安倍内閣の「農政改革」③ 多様な農業構造が不可欠
今回、農業の多面的機能の維持・発揮のための地域活動を支援する「日本型直接支払い」が創設されます。従来の制度を維持する「中山間地域直接支払い」「環境保全型農業特設支援」「農地・水保全管理支払い」を組み替えた地域資源(農地、水路、農道など)の質的向上をはかる「資源向上支払い」に「農地維持支払い」が加わります。
多面的な機能
農業が果たす環境の維持・向上への支援や、条件の悪い地域での生産コストの補てんは、農業の多面的機能の維持にとって積極的な意義を持ちます。しかし、「農地維持支払い」は、担い手への農地集中に役立てることが重視されています。農地ののり面の草刈り、水路の泥上げ、農道の保全などは、農地を提供した農家や集落に担わせることとされます。
さまざまな問題点はありますが、農業生産を通じた農地、水路、あぜの維持が、国土・環境、景観の保全に果たしている役割を評価し、その労働を支援する直接支払いは、積極的な意義があり、現場で使い勝手の良いものにしていくことが大事です。
今年は、関東周辺の大雪被害で、冬春の野菜供給の主力産地が大きな被害を受け、交通網や流通が大混乱し、野菜不足や価格の高騰が日常生活を圧迫しています。
農業生産は、気象など自然条件に大きく影響されるとともに、地域によって生産条件、生産される産品も大きく違います。南北に長く、傾斜地の多い日本の地理的な条件による農業の地域差は、全国的に展開されている稲作でも同じです。広大な平地に展開されるアメリカやオーストラリアとの競争を求めることは非現実的です。また、日本農業の中心である水田農業には、多くの兼業農家が参加し、生産の維持とともに、地域社会の維持、環境の保全に重要な役割を果たしています。こうした農業・農村の条件を生かす政策こそ求められています。
今年は、国連が定めた「国際家族農業年」です。その背景には、世界的に飢餓が拡大しており、発展途上国の小農民の多くが被害を受けていることがあります。同時に、大規模集約化農業がもたらす「土地、水、生物多様性などの自然資源の劣化に対する懸念」(『農林金融』14年1月―「2014年家族農業年」)も指摘されています。
季節性の強い農業生産の安定にとっても、農地や環境、集落の維持などにとっても、家族労働を基本にした小経営を含む多様な農業構造が欠かせないことは明らかです。
国連報告書「家族農業が世界の未来をひらく―食料安全保障のための小規模農業への投資」(農文協)も、近代化が進んだオランダでも、農業経営の80%以上が農外賃労働に従事し、フランスのフルタイムの農業経営者の半数以上が「その他の有給活動」に従事していたなどの例を挙げ、農業には多様な形態が必要であることを強調しています。
しかし、自公政権の「農政改革」では、兼業農家など小規模経営を生産から排除しようとしています。財界・多国籍企業の要求を露骨に取り入れた「農政改革」には、多様な農業構造という視点がまったくありません。
TPPやめよ
重要なことは、安全な食料の安定供給、良好な環境を求める国民の要求、日本の条件に即して多様に展開される農業の実情に合った農業政策と、食料自給率向上こそ必要だという世論と運動を強める必要があります。そのためにも、関税撤廃を原則とする環太平洋連携協定(TPP)への参加をやめ、生産コストを償う価格・所得補償の確立や、家族農業とその共同を大事にし、地域の条件に合った生産と供給を広げる方向での農政の確立こそ求められます。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年3月8日付掲載
効率優先に道を開くTPP参加ではなくって、日本の条件に即して農業を発展させる価格・所得補償や家族農業を支援する制度が求められます。日本のような温暖な気候の地域でもっと食料自給率を高めて、世界的な食糧不足に貢献できるようにしないといけません。
今回、農業の多面的機能の維持・発揮のための地域活動を支援する「日本型直接支払い」が創設されます。従来の制度を維持する「中山間地域直接支払い」「環境保全型農業特設支援」「農地・水保全管理支払い」を組み替えた地域資源(農地、水路、農道など)の質的向上をはかる「資源向上支払い」に「農地維持支払い」が加わります。
多面的な機能
農業が果たす環境の維持・向上への支援や、条件の悪い地域での生産コストの補てんは、農業の多面的機能の維持にとって積極的な意義を持ちます。しかし、「農地維持支払い」は、担い手への農地集中に役立てることが重視されています。農地ののり面の草刈り、水路の泥上げ、農道の保全などは、農地を提供した農家や集落に担わせることとされます。
さまざまな問題点はありますが、農業生産を通じた農地、水路、あぜの維持が、国土・環境、景観の保全に果たしている役割を評価し、その労働を支援する直接支払いは、積極的な意義があり、現場で使い勝手の良いものにしていくことが大事です。
今年は、関東周辺の大雪被害で、冬春の野菜供給の主力産地が大きな被害を受け、交通網や流通が大混乱し、野菜不足や価格の高騰が日常生活を圧迫しています。
農業生産は、気象など自然条件に大きく影響されるとともに、地域によって生産条件、生産される産品も大きく違います。南北に長く、傾斜地の多い日本の地理的な条件による農業の地域差は、全国的に展開されている稲作でも同じです。広大な平地に展開されるアメリカやオーストラリアとの競争を求めることは非現実的です。また、日本農業の中心である水田農業には、多くの兼業農家が参加し、生産の維持とともに、地域社会の維持、環境の保全に重要な役割を果たしています。こうした農業・農村の条件を生かす政策こそ求められています。
今年は、国連が定めた「国際家族農業年」です。その背景には、世界的に飢餓が拡大しており、発展途上国の小農民の多くが被害を受けていることがあります。同時に、大規模集約化農業がもたらす「土地、水、生物多様性などの自然資源の劣化に対する懸念」(『農林金融』14年1月―「2014年家族農業年」)も指摘されています。
季節性の強い農業生産の安定にとっても、農地や環境、集落の維持などにとっても、家族労働を基本にした小経営を含む多様な農業構造が欠かせないことは明らかです。
国連報告書「家族農業が世界の未来をひらく―食料安全保障のための小規模農業への投資」(農文協)も、近代化が進んだオランダでも、農業経営の80%以上が農外賃労働に従事し、フランスのフルタイムの農業経営者の半数以上が「その他の有給活動」に従事していたなどの例を挙げ、農業には多様な形態が必要であることを強調しています。
しかし、自公政権の「農政改革」では、兼業農家など小規模経営を生産から排除しようとしています。財界・多国籍企業の要求を露骨に取り入れた「農政改革」には、多様な農業構造という視点がまったくありません。
TPPやめよ
重要なことは、安全な食料の安定供給、良好な環境を求める国民の要求、日本の条件に即して多様に展開される農業の実情に合った農業政策と、食料自給率向上こそ必要だという世論と運動を強める必要があります。そのためにも、関税撤廃を原則とする環太平洋連携協定(TPP)への参加をやめ、生産コストを償う価格・所得補償の確立や、家族農業とその共同を大事にし、地域の条件に合った生産と供給を広げる方向での農政の確立こそ求められます。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年3月8日付掲載
効率優先に道を開くTPP参加ではなくって、日本の条件に即して農業を発展させる価格・所得補償や家族農業を支援する制度が求められます。日本のような温暖な気候の地域でもっと食料自給率を高めて、世界的な食糧不足に貢献できるようにしないといけません。