けいざい四季報② 中国経済 「影の銀行」膨らむリスク
20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は2月23日、声明の中で、金融市場の安定のために「『影の銀行』(シャドーバンキング)によるリスクへの対処」を強調しました。「影の銀行」とは、通常の銀行システムの外で資金を仲介する活動や機関のことです。
GDPの4割
中国でも「影の銀行」の肥大化が懸念されています。不良債権の規模など実態がつかめません。
世界第2の経済大国の金融市場を揺るがしかねない事態に、世界で不安が広がっています。
中国では、個人からお金を集める私募投資ファンド(基金)や、銀行と信託投資会社が連携してつくった金融商品、その金融商品を運用する会社などが代表的です。「影の銀行」がつくった金融商品を銀行が販売していることもあります。
「影」の金融商品は2008年のリーマン・ショック以降、急速に増えています。代表的な存在である信託商品の残高は10年初めには2兆元(約34兆円)程度でしたが、13年末には11兆元と5倍になりました。
中国政府のシンクタンク、中国社会科学院の金融法・金融監督研究センターがまとめた「中国金融監視・管理報告」2013年版は「影の銀行」の規模について、12年末時点で最大20・5兆元、GDP比で40%に上ると推計しました。
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1月に「影の銀行」への関与を報じられた中国工商銀行=北京(ロイター)
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不履行を容認
「影の銀行」の資金源になったのは、2008年のリーマン・ショック後、景気刺激のために中央政府が支出した4兆元の公共投資や金融緩和で流れ出たお金です。資金を手にした富裕層が「影の銀行」の金融商品の買い手となりました。
昨年来、「影の銀行」が販売した金融商品の償還困難が何度か報じられました。しかし、実際に債務不履行(デフォルト)に陥ったのは3月、上海の太陽光関連会社の社債が初めてといわれます。それまではデフォルトさせないよう当局がひそかに救済していたようです。
3月13日、全国人民代表大会閉幕にあたって記者会見した李克強首相はデフォルトについて「個別の状況では避けがたいものがある」と述べました。不良債権化した金融商品のデフォルトを容認する姿勢を示した発言です。
監視を強める
中国は外国からの投機資金の流入を厳しく規制しているため、「影の銀行」で連鎖的なデフォルトが起きても、ただちに世界の金融市場に危機が波及する可能性は小さいとみられます。しかし、世界の金融市場は中国経済の動向を注視しています。2月初めには世界同時株安となり、東京市場でも4日、日経平均株価が610円も急落しました。原因の一つが中国を含む新興国経済への不安でした。
李首相は、「影の銀行」について「システム的な金融リスクが起きないよう監視を強めなければなげらない」と強調しました。
中国人民銀行(中央銀行)は3月17日、外国為替市場での人民元相場の、許容変動幅を対ドルで基準値の上下それぞれ2・0%に拡大しました。12年4月に変動幅を0・5%から1・0%に拡大して以来のことです。中国は、変動幅を徐々に拡大し、将来的には市場の需給で為替レートが決まる繭仕組みを目指しています。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年3月26日付掲載
20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は2月23日、声明の中で、金融市場の安定のために「『影の銀行』(シャドーバンキング)によるリスクへの対処」を強調しました。「影の銀行」とは、通常の銀行システムの外で資金を仲介する活動や機関のことです。
GDPの4割
中国でも「影の銀行」の肥大化が懸念されています。不良債権の規模など実態がつかめません。
世界第2の経済大国の金融市場を揺るがしかねない事態に、世界で不安が広がっています。
中国では、個人からお金を集める私募投資ファンド(基金)や、銀行と信託投資会社が連携してつくった金融商品、その金融商品を運用する会社などが代表的です。「影の銀行」がつくった金融商品を銀行が販売していることもあります。
「影」の金融商品は2008年のリーマン・ショック以降、急速に増えています。代表的な存在である信託商品の残高は10年初めには2兆元(約34兆円)程度でしたが、13年末には11兆元と5倍になりました。
中国政府のシンクタンク、中国社会科学院の金融法・金融監督研究センターがまとめた「中国金融監視・管理報告」2013年版は「影の銀行」の規模について、12年末時点で最大20・5兆元、GDP比で40%に上ると推計しました。
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1月に「影の銀行」への関与を報じられた中国工商銀行=北京(ロイター)
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不履行を容認
「影の銀行」の資金源になったのは、2008年のリーマン・ショック後、景気刺激のために中央政府が支出した4兆元の公共投資や金融緩和で流れ出たお金です。資金を手にした富裕層が「影の銀行」の金融商品の買い手となりました。
昨年来、「影の銀行」が販売した金融商品の償還困難が何度か報じられました。しかし、実際に債務不履行(デフォルト)に陥ったのは3月、上海の太陽光関連会社の社債が初めてといわれます。それまではデフォルトさせないよう当局がひそかに救済していたようです。
3月13日、全国人民代表大会閉幕にあたって記者会見した李克強首相はデフォルトについて「個別の状況では避けがたいものがある」と述べました。不良債権化した金融商品のデフォルトを容認する姿勢を示した発言です。
監視を強める
中国は外国からの投機資金の流入を厳しく規制しているため、「影の銀行」で連鎖的なデフォルトが起きても、ただちに世界の金融市場に危機が波及する可能性は小さいとみられます。しかし、世界の金融市場は中国経済の動向を注視しています。2月初めには世界同時株安となり、東京市場でも4日、日経平均株価が610円も急落しました。原因の一つが中国を含む新興国経済への不安でした。
李首相は、「影の銀行」について「システム的な金融リスクが起きないよう監視を強めなければなげらない」と強調しました。
中国人民銀行(中央銀行)は3月17日、外国為替市場での人民元相場の、許容変動幅を対ドルで基準値の上下それぞれ2・0%に拡大しました。12年4月に変動幅を0・5%から1・0%に拡大して以来のことです。中国は、変動幅を徐々に拡大し、将来的には市場の需給で為替レートが決まる繭仕組みを目指しています。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年3月26日付掲載