安倍内閣の「農政改革」① 財界要求重視 地域は混乱
安倍晋三自公政権は、環太平洋連携協定(TPP)交渉の妥結に全力をあげています。それと一体で進めているのが、国際競争力をつけるとする「農政改革」です。農林水産省のパンフレット「あらたな農業・農村政策がはじまります」は、①農地中間管理機構の創設②経営所得安定対策の見直し③水田フル活用と米政策の見直し④日本型直接支払いの創設―の四つの対策を挙げています。
(日本共産党農林・漁民局次長 有坂哲夫)
今回の農政見直しは、農業関係者の声より、政府の産業競争力会議などで示された、農業の大規模化や企業参入の加速化を求める財界代表の意向を受け、極めて性急に行われました。そのため、政府の説明会でも、「将来を見通せない」「農村は混乱させられている」などの批判が、自治体や農協関係者から噴出しています。
農業を営利企業の新たな商機にすることを求める財界の意向に沿った「農政改革」は、TPPを前提として、家族農業経営とその共同を基本としてきた農政の基本を変えてしまうことになります。さらに、安倍内閣は、財界代表中心の産業競争力会議などを通じて、小生産者である農民の互助を出発点にした農業協同組合(農協)や農民代表が中心になっている農業委員会の活動の見直しを進めようとしています。

米価暴落のなかで進む稲刈り=千葉県
目的も変えて
農地中間管理機構は、都道府県に一つの機構をつくり、高齢化などで耕作が困難な農地を預かり、担い手に集積しようというものです。
農水省の「攻めの農林漁業」などで示された当初の構想では、耕作放棄地対策を重要な課題としていました。増加する耕作放棄地を含め、利用困難な農地を機構が借り受け、整備なども行った上で担い手農業者に貸し付けるというものでした。耕作が困難で、農地の預け先を探している人や、整備が不十分な農地を引き受けている農業者から期待されていました。また、地域の話し合いで担い手を決め、農地の集積をはかってきた「農地・人プラン」を生かせると思われていました。
しかし、成立した農地中間管理機構関連法は、期待を大きく裏切るものになりました。
その主な点は、第1に、機構が借り受ける農地は、あらかじめ借り手がなければなりません。機構は農地を抱え込まないということです。第2に、借り手は、公募を原則とし、都市部の企業を含め地域外の希望者も公平に扱うこととしました。第3に、農民が多数を占め農地の事情に詳しい市町村農業委員会は、機構が求めたときに協力するだけです。
その結果、耕作放棄地の解消が目的から外され、借り手が公募されるなど、農地を荒らさないために努めている地域農業の現場からかけ離れ、中山間地域など耕作が困難なところほど利用しにくくなりました。耕作放棄地は減らず、優良な農地へ営利企業が進出しやすい仕組みにされました。
農地行政軽視
それは、産業競争力会議などで示された財界代表の要求を受け入れ、農業者の願いも農地行政の蓄積も軽視されたためです。財界代表らは、「条件の悪い耕作放棄地が機構に集中し、滞留するようなことは避けるべきだ」「『人・農地プラン』が優先されたら農外企業が参入できなくなる、公平に扱うべきだ」「利害関係者の組織である農業委員会は排除すべきだ」
などと要求していました。
農地中間管理機構による農地集積には、2013年度補正予算で400億円、14年度予算で305億円が計上され、膨大な金額が都道府県に配分されます。しかし、多くの都道府県では、機構の発足も実施要項も、これからのことです。
したがって、機構に対して、問題点を指摘しつつ、農地を維持・改善させる臭体的な要求や提案を示し、農地の条件や地域が培ってきた共同などを生かした運営を行わせる取り組みが重要です。
(つづく)(3回連載の予定です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年3月6日付掲載
耕作放棄地の集約を図るなどという「農地中間管理機構」ですが、新たな担い手があらかじめつくような農地しか対象にしないといいます。
中山間地で後継者不足で困っているが、耕作放棄してしまうと水利の管理や近隣の農地に影響がでるよなところ。そんな農地は対象にしないといいます。日本の農業が食料の自給だけでなく、山や川、水路、宅地の管理、さらに下流の水害をふせぐ自然のダムとしての役割など多面的な機能を持っています。
その事を無視して、使いやすい農地だけを対象にする制度はやめてほしいともいます。
