検証TPP交渉① 年内の妥結急ぐ米国
環太平洋連携協定(TPP)を交渉中の日本、米国などアジア太平洋地域の12力国は、10月上旬にインドネシアで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせてTPP首脳会議を開き、TPPの「大筋合意」と年内妥結見通しを発表する予定だと伝えられます。それに向け、交渉が加速されています。
秘密裏に会合
交渉を主導する米国は、妥結を急いでいます。「来年の中間選挙前にTPP交渉妥結という成果を上げたい考え」(外交筋)とみられます。8月末、ブルネイで開かれた第19回交渉会合では、フロマン米通商代表が開催国を差し置いて会合を取り仕切り、交渉の加速のために、当初予定になかった分野別中間会合や首席交渉官会合を設定しました。
9月中に開かれたこれらの会合は、正規の交渉会合とは異なり、利害関係者会合も開かず、今までにも増して密室交渉に終始しています。こうした手法には、各国の非政府組織(NGO)が憂慮の声を強めています。
もともと、TPP交渉には守秘契約があります。協定草案や各国の提案、関連資料を入手できるのは、政府当局者や、政府の国内協議に参加する者などに限られます。これらを入手しても、許可された者以外に見せることはできません。また、これらの資料は、TPP発効後4年間秘匿されます。TPPが成立しなかった場合も、交渉の最後の会合から4年間秘匿されます。
7月、マレーシアで開かれた第18回交渉会合で新規に参加した日本も、鶴岡公二首席交渉官が秘密保護に関する書簡を関係国と交換しました。同会合では、日本政府の交渉団は、利害関係者への説明会を開きながら、交渉団自身が何を主張したのかさえ明らかにしませんでした。関係者は、「TPPは他の通商交渉に増して秘密保持が厳しい」と弁解するありさまでした。
第18回交渉会合の際、日本政府が開いたTPP交渉の説明会=7月24日、マレーシア・コタキナバル(面川誠撮影)
各国隔たりも
22日終了したワシントンでの首席交渉官会合についての米通商代表部の発表は、税関、電気通信、衛生植物検疫などの各章の交渉で進展があったとしています。同時に、10月のTPP閣僚会合と首脳会合の計画を議論したと述べ、閣僚会合は残りの問題の筋道と妥結計画を議論し、首脳に交渉の現状報告を提出するとしています。
鶴岡首席交渉官も21日、ワシントンでの記者会見で、「どのような作業が首席交渉官の課題として残されているか、閣僚に対してどのような報告をすべきかの整理がなされた」と述べました。
「大筋合意」を日程に入れながら、「残りの問題」の多さをうかがわせます。また、交渉が加速されるにつれて、各国間の隔たりも表れてきています。
マレーシアのムスタパ国際貿易産業椙は第19回会合の後、今後2~3カ月かけてTPPの影響を分析すると語りました。また、「国益に沿わない場合、協定に署名しない」「固定したスケジュールにしばられない」とも述べました。
同国は、国有企業、中小企業、社会格差是正のための政策(ブミプトラ政策)などへの悪影響を懸念しているとされます。投資家対国家紛争(ISD)条項や知的財産権保護にも、NGOなどの批判がみられます。
ベトナムは、国有企業の扱いや繊維・衣料品の関税などで、米国との対立があると伝えられます。
オーストラリアは、ISD条項の導入に反対しています。ただ、最近の総選挙で政権が交代し、新政権はISDにより柔軟的だとされることから、その動向が注目されます。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年10月1日付掲載
TPP交渉が守秘義務があるため、交渉過程の内容は過去4年間公表することができません。
それだけでなく、交渉に対する姿勢も、各国の差が表れれいます。
日本の場合は「閣僚に報告するべき内容が整理された」というように、妥結ありきで動いています。
それに比べ、マレーシアやベトナムは、「国益に沿わない場合は撤退」「関税で対立」などと姿勢がはっきりしています。
