安倍内閣の「農政改革」② 米価安定放棄する無責任
米の生産調整は、さまざまな問題はありましたが、全国に百数十万人の生産者がいる米の需要と供給、価格の安定をはかる上で、国の責任で行ってきた政策です。米の自給が達成された1970年代から始まりました。内容は何回も変えられましたが、農政の大きな柱になってきました。
今回の農政見直しは、その米の生産調整を5年後に廃止し、米生産者と農業団体の責任で生産調整を行わせ、価格も市場に任せるというものです。
同時に、戸別所得補償も見直されました。米の生産調整への参加を条件に支給されていた「米直接支払い交付金」(10ヘクタール当たり1万5000円)を廃止し、激変緩和措置として2019年までは7500円に半減して実施します。米価が低落した場合に支給する価格変動調整金は、14年産から廃止されます。
大規模も悲鳴
「米直接支払い」は、米価が下落を続け、コスト割れになっている状況を補てんするために設けられたものです。安定した収入となるため、多くの農家が制度に参加しました。農業機械や施設の購入、雇用労働の確保などに生かされ、大規模経営ほど依存の大きい制度になっていました。
集落営農や大規模生産者からも、「突然半減されたら予定が狂う」「消耗の激しい機械の更新も、雇用者への賃金支払いも困難になる」「見通しがたたなくなった」などの声があがっています。
政府は、米は高関税に守られているため、この助成は必要ないと説明します。しかし、もともと、生産者価格が下落し、多くの農家がコスト割れを起こしていることへの支援です。現に、米価の下落傾向が続いており、助成の廃止は、米生産への依存が大きい生産者ほど大きな打撃を受けます。政府が育成するという大規模経営が最も大きな打撃を受けることは明らかです。
国の責任で米の需給を安定させ、国内消費を拡大し、経営規模にかかわりなく多くの生産者が安心して生産できる価格の保障と安定に力を入れさせる政策の実現を求めることが重要になっています。

刈り取った稲束が杭に掛けられている棚田=山形県朝日町
飼料米が目玉
水田対策では、米以外の生産も本作(転作ではない)として奨励する「水田フル活用ビジョン」も打ち出しました。経営対策では、麦、大豆、テンサイなどに対する直接支払交付金、米・畑作物の収入減少影響緩和措置(経営単位が対象)は、15年度から対象者を認定農業者、集落営農、認定就業者に限定して継続します。面積要件はなくすものの、兼業を含む多くの生産者が対象から除外されます。
「水田フル活用ビジョン」の目玉とされるのが飼料米の生産です。これまでも10アール当たり7万5000円が交付されていました。それを収量に応じて10アール当たり5万5000~10万5000円の範囲で支給します(飼料専用種、耕畜連携の上乗せがある)。農水省は、多くの生産者に最高額が支給されるかのように説明します。しかし、そのためには、主食用の1・3倍以上の収量が必要であり、収入が増える保証はありません。
しかも、飼料米の需要は、鶏や豚の飼育が中心です。したがって、地域での需要は限られます。飼料専用米を栽培することによって、田畑で食用米に混入する恐れもあります。飼料に加工する体制も不十分で、収穫・流通段階での混入など、食用米の品質劣化が避けられません。
米の生産が需要を上回る中で、自給率が低い飼料へ米や稲を振り向ける取り組みは必要なことです。しかし、飼料米の需要確保、食用米への混入防止、種子の確保など、解決すべき多くの問題を抱えたままで、「水田フル活用ビジョン」をバラ色に描くやり方は、きわめて無責任といわなければなりません。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年3月7日付掲載
コメの生産調整、いわゆる減反をやめるって、良い事のように聞こえますが…。コメの輸入自由化を進めるために導入された当初とちがって、コメの消費量が減っている下、一定の役割を果たしています。
コメをつくるのは自由だが、売れるか売れないか、価格の保障も自己責任だよってことです。曲がりなりにも主食のコメの生産者へそのような仕打ちをしていいのでしょうか。