安倍晋三自公政権は、環太平洋連携協定(TPP)交渉の妥結に全力をあげています。それと一体で進めているのが、国際競争力をつけるとする「農政改革」です。農林水産省のパンフレット「あらたな農業・農村政策がはじまります」は、①農地中間管理機構の創設②経営所得安定対策の見直し③水田フル活用と米政策の見直し④日本型直接支払いの創設―の四つの対策を挙げています。
(日本共産党農林・漁民局次長 有坂哲夫)
今回の農政見直しは、農業関係者の声より、政府の産業競争力会議などで示された、農業の大規模化や企業参入の加速化を求める財界代表の意向を受け、極めて性急に行われました。そのため、政府の説明会でも、「将来を見通せない」「農村は混乱させられている」などの批判が、自治体や農協関係者から噴出しています。
農業を営利企業の新たな商機にすることを求める財界の意向に沿った「農政改革」は、TPPを前提として、家族農業経営とその共同を基本としてきた農政の基本を変えてしまうことになります。さらに、安倍内閣は、財界代表中心の産業競争力会議などを通じて、小生産者である農民の互助を出発点にした農業協同組合(農協)や農民代表が中心になっている農業委員会の活動の見直しを進めようとしています。

米価暴落のなかで進む稲刈り=千葉県
目的も変えて
農地中間管理機構は、都道府県に一つの機構をつくり、高齢化などで耕作が困難な農地を預かり、担い手に集積しようというものです。
農水省の「攻めの農林漁業」などで示された当初の構想では、耕作放棄地対策を重要な課題としていました。増加する耕作放棄地を含め、利用困難な農地を機構が借り受け、整備なども行った上で担い手農業者に貸し付けるというものでした。耕作が困難で、農地の預け先を探している人や、整備が不十分な農地を引き受けている農業者から期待されていました。また、地域の話し合いで担い手を決め、農地の集積をはかってきた「農地・人プラン」を生かせると思われていました。
しかし、成立した農地中間管理機構関連法は、期待を大きく裏切るものになりました。
その主な点は、第1に、機構が借り受ける農地は、あらかじめ借り手がなければなりません。機構は農地を抱え込まないということです。第2に、借り手は、公募を原則とし、都市部の企業を含め地域外の希望者も公平に扱うこととしました。第3に、農民が多数を占め農地の事情に詳しい市町村農業委員会は、機構が求めたときに協力するだけです。
その結果、耕作放棄地の解消が目的から外され、借り手が公募されるなど、農地を荒らさないために努めている地域農業の現場からかけ離れ、中山間地域など耕作が困難なところほど利用しにくくなりました。耕作放棄地は減らず、優良な農地へ営利企業が進出しやすい仕組みにされました。
農地行政軽視
それは、産業競争力会議などで示された財界代表の要求を受け入れ、農業者の願いも農地行政の蓄積も軽視されたためです。財界代表らは、「条件の悪い耕作放棄地が機構に集中し、滞留するようなことは避けるべきだ」「『人・農地プラン』が優先されたら農外企業が参入できなくなる、公平に扱うべきだ」「利害関係者の組織である農業委員会は排除すべきだ」
などと要求していました。
農地中間管理機構による農地集積には、2013年度補正予算で400億円、14年度予算で305億円が計上され、膨大な金額が都道府県に配分されます。しかし、多くの都道府県では、機構の発足も実施要項も、これからのことです。
したがって、機構に対して、問題点を指摘しつつ、農地を維持・改善させる臭体的な要求や提案を示し、農地の条件や地域が培ってきた共同などを生かした運営を行わせる取り組みが重要です。
(つづく)(3回連載の予定です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年3月6日付掲載
耕作放棄地の集約を図るなどという「農地中間管理機構」ですが、新たな担い手があらかじめつくような農地しか対象にしないといいます。
中山間地で後継者不足で困っているが、耕作放棄してしまうと水利の管理や近隣の農地に影響がでるよなところ。そんな農地は対象にしないといいます。日本の農業が食料の自給だけでなく、山や川、水路、宅地の管理、さらに下流の水害をふせぐ自然のダムとしての役割など多面的な機能を持っています。
その事を無視して、使いやすい農地だけを対象にする制度はやめてほしいともいます。