安倍改憲 自衛隊明記の危険③ 「専守防衛」の原則も緩和 「戦力不保持」規定が「空文化」
自衛隊が憲法に明記されることで、自衛隊の活動範囲をめぐる解釈・立法は全面的に再編成され、無制限の武力行使に道を開きます。
現行の9条2項の戦力不保持規定が残っても、憲法が「軍事力(自衛隊)で防衛をする」と定めれば、軍法や軍法会議を整備する根拠ができます。集団的自衛権の行使の議論の可能性が出てくるし、さらに「専守防衛」=守りに徹するという原則も緩和されます。
自衛隊が保有するヘリ空母ひゅうが(海上自衛隊HPから)
“何でも可能に”
専守防衛とは、日本への攻撃に対する反撃に際し、敵国領土内まで追撃したり、相手国を降伏させ占領行政を行ったりはできないなどとする、抑制的な防衛原則です。
斎藤隆元統合幕僚長は「読売」5月30日付インタビューで、「『戦力不保持』との関連性を重視するあまり、極端な専守防衛論議が蒸し返されるようなことは絶対に避けなければならない」として、航空機の航続距離を長くすることへの批判は的外れで、空中給油も許容すべきとの主張も行っています。
改憲右翼団体「日本会議」政策委員で安倍晋三首相のブレーンの一人でもある胆藤哲夫氏らも、「憲法によって自衛隊の活動が不必要に制約される状況を放置してよいはずもない」「自衛隊が憲法に明記されず、法的には九条二項に反しないような解釈にのみ根拠づけられていることに問題の根源がある」(共著『これがわれらの憲法改正提案だ 護憲派よ、それでも憲法改正に反対か?』)としています。
伊藤氏の共著は、「不必要な制約」の例の一つとして「(防衛の戦闘)現場での臨機応変の対応が難しく、逆に自衛隊員を不要な危険にさらす」ことをあげ、いちいちの法的権限なしに「柔軟な」戦闘を可能にするよう求めています。
いわゆるポジティブリストのネガティブリスト化(できる行為のみを法律に定めるのではなく、禁止行為以外は何でもできるようにする)を可能とする主張です。自衛隊が従来の次元を超え、活動範囲を広げる可能性があることを意識的に追求するものです。
自衛隊に対する制約は、憲法の下にあるからこそ認められるもの。憲法が自衛隊という「軍事力による防衛」を認めた途端、防衛活動に対する従来の規制は、全面的見直しに道を開きます。
9条2項と矛盾
石破茂元防衛相は6月27日付「読売」インタビューで、自衛隊が憲法に明記されることについて「どう書こうと、9条2項の『陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない』とは矛盾し、むしろ2項を空文化させる」と指摘。「近代戦争遂行能力を備えた自衛隊が『戦力』に至らないといわれても、普通の人はまず理解できない。国際社会から見れば軍隊だ。首相の案は、国民が『おかしいよね』と思っていることを憲法で固定する」とし、「そうではない書き方があるなら教えてほしい」と述べています。
「空文化」とは、憲法の規定が無意味で規制する力のないものになってしまうことです。実態的には“戦力”である自衛隊が憲法上の存在になれば「戦力不保持」規定の意味はなくなり、自衛隊に対する規制も及ばなくなるという指摘です。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年7月15日付掲載
石破さんは軍事オタクだけれども、専守防衛はわきまえている。
「禁止行為以外は何でもできるようにする」って、かなり怖い事。
自衛隊が憲法に明記されることで、自衛隊の活動範囲をめぐる解釈・立法は全面的に再編成され、無制限の武力行使に道を開きます。
現行の9条2項の戦力不保持規定が残っても、憲法が「軍事力(自衛隊)で防衛をする」と定めれば、軍法や軍法会議を整備する根拠ができます。集団的自衛権の行使の議論の可能性が出てくるし、さらに「専守防衛」=守りに徹するという原則も緩和されます。
自衛隊が保有するヘリ空母ひゅうが(海上自衛隊HPから)
“何でも可能に”
専守防衛とは、日本への攻撃に対する反撃に際し、敵国領土内まで追撃したり、相手国を降伏させ占領行政を行ったりはできないなどとする、抑制的な防衛原則です。
斎藤隆元統合幕僚長は「読売」5月30日付インタビューで、「『戦力不保持』との関連性を重視するあまり、極端な専守防衛論議が蒸し返されるようなことは絶対に避けなければならない」として、航空機の航続距離を長くすることへの批判は的外れで、空中給油も許容すべきとの主張も行っています。
改憲右翼団体「日本会議」政策委員で安倍晋三首相のブレーンの一人でもある胆藤哲夫氏らも、「憲法によって自衛隊の活動が不必要に制約される状況を放置してよいはずもない」「自衛隊が憲法に明記されず、法的には九条二項に反しないような解釈にのみ根拠づけられていることに問題の根源がある」(共著『これがわれらの憲法改正提案だ 護憲派よ、それでも憲法改正に反対か?』)としています。
伊藤氏の共著は、「不必要な制約」の例の一つとして「(防衛の戦闘)現場での臨機応変の対応が難しく、逆に自衛隊員を不要な危険にさらす」ことをあげ、いちいちの法的権限なしに「柔軟な」戦闘を可能にするよう求めています。
いわゆるポジティブリストのネガティブリスト化(できる行為のみを法律に定めるのではなく、禁止行為以外は何でもできるようにする)を可能とする主張です。自衛隊が従来の次元を超え、活動範囲を広げる可能性があることを意識的に追求するものです。
自衛隊に対する制約は、憲法の下にあるからこそ認められるもの。憲法が自衛隊という「軍事力による防衛」を認めた途端、防衛活動に対する従来の規制は、全面的見直しに道を開きます。
9条2項と矛盾
石破茂元防衛相は6月27日付「読売」インタビューで、自衛隊が憲法に明記されることについて「どう書こうと、9条2項の『陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない』とは矛盾し、むしろ2項を空文化させる」と指摘。「近代戦争遂行能力を備えた自衛隊が『戦力』に至らないといわれても、普通の人はまず理解できない。国際社会から見れば軍隊だ。首相の案は、国民が『おかしいよね』と思っていることを憲法で固定する」とし、「そうではない書き方があるなら教えてほしい」と述べています。
「空文化」とは、憲法の規定が無意味で規制する力のないものになってしまうことです。実態的には“戦力”である自衛隊が憲法上の存在になれば「戦力不保持」規定の意味はなくなり、自衛隊に対する規制も及ばなくなるという指摘です。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年7月15日付掲載
石破さんは軍事オタクだけれども、専守防衛はわきまえている。
「禁止行為以外は何でもできるようにする」って、かなり怖い事。