安倍改憲 自衛隊明記の危険② 従来の解釈上の「制約」消滅 無制限の武力行使に道開く
イラク特措法で自衛隊イラク派兵の先遣隊長を務めた佐藤正久参院議員(自民党)は、「『憲法違反』と言われることは当然、自衛官の胸に突き刺さりますよ。
自衛隊を憲法に明記することで『違憲かもしれない』と言われなくなるだけでも意義は大きい」「自衛官が誇りを持って任務を遂行できる環境を」と語っています(「産経」7月1日付)。
活動範囲に変化
安倍首相は5月3日の改憲派の集会へのメッセージで「『自衛隊が違憲かもしれない』などの議論が生まれる余地をなくすべきである」と述べていました。
自衛隊の「合憲化」それ自体に意義があり、自衛隊員の「誇り」のための改憲1。自衛隊の活動範囲に影響はないという「印象」を与えています。
これに対し、自衛隊の憲法明記によって、自衛隊の組織の性格や活動範囲に大きな変化が生じることを明確に意識した発言があります。
元自衛隊統合幕僚長の斎藤隆氏は「読売」5月30日付インタビューで、次のようにのべています。
「2項が維持されれば、自衛隊は『陸海空軍』とは切り離された特殊な存在であり続ける可能性はある」が、「根拠規定が明記され、合憲と整理された後に、軍隊とは何か、自衛隊とどう違うのかなどのかみ合った議論につながっていくのではないか。軍事法廷の要否、戦死者の問題、本格的な集団的自衛権に踏み込むべきか否かなどの論点もある」
憲法が「軍事による平和」という立場に立てば、自衛隊と軍隊との関係が正面から議論の対象となり、軍法会議の必要性や、戦死者の国家的追悼の問題に加え、本格的な集団的自衛権行使に踏み込む可能性すらあるというのです。
海外での武力行使の禁止など、従来の自衛隊に対する「諸制約」は、自衛隊が憲法の下にあり、9条2項の「戦力不保持」規定に違反するという批判にこたえ合憲性を担保するため、国会での政府答弁などを通じて形成されてきたものです。
米空母カールビンソンなどが参加した日米共同巡航訓練(4月28日、航空自衛隊提供)
まさに独り歩き
自衛隊の存在が憲法に明記されれば、自衛隊の合憲性をめぐる論争は消失し、従来の解釈上の「制約」の存在意義も消滅します。自衛隊は、従来の「制約」から解き放たれ、まさに独り歩きがはじまります。無制限の武力行使に道を開くのです。
「自衛隊の追認」どころか、全く次元の異なる“大変革”です。
自民党憲法改正推進本部の保岡興治本部長は「9条の政府解釈を1ミリも動かさない」と述べますが、同本部所属議員の一人は、「自衛隊の権限や活動範囲について解釈がどのくらい変化するかはまだわからない。その変化を最小限に止める方向だ」と語ります。
「変化は起こる」、しかし「動かさない」―。自衛隊が憲法に明記されることで、自衛隊の活動範囲に関する解釈の全面的再編成に道が開かれます。変化の可能性を憲法上封ずるというのか、単に解釈として「動かさない」というにとどまるのか、不明です。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年7月14日付掲載
自衛隊の存在が憲法に明記されれば、自衛隊の合憲性をめぐる論争は消失。
「自衛隊の追認」どころか、全く次元の異なる“大変革”。
イラク特措法で自衛隊イラク派兵の先遣隊長を務めた佐藤正久参院議員(自民党)は、「『憲法違反』と言われることは当然、自衛官の胸に突き刺さりますよ。
自衛隊を憲法に明記することで『違憲かもしれない』と言われなくなるだけでも意義は大きい」「自衛官が誇りを持って任務を遂行できる環境を」と語っています(「産経」7月1日付)。
活動範囲に変化
安倍首相は5月3日の改憲派の集会へのメッセージで「『自衛隊が違憲かもしれない』などの議論が生まれる余地をなくすべきである」と述べていました。
自衛隊の「合憲化」それ自体に意義があり、自衛隊員の「誇り」のための改憲1。自衛隊の活動範囲に影響はないという「印象」を与えています。
これに対し、自衛隊の憲法明記によって、自衛隊の組織の性格や活動範囲に大きな変化が生じることを明確に意識した発言があります。
元自衛隊統合幕僚長の斎藤隆氏は「読売」5月30日付インタビューで、次のようにのべています。
「2項が維持されれば、自衛隊は『陸海空軍』とは切り離された特殊な存在であり続ける可能性はある」が、「根拠規定が明記され、合憲と整理された後に、軍隊とは何か、自衛隊とどう違うのかなどのかみ合った議論につながっていくのではないか。軍事法廷の要否、戦死者の問題、本格的な集団的自衛権に踏み込むべきか否かなどの論点もある」
憲法が「軍事による平和」という立場に立てば、自衛隊と軍隊との関係が正面から議論の対象となり、軍法会議の必要性や、戦死者の国家的追悼の問題に加え、本格的な集団的自衛権行使に踏み込む可能性すらあるというのです。
海外での武力行使の禁止など、従来の自衛隊に対する「諸制約」は、自衛隊が憲法の下にあり、9条2項の「戦力不保持」規定に違反するという批判にこたえ合憲性を担保するため、国会での政府答弁などを通じて形成されてきたものです。
米空母カールビンソンなどが参加した日米共同巡航訓練(4月28日、航空自衛隊提供)
まさに独り歩き
自衛隊の存在が憲法に明記されれば、自衛隊の合憲性をめぐる論争は消失し、従来の解釈上の「制約」の存在意義も消滅します。自衛隊は、従来の「制約」から解き放たれ、まさに独り歩きがはじまります。無制限の武力行使に道を開くのです。
「自衛隊の追認」どころか、全く次元の異なる“大変革”です。
自民党憲法改正推進本部の保岡興治本部長は「9条の政府解釈を1ミリも動かさない」と述べますが、同本部所属議員の一人は、「自衛隊の権限や活動範囲について解釈がどのくらい変化するかはまだわからない。その変化を最小限に止める方向だ」と語ります。
「変化は起こる」、しかし「動かさない」―。自衛隊が憲法に明記されることで、自衛隊の活動範囲に関する解釈の全面的再編成に道が開かれます。変化の可能性を憲法上封ずるというのか、単に解釈として「動かさない」というにとどまるのか、不明です。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年7月14日付掲載
自衛隊の存在が憲法に明記されれば、自衛隊の合憲性をめぐる論争は消失。
「自衛隊の追認」どころか、全く次元の異なる“大変革”。