米国との国交正常化交渉 キューバ国民は① 「生活が楽になれば」
半世紀以上の断絶を経た米国とキューバが国交正常化交渉へ―背景にあるのは、国際法を無視した米国の封鎖政策に対する批判の高まりと米国自身の孤立です。キューバ国民は交渉の行方をどうみているのか。両国代表団が1月に1回目の協議を行った首都ハバナからリポートします。
(ハバナ=松島良尚 写真も)
「いまオバマ大統領はハバナで大人気だ。アメリカから大勢の観光客や投資が来れば、経済は潤う。でも関係正常化は難しい。キューバは経済封鎖の賠償も持ちだしているが、米国は応じないだろう」
旧市街のアルマス広場でくつろいでいたマチャードさん。パラダールといわれる民間レストランで働いています。昨年夫の両首脳が発表したときは感動したが、1月の協議後、少し頭が冷えてきたといいます。
ハバナ旧市街の国会議事堂
コメと豆ばかり
配給所で並んでいたイレスさん(43)は、「米国もキューバも難題をもちだすので、複雑な交渉になりそう。うまくいって少しでも生活が楽になればと期待しているのだけど。食べるのはコメとブリホーレス(豆)ばかりで、もううんざり」といいます。
イレスさんは夫と死別し、月250ペソほど(1ペソ=4・8円、約1200円)の年金暮らし。子どもが2人います。全国民を対象とする国の配給でコメなど一定量の基礎食料品などが全部合わせて数十ペソで入手できますが、種類も量も少なく、2週間ももちません。
あとは自由市場で購入。違法ですが、コーヒーの路上販売を足しにして生活を維持しているといいます。
タクシー運転手のルイスさんは、経済の好転が政治にも影響すると思っています。
「政府と共産党にはもっと国民の声に耳を傾け、ちゃんと機能してほしい。米国のいう複数政党制については、経験したことがないので、それがいいとも悪いともいえない」
主権平等や内政不干渉を定めた国連憲章に違反する米国の対キューバ経済封鎖。オバマ米大統領は昨年12月17日の演説で、米国が続けてきた封鎖政策について、「時代遅れの政策を終わらせる」と表明。部分的な輸出解禁や米国民の渡航制限緩和などを発表しました。
経済封鎖の解除には米議会の承認が必要なため、議会との議論を進める意向も示しました。
ただし同大統領の考えは、経済封鎖は、キューバの体制転換という“目的は正しかったが、やり方がまずかった”というもの。今後は、キューバとの人的交流や経済関係を広げ、キューバ国民による内部からの変革を促すと公言します。
配給所前のイレスさん
協議継続を確認
1月の協議では、米国側がキューバ国内の人権状況の改善を求めたことにキューバ側が内政干渉だと反発する局面もありましたが、双方とも「建設的」「協力的」な協議だったと評価。大使館設置の具体的時期は決まりませんでしたが、協議の継続を確認しました。
その後、1月末に中米コスタリカで開催された中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)第3回首脳会議で、キューバのラウル・カストロ国家評議会議長の次のような表明がありました。
1960年に米国務省幹部がケネディ大統領(当時)あての覚書で、封鎖で「飢餓と絶望と苦しみをつくりだし、革命政権を打倒する」と述べていたことを指摘し、内政不干渉や対等平等などの原則に立って交渉する立場の強調でした。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年2月15日付掲載
アメリカとキューバの国交正常化交渉。遅きに逸した感がありますが、始めるに越したことはありません。
キューバ国民の目線からは、生活の改善が切実な要求でしょうね。
半世紀以上の断絶を経た米国とキューバが国交正常化交渉へ―背景にあるのは、国際法を無視した米国の封鎖政策に対する批判の高まりと米国自身の孤立です。キューバ国民は交渉の行方をどうみているのか。両国代表団が1月に1回目の協議を行った首都ハバナからリポートします。
(ハバナ=松島良尚 写真も)
「いまオバマ大統領はハバナで大人気だ。アメリカから大勢の観光客や投資が来れば、経済は潤う。でも関係正常化は難しい。キューバは経済封鎖の賠償も持ちだしているが、米国は応じないだろう」
旧市街のアルマス広場でくつろいでいたマチャードさん。パラダールといわれる民間レストランで働いています。昨年夫の両首脳が発表したときは感動したが、1月の協議後、少し頭が冷えてきたといいます。
ハバナ旧市街の国会議事堂
コメと豆ばかり
配給所で並んでいたイレスさん(43)は、「米国もキューバも難題をもちだすので、複雑な交渉になりそう。うまくいって少しでも生活が楽になればと期待しているのだけど。食べるのはコメとブリホーレス(豆)ばかりで、もううんざり」といいます。
イレスさんは夫と死別し、月250ペソほど(1ペソ=4・8円、約1200円)の年金暮らし。子どもが2人います。全国民を対象とする国の配給でコメなど一定量の基礎食料品などが全部合わせて数十ペソで入手できますが、種類も量も少なく、2週間ももちません。
あとは自由市場で購入。違法ですが、コーヒーの路上販売を足しにして生活を維持しているといいます。
タクシー運転手のルイスさんは、経済の好転が政治にも影響すると思っています。
「政府と共産党にはもっと国民の声に耳を傾け、ちゃんと機能してほしい。米国のいう複数政党制については、経験したことがないので、それがいいとも悪いともいえない」
主権平等や内政不干渉を定めた国連憲章に違反する米国の対キューバ経済封鎖。オバマ米大統領は昨年12月17日の演説で、米国が続けてきた封鎖政策について、「時代遅れの政策を終わらせる」と表明。部分的な輸出解禁や米国民の渡航制限緩和などを発表しました。
経済封鎖の解除には米議会の承認が必要なため、議会との議論を進める意向も示しました。
ただし同大統領の考えは、経済封鎖は、キューバの体制転換という“目的は正しかったが、やり方がまずかった”というもの。今後は、キューバとの人的交流や経済関係を広げ、キューバ国民による内部からの変革を促すと公言します。
配給所前のイレスさん
協議継続を確認
1月の協議では、米国側がキューバ国内の人権状況の改善を求めたことにキューバ側が内政干渉だと反発する局面もありましたが、双方とも「建設的」「協力的」な協議だったと評価。大使館設置の具体的時期は決まりませんでしたが、協議の継続を確認しました。
その後、1月末に中米コスタリカで開催された中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)第3回首脳会議で、キューバのラウル・カストロ国家評議会議長の次のような表明がありました。
1960年に米国務省幹部がケネディ大統領(当時)あての覚書で、封鎖で「飢餓と絶望と苦しみをつくりだし、革命政権を打倒する」と述べていたことを指摘し、内政不干渉や対等平等などの原則に立って交渉する立場の強調でした。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年2月15日付掲載
アメリカとキューバの国交正常化交渉。遅きに逸した感がありますが、始めるに越したことはありません。
キューバ国民の目線からは、生活の改善が切実な要求でしょうね。