米の生産調整は、さまざまな問題はありましたが、全国に百数十万人の生産者がいる米の需要と供給、価格の安定をはかる上で、国の責任で行ってきた政策です。米の自給が達成された1970年代から始まりました。内容は何回も変えられましたが、農政の大きな柱になってきました。
今回の農政見直しは、その米の生産調整を5年後に廃止し、米生産者と農業団体の責任で生産調整を行わせ、価格も市場に任せるというものです。
同時に、戸別所得補償も見直されました。米の生産調整への参加を条件に支給されていた「米直接支払い交付金」(10ヘクタール当たり1万5000円)を廃止し、激変緩和措置として2019年までは7500円に半減して実施します。米価が低落した場合に支給する価格変動調整金は、14年産から廃止されます。
大規模も悲鳴
「米直接支払い」は、米価が下落を続け、コスト割れになっている状況を補てんするために設けられたものです。安定した収入となるため、多くの農家が制度に参加しました。農業機械や施設の購入、雇用労働の確保などに生かされ、大規模経営ほど依存の大きい制度になっていました。
集落営農や大規模生産者からも、「突然半減されたら予定が狂う」「消耗の激しい機械の更新も、雇用者への賃金支払いも困難になる」「見通しがたたなくなった」などの声があがっています。
政府は、米は高関税に守られているため、この助成は必要ないと説明します。しかし、もともと、生産者価格が下落し、多くの農家がコスト割れを起こしていることへの支援です。現に、米価の下落傾向が続いており、助成の廃止は、米生産への依存が大きい生産者ほど大きな打撃を受けます。政府が育成するという大規模経営が最も大きな打撃を受けることは明らかです。
国の責任で米の需給を安定させ、国内消費を拡大し、経営規模にかかわりなく多くの生産者が安心して生産できる価格の保障と安定に力を入れさせる政策の実現を求めることが重要になっています。

刈り取った稲束が杭に掛けられている棚田=山形県朝日町
飼料米が目玉
水田対策では、米以外の生産も本作(転作ではない)として奨励する「水田フル活用ビジョン」も打ち出しました。経営対策では、麦、大豆、テンサイなどに対する直接支払交付金、米・畑作物の収入減少影響緩和措置(経営単位が対象)は、15年度から対象者を認定農業者、集落営農、認定就業者に限定して継続します。面積要件はなくすものの、兼業を含む多くの生産者が対象から除外されます。
「水田フル活用ビジョン」の目玉とされるのが飼料米の生産です。これまでも10アール当たり7万5000円が交付されていました。それを収量に応じて10アール当たり5万5000~10万5000円の範囲で支給します(飼料専用種、耕畜連携の上乗せがある)。農水省は、多くの生産者に最高額が支給されるかのように説明します。しかし、そのためには、主食用の1・3倍以上の収量が必要であり、収入が増える保証はありません。
しかも、飼料米の需要は、鶏や豚の飼育が中心です。したがって、地域での需要は限られます。飼料専用米を栽培することによって、田畑で食用米に混入する恐れもあります。飼料に加工する体制も不十分で、収穫・流通段階での混入など、食用米の品質劣化が避けられません。
米の生産が需要を上回る中で、自給率が低い飼料へ米や稲を振り向ける取り組みは必要なことです。しかし、飼料米の需要確保、食用米への混入防止、種子の確保など、解決すべき多くの問題を抱えたままで、「水田フル活用ビジョン」をバラ色に描くやり方は、きわめて無責任といわなければなりません。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年3月7日付掲載
コメの生産調整、いわゆる減反をやめるって、良い事のように聞こえますが…。コメの輸入自由化を進めるために導入された当初とちがって、コメの消費量が減っている下、一定の役割を果たしています。
コメをつくるのは自由だが、売れるか売れないか、価格の保障も自己責任だよってことです。曲がりなりにも主食のコメの生産者へそのような仕打ちをしていいのでしょうか。