる税制を否定してはならない」という基本認識が初めからあった、と明かしています。
日本共産党は当時、「財政再建は一般消費税によらず」との文言と立場が盛り込まれていることから国会決議には賛成したものの、明確に一般消費税導入反対を決議したものではないことから決議の共同提案者には加わりませんでした。さらに対案として「昭和55年度(1980年度)中はもちろん、56年(81年)以降についても、一般消費税の導入計画を一切中止すべきである」との決議案を提案していました。日本共産党だけがこの決議を見抜いていたのでした。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年6月16日付掲載



民自公の密室での談合で、消費税増税と社会保障改悪に決着がついた。「もう終わりだ」という声を聞きますが、あきらめるのはまだまだ早いと思います。
会期末まであとわずかですが、たとえ消費税増税法案が可決されたとしても、実施されるのは2年後です。その間に必ず総選挙が行われます。参議院選挙もあります。
増税をした勢力に審判を下すチャンスは何度もありそうです。

2年後には、日本の政治地図がガラリと変わっているようにしていかないといけませんね。
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