環太平洋連携協定(TPP)を交渉中の日本、米国などアジア太平洋地域の12力国は、10月上旬にインドネシアで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせてTPP首脳会議を開き、TPPの「大筋合意」と年内妥結見通しを発表する予定だと伝えられます。それに向け、交渉が加速されています。
秘密裏に会合
交渉を主導する米国は、妥結を急いでいます。「来年の中間選挙前にTPP交渉妥結という成果を上げたい考え」(外交筋)とみられます。8月末、ブルネイで開かれた第19回交渉会合では、フロマン米通商代表が開催国を差し置いて会合を取り仕切り、交渉の加速のために、当初予定になかった分野別中間会合や首席交渉官会合を設定しました。
9月中に開かれたこれらの会合は、正規の交渉会合とは異なり、利害関係者会合も開かず、今までにも増して密室交渉に終始しています。こうした手法には、各国の非政府組織(NGO)が憂慮の声を強めています。
もともと、TPP交渉には守秘契約があります。協定草案や各国の提案、関連資料を入手できるのは、政府当局者や、政府の国内協議に参加する者などに限られます。これらを入手しても、許可された者以外に見せることはできません。また、これらの資料は、TPP発効後4年間秘匿されます。TPPが成立しなかった場合も、交渉の最後の会合から4年間秘匿されます。
7月、マレーシアで開かれた第18回交渉会合で新規に参加した日本も、鶴岡公二首席交渉官が秘密保護に関する書簡を関係国と交換しました。同会合では、日本政府の交渉団は、利害関係者への説明会を開きながら、交渉団自身が何を主張したのかさえ明らかにしませんでした。関係者は、「TPPは他の通商交渉に増して秘密保持が厳しい」と弁解するありさまでした。
第18回交渉会合の際、日本政府が開いたTPP交渉の説明会=7月24日、マレーシア・コタキナバル(面川誠撮影)
各国隔たりも
22日終了したワシントンでの首席交渉官会合についての米通商代表部の発表は、税関、電気通信、衛生植物検疫などの各章の交渉で進展があったとしています。同時に、10月のTPP閣僚会合と首脳会合の計画を議論したと述べ、閣僚会合は残りの問題の筋道と妥結計画を議論し、首脳に交渉の現状報告を提出するとしています。
鶴岡首席交渉官も21日、ワシントンでの記者会見で、「どのような作業が首席交渉官の課題として残されているか、閣僚に対してどのような報告をすべきかの整理がなされた」と述べました。
「大筋合意」を日程に入れながら、「残りの問題」の多さをうかがわせます。また、交渉が加速されるにつれて、各国間の隔たりも表れてきています。
マレーシアのムスタパ国際貿易産業椙は第19回会合の後、今後2~3カ月かけてTPPの影響を分析すると語りました。また、「国益に沿わない場合、協定に署名しない」「固定したスケジュールにしばられない」とも述べました。
同国は、国有企業、中小企業、社会格差是正のための政策(ブミプトラ政策)などへの悪影響を懸念しているとされます。投資家対国家紛争(ISD)条項や知的財産権保護にも、NGOなどの批判がみられます。
ベトナムは、国有企業の扱いや繊維・衣料品の関税などで、米国との対立があると伝えられます。
オーストラリアは、ISD条項の導入に反対しています。ただ、最近の総選挙で政権が交代し、新政権はISDにより柔軟的だとされることから、その動向が注目されます。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年10月1日付掲載
TPP交渉が守秘義務があるため、交渉過程の内容は過去4年間公表することができません。
それだけでなく、交渉に対する姿勢も、各国の差が表れれいます。
日本の場合は「閣僚に報告するべき内容が整理された」というように、妥結ありきで動いています。
それに比べ、マレーシアやベトナムは、「国益に沿わない場合は撤退」「関税で対立」などと姿勢がはっきりしています。