検証TPP交渉③ コメなど5品目も対象
アジア太平洋地域の12力国による環太平洋連携協定(TPP)の交渉は、21分野にわたって24の部会で行われています。そのうち、関税に関する交渉は、物品市場アクセスの分野で、工業、繊維・衣料品、農業の3部会で行われています。関税交渉では、日本は各国から攻め込まれるのは必至です。農産物重要5品目も安泰とはいいきれません。
交渉中のTPP協定(案)は、29章からなるとされます。そのうち、貿易にかかわるのはわずか5章だけで、その他は政策や制度に関するものだと伝えられます。マレーシア国際貿易産業省の発表によると、29章のうち、14章の交渉が実質的に終了しています。それらは、①衛生植物検疫②税関③サービスの越境貿易④電気通信⑤一時的入国⑥政府調達⑦労働⑧協力・人材育成⑨競争・ビジネス円滑化⑩開発⑪中小企業⑫規制の調和⑬導入部・一般的定義⑭行政的・制度的条項1―といいます。
第19回交渉会合を前に来日し、甘利明TPP担当相(右)と会談するフロマン米通商代表=8月19日(ロイター)
環太平洋連携協定(TPP)交渉の21分野
合意するまで
関税交渉は、2国間で提案(オファー)と要求(リクエスト)を合意するまで何度もすり合わせる方式です。ただ、2国間の合意ですませるか、それを共通の合意にまとめるかは、今後の協議にかかっています。
12力国の間では、自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)を既に結んでいる2国間の組み合わせもあります。日本は、シンガポールやメキシコなど7力国とEPAを結んでいます。まるまる新規の関税交渉は、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの4力国が相手です。いずれも農産物輸出大国です。
日本政府によると、日本は8月末の第19回交渉会合で、チリとペルーを除く9力国と2国間協議を行い、ニュージーランド、シンガポールなど6力国と提案を交換しました。関税分類の細目(タリフライン)でみて、10年以内に関税を撤廃する割合(自由化率)は、日本の提案が最も低かったといいます。
関税全廃提示
また、9月にワシントンで行われた関税交渉会合では、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、チリの4力国が農産物を含む関税全廃(自由化率100%)の方針を各国に提示したといいます。当然、日本にも相応の要求が行われることを意味します。
日本政府は関税交渉で、重要農産物5品目を守るとしています。①米②小麦・大麦③牛肉・豚肉④乳製品⑤砂糖―を関税撤廃の対象から除外するということです。しかし、日本の関税分類によると、5品目だけで、全体の約6%を占めます。5品目を守るだけで、自由化率は最高でも約94%にとどまります。
日本がこれまでに結んだ13力国・地域とのEPAでは、日本の自由化率は、最も高くて84・4%です。
高い自由化率を目指すTPP交渉では、政府資料によっても、90~95%を即時撤廃し、残りも7年以内に段階的に撤廃すると主張する国が多数です。もともと、日本政府は、米国との事前協議で、農産物を含むすべての品目を交渉対象にすると約束して交渉に参加したのです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年10月4日付掲載
関税を守ると言っていたコメなどの重要農産物5品目も守れる保証はありません。
関税以外にも表のように21の分野で交渉が行われます。
アジア太平洋地域の12力国による環太平洋連携協定(TPP)の交渉は、21分野にわたって24の部会で行われています。そのうち、関税に関する交渉は、物品市場アクセスの分野で、工業、繊維・衣料品、農業の3部会で行われています。関税交渉では、日本は各国から攻め込まれるのは必至です。農産物重要5品目も安泰とはいいきれません。
交渉中のTPP協定(案)は、29章からなるとされます。そのうち、貿易にかかわるのはわずか5章だけで、その他は政策や制度に関するものだと伝えられます。マレーシア国際貿易産業省の発表によると、29章のうち、14章の交渉が実質的に終了しています。それらは、①衛生植物検疫②税関③サービスの越境貿易④電気通信⑤一時的入国⑥政府調達⑦労働⑧協力・人材育成⑨競争・ビジネス円滑化⑩開発⑪中小企業⑫規制の調和⑬導入部・一般的定義⑭行政的・制度的条項1―といいます。
第19回交渉会合を前に来日し、甘利明TPP担当相(右)と会談するフロマン米通商代表=8月19日(ロイター)
環太平洋連携協定(TPP)交渉の21分野
21分野 | 内容 | |
1 | 物流市場アクセス | 関税撤廃・削減 |
2 | 原産地規則 | どの国の産品かを決める基準 |
3 | 貿易円滑化 | 貿易手続きの簡素化 |
4 | SPS(衛生植物検疫) | 食品安全基準・動植物検疫 |
5 | TBT(貿易の技術的障害) | 貿易の技術的な障害の除去 |
6 | 貿易救済(セーフガード等) | 臨時の輸入制限 |
7 | 政府調達 | 政府・自治体の官公需の受注 |
8 | 知的財産 | 知的財産権を保護する基準 |
9 | 競争政策 | 独占・寡占を排除する法律 |
10 | 越境サービス貿易 | 規制の撤廃・「改革」 |
11 | 商業関係者の移動(一時的入国) | |
12 | 金融サービス | |
13 | 電気通信サービス | |
14 | 電子商取引 | 電子商取引のルール |
15 | 投資 | 内容国民待遇(外国からの投資の保護) |
16 | 環境 | 環境問題の基準 |
17 | 労働 | 雇用・労働のルール |
18 | 制度的事項(法律的事項) | 協定を実施するルール |
19 | 紛争解決 | |
20 | 協力 | 技術支援・人材育成 |
21 | 分野横断的事項 | 複数の分野にまたがる規制の緩和 |
合意するまで
関税交渉は、2国間で提案(オファー)と要求(リクエスト)を合意するまで何度もすり合わせる方式です。ただ、2国間の合意ですませるか、それを共通の合意にまとめるかは、今後の協議にかかっています。
12力国の間では、自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)を既に結んでいる2国間の組み合わせもあります。日本は、シンガポールやメキシコなど7力国とEPAを結んでいます。まるまる新規の関税交渉は、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの4力国が相手です。いずれも農産物輸出大国です。
日本政府によると、日本は8月末の第19回交渉会合で、チリとペルーを除く9力国と2国間協議を行い、ニュージーランド、シンガポールなど6力国と提案を交換しました。関税分類の細目(タリフライン)でみて、10年以内に関税を撤廃する割合(自由化率)は、日本の提案が最も低かったといいます。
関税全廃提示
また、9月にワシントンで行われた関税交渉会合では、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、チリの4力国が農産物を含む関税全廃(自由化率100%)の方針を各国に提示したといいます。当然、日本にも相応の要求が行われることを意味します。
日本政府は関税交渉で、重要農産物5品目を守るとしています。①米②小麦・大麦③牛肉・豚肉④乳製品⑤砂糖―を関税撤廃の対象から除外するということです。しかし、日本の関税分類によると、5品目だけで、全体の約6%を占めます。5品目を守るだけで、自由化率は最高でも約94%にとどまります。
日本がこれまでに結んだ13力国・地域とのEPAでは、日本の自由化率は、最も高くて84・4%です。
高い自由化率を目指すTPP交渉では、政府資料によっても、90~95%を即時撤廃し、残りも7年以内に段階的に撤廃すると主張する国が多数です。もともと、日本政府は、米国との事前協議で、農産物を含むすべての品目を交渉対象にすると約束して交渉に参加したのです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年10月4日付掲載
関税を守ると言っていたコメなどの重要農産物5品目も守れる保証はありません。
関税以外にも表のように21の分野で交渉が行われます。